HIVという言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?不安や恐怖、自分とは遠い世界の話だと感じている方もいるかもしれません。日本では、HIVの感染者やHIVが原因で発症するAIDS患者の数は減少傾向にありましたが、近年は増加傾向にあります。
HIVは、正しい知識があれば予防できる感染症です。早期発見と適切な治療で、長期的に健康な生活を維持できる可能性があります。正しい知識を持つことで、感染への不安を軽減し、自分自身と大切な人を守りましょう。この記事では、HIVについて、以下の内容を解説します。
当院では、性感染症のオンライン診療を行っています。検査や治療に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。
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目次
HIVについて、以下のポイントを解説します。
HIVは「ヒト免疫不全ウイルス」の略称です。ヒト免疫不全ウイルスは、体を守る免疫システムの中核を担うヘルパーT細胞を攻撃し、破壊するウイルスです。HIVに感染することによって免疫システムが弱体化されると、免疫不全状態を引き起こします。通常であれば感染しないような日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)や悪性腫瘍、結核にかかる可能性が高くなります。
AIDSは「後天性免疫不全症候群」の略称です。HIVに感染した結果、免疫力が低下し、さまざまな病気を発症した状態をAIDSと呼びます。HIVは原因となるウイルスの名称、AIDSはHIV感染によって引き起こされる病気の名称です。
HIVに感染しても、すぐにAIDSを発症するわけではありません。適切な治療を継続して受けることで、AIDSの発症を防ぎ、健康的な生活を維持できる可能性があるとされています。
治療によって体内のHIVの量をウイルス検出限界値以下に減らし、免疫力を維持できる可能性があります。AIDSの発症を防ぎ、他者への感染リスクを低減するためには、早期発見と早期治療が重要です。HIVに感染した可能性がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
HIV感染の初期は、以下の症状が現れることもあります。
多くの場合は、自覚症状がほとんどありません。感染に気づかず、長期間ウイルスを体内に持ち続けてしまうケースが多いです。感染初期の症状は一過性で、数日から数週間で消失することも多く、他の病気と区別がつきにくいです。自覚症状がないまま数年が経過し、免疫力が徐々に低下すると、以下の症状が現れ始めます。
さらに進行すると、以下の疾患を発症するリスクが高まります。
HIVへの感染が少しでも疑われる場合は、新宿区保健所や東京都新宿東口検査・相談室など、信頼できる検査機関で早期に検査を受けることが大切です。当院では、土日や祝日も診療しています。HIVに感染した可能性がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
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HIVは、以下の3つの経路で感染します。
HIVは、唾液や涙、汗、通常の接触では感染しないとされています。3つの感染経路について正しく理解し、自分自身を守ることが重要です。
性行為による感染は、HIVの最も一般的な感染経路です。HIVは、精液や膣分泌液、血液などの体液に含まれています。コンドームを使用しない以下のような性行為によって、HIV感染者の体液が粘膜や傷口に触れることで感染します。
アナルセックスは、直腸の粘膜が傷つきやすく、HIVが侵入しやすいため、感染リスクが高いと考えられています。膣性交も、粘膜への接触があるため感染リスクがあります。オーラルセックスは比較的感染リスクが低いですが、口の中に傷などがある場合は感染する可能性があります。
コンドームは、性行為によるHIV感染を予防するうえで最も効果的な方法です。コンドームを正しく使用しなければ、HIV感染を予防できません。コンドームは性行為の最初から最後まで、正しく装着することが重要です。使用期限が切れていないか、破損していないかを確認することも大切です。
梅毒やクラミジア感染症、淋病などの性感染症に感染している場合、性器や粘膜に炎症が起こり、HIVへの感染リスクが高まります。自分自身とパートナーを守るために、定期的に性感染症の検査を受けることをおすすめします。
HIVは、血液を介しても感染します。注射針を共有するなどして、HIVに感染した血液が直接体内に入り感染する可能性があります。薬物使用などで注射針を他の人と共有すると、HIVに感染するリスクが高くなります。
医療行為でも、適切に滅菌されていない器具を使用した場合、感染する可能性があります。日本では、医療現場での滅菌処理は徹底されており、輸血による感染はまれです。入れ墨やピアスなどで使用される針が滅菌されていない場合も、感染リスクがあります。施術を受ける際には、衛生管理が徹底されている施設を選ぶことが重要です。
HIVに感染した母親から、赤ちゃんに感染することを母子感染といいます。妊娠中や出産時、授乳時に赤ちゃんへ感染する可能性があるため注意が必要です。以下の適切な治療を受けることで、母子感染のリスクを減らせる可能性が高まります。
母子感染は、適切な医療介入によって予防できる可能性があります。妊娠中にHIV検査を受けるなど、母子感染のリスクを低減する方法があります。妊娠を希望する場合は、事前に医療機関に相談し、適切な指導を受けることが大切です。
HIVは、現代の医学では完全には治癒できない病気です。感染を予防するために、以下の手段を正しく実践することで、HIV感染のリスクを大きく下げられる可能性があります。
コンドームは、性行為によるHIV感染を予防する効果的な方法の一つです。正しく使用すれば、感染リスクを減らせます。薬局やコンビニエンスストアなどで簡単に入手できることもメリットの一つです。コンドームを使用する際の重要なポイントは、以下のとおりです。
PrEP(曝露前予防)は、HIVに感染していない人が、HIV感染のリスクを減らすために服用する薬です。研究によると、PrEPを毎日適切に服用することで、HIV感染リスクを低減できる可能性があることが示されています。PrEPはHIV感染の予防には効果的ですが、他の性感染症の予防効果はありません。コンドームと併用することが大切です。
PrEPは医療機関で処方が必要な薬です。服用を開始する前に、医師との相談やHIV検査を受ける必要があります。服用中は定期的に検査を受けてください。
デイリーPrEPはHIV感染リスクを大幅に低減できる効果的な予防法です。継続的に服用することで、HIV感染の可能性を減らせます。複数のパートナーとの性的接触がある方や、感染リスクが懸念される状況にある方の不安解消に役立ちます。
オンデマンドPrEPはHIV感染リスクを柔軟、かつ大幅に低減できる予防法です。計画的な性的接触の前後に特定のスケジュールで服用することで、感染の可能性を減らせます。不定期な性的接触がある方や、継続した服用が難しい方の不安解消に役立ちます。
PEP(曝露後予防)は、HIVにさらされた可能性がある場合に、感染を防ぐために服用する薬です。HIV陽性者との性的接触など、リスクが疑われる状況の後72時間以内に服用することで、感染の可能性を減らせます。コンドームが破損した場合や予期せぬ性的接触があった際の不安解消に役立ちます。
HIVにさらされてから72時間以内に服用を開始することが重要です。72時間を過ぎてしまうと、効果が期待できなくなる可能性があります。PEPはHIVの感染を100%防げるわけではありません。PEPは緊急対応策であり、定期的な予防法としての使用は避けてください。
PEPは医療機関で処方が必要な薬です。28日間、毎日服用する必要があり、服用中は定期的に検査を受ける必要があります。副作用として、吐き気や頭痛、疲労感などの症状が現れることがあります。HIVに感染した可能性がある場合は、すぐに医療機関に相談してください。
HIVは性行為や血液、母子感染の3つの経路で感染するウイルスです。初期は、風邪に症状が似ていたり、無症状だったりするため、感染に気づかない場合があります。現時点では、HIVを完全に体内から除去する治療法は確立されていないとされています。
早期に発見し、適切な治療を受ければ、AIDSの発症を防げる可能性があります。陽性の場合、当院と連携している専門医療機関をご紹介いたします。
HIVは、適切な知識と対策で予防できる感染症の一つです。予防方法として、コンドームを正しく使用することや、PrEP、PEPなどの処方薬を服用することが有効です。感染経路や予防方法を正しく理解し、予防や早期治療を心がけてください。HIVへの感染が少しでも疑われる場合は、保健所や医療機関などで早期に検査を受けることが大切です。
当院では、性感染症の検査を行っています。検査方法や費用について、詳しくは以下のページををご覧ください。
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Kouki Matsuda, Kenji Maeda. HIV Reservoirs and Treatment Strategies toward Curing HIV Infection. Int J Mol Sci, 2024, 25(5), p.2621.