あなたは身近な人が風邪のような症状を訴えていたら、どう思いますか? 風邪のような症状は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の初期症状の可能性があります。HIVに感染した人のうち、およそ半数は初期段階で何らかの症状が現れるとされる一方で、全く症状が出ないケースも存在します。このため、多くの場合、感染に気づかずに経過してしまうことがあります。
HIVは、体内の免疫機能を担う「CD4陽性リンパ球」という細胞に入り込み、そこで増殖しながらそれらを破壊していきます。こうして免疫力が徐々に低下し、感染者が厚生労働省で定められた23種類の疾患のいずれかを発症すると、「エイズ(AIDS)」と診断されます。
HIVの急性期には、発熱や喉の痛みなど、一般的な風邪とよく似た症状が出ることがあり、そのために見逃されやすいという特徴があります。
本記事では、HIVの初期症状に見られる特徴や、感染の仕組み、そして早期に感染を知ることの大切さについて、詳しく解説しています。この記事を読むことで、検査の重要性やHIVへの理解を深め、万一の際にも冷静に対応できる知識を身につけることができます。
当院は、新宿三丁目駅からわずか1分の距離にあり、来院またはオンライン診療であなたの健康に対応します。性感染症の治療・予防やED治療だけでなく、保険診療にも対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
何か疑問や不安がある場合は、遠慮なく当院にご相談ください。皆様の健康と安全を第一に考え、全力でサポートいたします。
▼【来院】のご予約はこちら▼
▼【オンライン診療】のご予約はこちら▼
目次
早期発見のため、正しく知っておきたいHIV初期症状の特徴は以下の5つです。
HIV感染の初期段階では、インフルエンザに似た症状が現れることがあります。代表的なものとしては、38度を超える発熱、強い倦怠感、喉の痛み、頭痛、関節や筋肉の痛みなどが挙げられます。
通常の風邪であれば数日で回復することが多いですが、こうした症状が長引く場合、特に体のだるさが数日以上続くような場合は、HIV感染の可能性も視野に入れておく必要があります。
これらの症状は、一般的な風邪やインフルエンザとよく似ているため、HIVによるものだと気づかずに見逃してしまうことも少なくありません。もしも風邪のような体調不良が2週間以上続いているようであれば、念のため医療機関を受診することをおすすめします。
以下の表では、それぞれの症状について詳しくまとめていますので、ご確認ください。
症状 | 説明 |
発熱 | 38度以上の高熱が出ることもありますが、微熱が続く場合もあります。平熱が低い方は、普段より1度以上高い場合も注意が必要です。 |
倦怠感 | 体がだるく、何もする気力が起きない状態が続きます。普段の家事や仕事が辛く感じる、趣味を楽しむ気力がないといった変化に気をつけましょう。 |
のどの痛み | のどがイガイガしたり、痛みを感じたりします。食事や会話がしづらい、唾を飲み込むのが辛いなどの症状が現れることもあります。 |
頭痛 | 頭がズキズキしたり、重く感じたりします。普段経験する頭痛よりも強く、持続時間が長い場合、注意が必要です。 |
関節痛 | 関節が痛みます。特定の関節だけでなく、複数の関節に痛みが出て、痛む場所が移動する場合もあります。 |
筋肉痛 | 筋肉が痛みます。運動後に似た痛みや全身の筋肉が重だるく感じることもあります。 |
リンパ節は、全身に張り巡らされた免疫システムの一部として、体内に侵入した細菌やウイルスなどを排除する重要な役割を果たしています。主に首、脇の下、鼠径部(足の付け根)などに分布しており、普段は目立たず、触れてもわからない程度の大きさです。
HIVに感染すると、免疫機能が活性化される過程でリンパ節が腫れることがあり、触るとしこりのように感じられる場合があります。この腫れは、場合によっては痛みを伴うこともありますが、痛みを感じないまま腫れているケースもあります。
風邪などの一時的な体調不良でもリンパ節が腫れることはありますが、HIVによるリンパ節腫脹は比較的長期間続くことが特徴です。もし腫れが1か月以上引かないようであれば、念のため医師の診察を受けることをおすすめします。
HIV感染が進行すると、体の免疫反応の変化により、皮膚に赤みを帯びた斑点や、小さな水ぶくれのような発疹が現れることがあります。これらの発疹は、身体の一部に限局する場合もあれば、全身に広がることもあり、かゆみを伴うこともあります。
ただし、皮膚の発疹はHIVだけでなく、アレルギー反応や他のウイルス・細菌感染など、さまざまな要因で発生します。発疹があるからといって、必ずしもHIVに感染しているとは限りません。
発疹に加えて発熱やリンパ節の腫れなど、他の症状も同時に見られる場合には、HIV感染の可能性を考慮に入れる必要があります。心配な場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。
HIV感染の初期段階では、下痢や吐き気、嘔吐などの消化器に関連する不調が現れることがあります。こうした症状は、他の病気でもよく見られるため、HIV特有の症状とは断定できません。
消化器系の異常が、発熱やリンパ節の腫れなど他の初期症状と同時に出現したり、長期間続いたりする場合は、HIV感染の可能性を視野に入れて、医療機関を受診することが大切です。特に、原因不明の下痢が1週間以上続いているようであれば、注意が必要です。
HIVに感染しても、すべての人に初期症状が現れるとは限りません。仮に症状が出たとしても、一時的で自然に消えることが多く、感染に気づかずに日常生活を送ってしまうケースも珍しくありません。
HIV感染による症状の出方やその持続時間には個人差が大きく、発熱や発疹、倦怠感などの有無や強さも人それぞれです。急性期を過ぎると、症状が表れない「無症候期」へと移行します。無症候期もウイルスは体内で活動を続けており、免疫細胞(特にCD4陽性リンパ球)を徐々に破壊していきます。
そのまま治療を受けずにいると、数年から10年以上かけてエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症するリスクがあります。症状が軽く短期間で治まることがあるため、自覚しにくい点がHIVの早期発見を難しくしている一因です。少しでも心当たりがある場合は、ためらわずに検査を受けることが重要です。
現在では、HIV感染が早期にわかれば、適切な抗レトロウイルス治療によってエイズへの進行をほぼ確実に防ぐことができるとされています。早期の発見と治療によって、健康な生活を長く維持する可能性が高まります。
HIV感染の可能性について正しく理解し、早期検査の重要性を認識するため、下記のポイントを解説します。
HIVは、主に以下の3つの経路で感染します。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、感染している人との無防備な性行為(コンドームを使用しない性交渉)を通じてうつる可能性があります。膣性交はもちろん、肛門性交(アナルセックス)や口を使った性行為(オーラルセックス)など、あらゆる形の性行為において感染リスクが存在します。
複数のパートナーと性的関係を持つ場合、感染の可能性はさらに高まります。相手の感染状況を把握できないことが多いため、リスク管理が重要です。HIVは、感染者の血液が体内に入り込むことでも感染します。注射器や注射針を他人と使い回す行為や、医療現場での針刺し事故などが感染原因として挙げられます。
かつては輸血による感染も報告されていましたが、現在の日本では厳格な検査体制が確立されており、輸血による感染例は極めてまれです。HIVは妊娠中、出産時、あるいは授乳を通じて、感染している母親から赤ちゃんへ感染する可能性もあります。
近年では適切な医療的介入(抗レトロウイルス治療や帝王切開、母乳の代替など)により、母子感染のリスクを大きく低減させることが可能となっています。HIVの感染経路やリスク要因について正しく理解することは、自分自身と大切な人を感染から守る第一歩です。予防の意識を高めるためにも、こうした情報を知っておくことが重要です。
HIV検査には主に2つの種類があります。
抗体検査とは、血液中にHIVに対する抗体が存在するかどうかを調べる検査です。HIVに感染すると、体はウイルスに反応して抗体を産生します。この検査では、その抗体の有無を検出することで、HIVへの感染を確認します。
ただし、抗体が体内で作られるまでには通常感染から数週間から数か月程度の時間がかかるため、感染直後では正確な結果が得られない場合があります。いわゆる「ウィンドウ期」と呼ばれる時期です。
検査方法は現在一般的に使用されており、高い精度を持つうえに、比較的安価で受けられる点が特長です。多くの病院やクリニック、保健所で実施されています。
核酸増幅検査(NAT)は、HIVウイルスが持つRNA(リボ核酸)という遺伝情報の一部を直接検出する検査法です。RNAはウイルスが増殖するために不可欠なものであり、検査ではこのウイルスRNAを増幅して検出します。
NATの利点は、感染初期の段階でもウイルスの存在を確認できる点にあります。抗体がまだ体内に作られていない時期でも診断が可能なため、早期発見に有効です。ただし、抗体検査と比べて検査費用が高額になりやすく、対応している医療機関も限られています。
HIVに感染した可能性のある出来事があった場合は、できるだけ早く検査を受けることが重要です。抗体検査による正確な結果を得るには、一般的に感染の可能性があった日から4週間以上経過してからの受検が推奨されています。
また、特定の感染リスクがなくても、定期的にHIV検査を受けることは早期発見・早期治療につながり、自身の健康を守る有効な手段となります。
性交渉の相手が複数いる方や、コンドームの使用が不定期な方は、自覚症状がなくても定期的な検査を習慣化することが望ましいです。
HIVの検査は、全国の保健所や各種医療機関で受けることが可能です。多くの保健所では、匿名かつ無料での検査を提供しており、安心して利用できます。ただし、検査の予約方法や実施日時、費用などは施設によって異なるため、事前にホームページや電話などで確認しておくことをおすすめします。
HIVやエイズに関する不安や疑問を相談できる専門の窓口も用意されています。検査を受けるべきか迷っている方、検査結果について誰かに相談したいと感じている方は、ぜひこれらの相談機関を活用してみてください。
専門知識を持った相談員が、一人ひとりの状況に応じたアドバイスを提供し、不安な気持ちに寄り添ってくれます。
HIV感染を早い段階で見つけて治療を始めることには、多くの利点があります。できるだけ早く治療に取り組むことで、免疫機能へのダメージを抑えることが可能となり、健康状態をより長く保ちやすくなります。
現在使用されている抗HIV薬は非常に高い効果を持っており、正しく服薬を継続することで、HIVに感染していても通常と変わらない生活を送ることができるケースが増えています。
ウイルス量を治療によって抑えることで、他者への感染リスクも大きく低下します。エイズに関連する合併症や、免疫力の低下によって起こる日和見感染症の発症リスクも軽減されるため、治療の意義は非常に大きいといえます。
HIV感染の早期発見には、感染リスクのある行動をとった場合や、不安な症状が見られるときに、ためらわず検査を受けることが大切です。気になることがある場合は、できるだけ早く医療機関や検査施設に相談しましょう。
さらに、HIV感染を防ぐ手段としては「PrEP(プレップ/曝露前予防内服)」という方法も効果的です。本記事では、毎日継続して服用するタイプのPrEP(デイリープレップ)に関する有効性や、使用時の注意点などについて詳しくご紹介しています。HIV予防に関心のある方は、ぜひご一読ください。
>>デイリーPrEPとは?毎日飲むHIV予防薬の効果と注意点を解説
HIVは、早期発見と治療も大切ですが、まずは感染しないようにすることが最も重要です。自分自身だけでなく、大切な人を守るための適切な予防策と正しい知識として、以下を解説します。
性感染症のリスクを下げるために、性行為中の感染対策として最も基本かつ効果的なのがコンドームの使用です。コンドームは、ウイルスや細菌が粘膜に触れるのを物理的に遮断することで、HIVを含むさまざまな性感染症の予防に役立ちます。
ただし、効果を得るためには性行為の開始から終了まで正しく装着し続けることが重要です。途中で外れたり破れたりすると、その分感染の危険性が高まります。
意外に思われるかもしれませんが、コンドームを正しく使えていない人も少なくありません。先端の小さな突起部分、いわゆる「リザーバー」は精液をためるスペースですが、装着前にここをつぶさず空気を抜かずに使うと、破損の原因となることがあります。
コンドームの材質は高温や摩擦、紫外線に弱いため、直射日光が当たる場所や車内など暑くなる環境での保管は避けましょう。保管方法にも気を配ることが、製品の安全性を保つうえで重要です。
感染リスクを抑える方法としては、性的関係を持つパートナーを限定することも有効な手段の一つです。パートナーが一人であれば、その分感染経路が特定しやすくなり、感染リスクの管理もしやすくなります。
お互いの健康状態を確認する手段として、定期的に性感染症の検査を受けることも大切です。早期に感染の有無を知ることで、パートナーとの関係にも安心感が生まれます。
HIVは血液を通じて感染する可能性がありますが、適切な対策を講じることでそのリスクは大きく抑えることができます。頻度は低いものの、路上などに落ちている注射器には不用意に触れないよう注意が必要です。タトゥーやピアスを入れる際にも、器具の衛生管理が行き届いた信頼できる施設を選ぶことが大切です。
他人の血液に直接触れることも避けましょう。自身に傷口や皮膚の裂け目がある状態で血液に接触した場合、感染のリスクが高まる可能性があります。万が一、HIVに感染するおそれのある状況に遭遇した際には、「PEP療法(曝露後予防内服)」という緊急対応の方法があります。
以下の記事では、PEP療法の効果や実施方法、副作用について詳しく解説していますので、緊急時の対応に備えてぜひご覧ください。
>>HIV感染が心配なあなたへおすすめのPEP療法!緊急予防法の効果・実施方法・副作用は?
HIVに感染している母親から新生児への感染を防ぐためには、いくつかの有効な予防策が存在します。そのひとつが、妊娠中に抗レトロウイルス療法(ART)を導入することです。
抗レトロウイルス薬は、HIVウイルスの増殖を抑制する働きがあり、妊娠中に母親がこれらの薬を継続的に服用することで、体内のウイルス量を低く保ち、胎児への感染リスクを大幅に減らすことが可能になります。
出産方法の選択も感染リスクに影響します。帝王切開は、経膣分娩に比べて赤ちゃんと母親の血液が接触する機会が少ないため、HIVの母子感染を防ぐ手段として有効であるとされています。経膣での出産では、分娩時に赤ちゃんの皮膚や粘膜が母体の体液と接触する可能性があるため、感染のリスクが高まることがあります。
授乳の方法にも注意が必要です。HIVに感染している母親が母乳で育てると、母乳を介してウイルスが赤ちゃんに移る可能性があるため、日本では粉ミルクなどの人工乳を使用した育児が推奨されています。
母乳は赤ちゃんの成長にとって多くの栄養や免疫成分を含む貴重な存在ですが、HIV感染リスクを回避するという観点からは、人工乳による育児の方が安全性が高いと考えられています。
HIVは、日常的な接触によってうつることはありません。たとえば、握手や抱擁、食器やタオルの共用、トイレの使用、あるいは蚊などの虫刺されなどによって感染することはないとされています。
HIVは体外に出るとすぐに感染力を失う非常に弱いウイルスであるため、日常生活の範囲で感染するリスクはごくわずかです。過剰に不安を抱く必要はありません。HIV感染の初期段階では、抗レトロウイルス治療(ART)の効果が限定される場合があります。理由の一つに、ウイルスが「HIVリザーバー」と呼ばれる体内の隠れ場所に早期に潜伏してしまうことが挙げられます。
HIVの感染を未然に防ぐ方法として、暴露前予防(PrEP:Pre-Exposure Prophylaxis)は有効な手段とされています。PrEPを使用していても、まれに感染が起こるケースが報告されており、その際に薬剤耐性ウイルスが出現するリスクもあります。
PrEPの使用者は感染リスクが大幅に下がる一方で、感染した場合には抗体の検出が遅れ、通常の抗体検査では正確な診断が難しくなる可能性があるため注意が必要です。
薬剤耐性の発生は、HIV RNA検査を行わずに感染の有無を確認しないままPrEPを始めた場合に多く見られます。そのため、PrEPを導入する前には、感染の有無をしっかり確認することが重要です。
より柔軟に使用できる予防法として注目されているのが「オンデマンドPrEP」です。以下の記事では、オンデマンドPrEPの使用方法・効果・仕組みについて詳しく解説していますので、HIV予防に関心のある方はぜひご覧ください。
>>オンデマンドPrEPって何?HIV予防方法と使い方を徹底解説
HIVは、早い段階で感染に気づき、治療を開始することが重要な疾患です。感染初期には、風邪に似た症状(発熱や喉の痛みなど)が見られることがあり、体調の変化に気づいても見過ごしてしまうことが少なくありません。
少しでも感染の可能性があると感じた場合には、ためらわずにHIV検査を受けることをおすすめします。保健所では匿名かつ無料で検査を受けられますし、病院やクリニックなどの医療機関でも対応しています。
HIVは、正しい知識と予防策を実践することで感染リスクを大幅に下げることができます。たとえば、コンドームを正しく使用することや、使い捨ての清潔な注射器を使用すること、そして定期的に検査を受けることが有効な対策となります。
自分自身の健康はもちろん、大切なパートナーを守るためにも、予防・検査・早期治療を意識した行動が大切です。HIVに感染していても、早期に治療を始めれば、長く健康な生活を維持することが十分に可能です。誰もが安心して検査を受けられる環境を活用し、正しい情報を持ってHIVに向き合いましょう。
当院の別ブランドである「新宿予防クリニック」はHIV・梅毒・クラミジアなどの性感染症予防に特化した、自由診療のオンラインクリニックです。
【新宿予防クリニックの6つの特長】
【処方例】
不安を感じたら、すぐオンラインで診療・処方を検討しましょう。あなたとパートナーの未来を守るための選択を、新宿予防クリニックがサポートします。
Juan Ambrosioni, Elisa Petit, Geoffroy Liegeon, Montserrat Laguno, José M Miró.Primary HIV-1 infection in users of pre-exposure prophylaxis. The Lancet HIV, 2021, 8(3), e166-e174.