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糖尿病の治療のためによく処方される薬の1つにメトホルミンがあります。この薬の歴史は60年以上と古く、日本でも広く使用されています。メトホルミンは、どのようなときに処方される糖尿病治療薬なのでしょうか。副作用などの心配はないのでしょうか。
この記事では、メトホルミンという薬の作用と副作用、近年の話題などについて紹介します。
メトホルミンは肝臓で糖が作られることを抑えるなど、いくつかの作用によって血糖値を下げる薬です。糖尿病の治療薬の中でも重要な薬剤の1つといえます。
メトホルミンは、2型糖尿病の治療でよく使われ、『糖尿病診療ガイドライン2019』においても第一選択薬として推奨されています。メトホルミンは、肝臓からの糖新生の量を減らして空腹時血糖を下げたり、インスリンが効きやすい体にしたりするなどの作用により血糖値を下げます。
私たちは食事でエネルギー補給をしていますが、なかでもご飯やパンなどの炭水化物が大きなエネルギー源となっています。炭水化物は消化されると、エネルギーとして使いやすいブドウ糖になって腸から吸収され血液中に入ります。通常は血液中のブドウ糖量(血糖値)が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、ブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませるので、血糖値は上がりすぎることなく徐々に下がっていきます。
一方、インスリンには、空腹時に全身に蓄えた脂肪や筋肉を少しずつ分解して肝臓で糖をつくり、全身に流すというはたらきもあります(糖新生)。健康診断のときに採血によって確認する空腹時血糖という項目がこれにあたります。糖尿病になるとインスリンのはたらきが十分でないため、ブドウ糖が筋肉や脂肪にうまく吸収されず、血糖値が高いままになってしまいます。血管内にあふれたブドウ糖は、放置すると全身の血管を傷つけてさまざまな合併症を引き起こします。
糖尿病には、自己免疫異常のために十分なインスリンを作れない1型糖尿病と、生活習慣などが原因でインスリンが出にくくなったり、インスリンの作用が十分に発揮できない状態(インスリン抵抗性)になったりする2型糖尿病があります。
2型糖尿病の治療の基本は食事制限と適度な運動を行って体重を減らし、インスリンの効きやすい体をつくることです。しかし、それだけでは血糖値をうまくコントロールできないときに、メトホルミンなどの糖尿病治療薬の内服やインスリン注射などの治療が検討されます。
メトホルミンと一緒に血糖値を下げる別の薬を飲んでいたり、インスリン注射を打っていたりする場合は注意が必要です。血糖値が下がりすぎて、脳などがエネルギー不足になる低血糖に陥る恐れがあるからです。低血糖になると冷や汗がでたり、手指が震えたり、力の抜けた感じが現われます。とはいえ、低血糖を恐れて糖尿病の薬を自分の判断で極端に減らしたり、飲むのをやめたりするのは避けましょう。
また、まれに乳酸アシドーシスという危険な副作用を起こすことが報告されています。吐き気や下痢、異常なだるさが現れたら、すぐに主治医に連絡してください。
メトホルミンは糖新生を抑える作用があるため、体重が増えにくいという特徴があります。メトホルミンだけの服用では低血糖の副作用が出にくいこともあり、近年この作用を利用してダイエットやダイエット後の体重維持目的で服用するケースもあるようです。
メトホルミンを個人輸入したり、美容クリニックで“やせ薬”として手に入れたりして利用しているようです。
しかし、健康な人が糖尿病の治療薬を服用するのは大きなリスクがあります。十分に注意しましょう。
糖尿病の治療に役立つメトホルミンは、医師の指示に従って適切な量を服用すれば力強い味方になります。医師や薬剤師、栄養士などの医療スタッフと協力しながら正しい運動、食事、服薬をして糖尿病をコントロールしましょう。また、ダイエット目的で服用するのは危険なので控えましょう。
※当院ではダイエット目的でのメトホルミンの処方は行っておりません。