「最近、なぜか些細なことで怒りっぽくなってしまう」、ご自身やご家族の変化に戸惑っていませんか?原因は、40代以降に減少する男性ホルモン「テストステロン」の仕業です。気づかないうちに進行しているうつ病や甲状腺の病気が隠れていることもあります。放置すれば、人間関係や仕事にも影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、男性の怒りの裏にある原因を医学的に解説し、生活習慣の見直しや治療法など、今日から実践できる対処法を解説します。性格の問題だと諦めてしまう前に、根本原因を探りましょう。
目次
男性の怒りっぽさに関わる主な原因について、以下の5つを解説します。
テストステロンは「男性ホルモン」の代表的な存在であり、男性の心と体の健康を保つ重要な役割があります。テストステロンの主な働きは以下のとおりです。
テストステロンは、20代をピークに年齢とともに減っていきます。40代以降になると「男性更年期障害(LOH症候群)」として現れる可能性があります。テストステロンが減ると、やる気が低下し、気分が落ち込みやすくなります。不安感やイライラ、怒りっぽさなどの精神症状も出やすくなります。
以下の記事では、男性更年期障害が始まりやすい年齢や見逃されやすい初期症状について詳しく解説しています。予防のヒントも紹介していますので、早めの対策を検討したい方はぜひご覧ください。
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怒りっぽさの原因として「うつ病」の可能性もあります。うつ病は悲しみの感情が強い状態をイメージする方が多くみられます。男性の場合、症状が表に出ず「イライラ」や「怒り」として現れる「易刺激性(いしげきせい)」になることもあります。易刺激性になると、家族や同僚に当たってしまい、後で自己嫌悪に陥る可能性があるため、注意が必要です。
うつ状態と躁(そう)状態を繰り返す「双極性障害」も考えられます。躁状態のときは、気分が高揚して活動的になります。しかし、自信過剰になったり、自分の意に沿わないと怒ったりします。攻撃的な一面が目立つことも、双極性障害の特徴です。
気分の波が激しく、怒りをコントロールできないと感じるなら、精神科や心療内科などの専門の医療機関に相談することが大切です。
以下の記事では、男性更年期障害の疑いがある場合に適した診療科の選び方や、症状別の受診先について詳しく解説しています。初めて受診を検討している方に役立つ内容です。
>>男性更年期障害は何科を受診すべき?適切な診療科の選び方を詳しく解説
怒りっぽさの原因として「甲状腺機能亢進症」の可能性もあります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。甲状腺ホルモンが過剰になると、体は常に全力疾走しているような状態となります。常に交感神経が興奮しているため、心も体も休まりません。甲状腺機能亢進症の症状は以下のとおりです。
「精神的な問題だ」と自己判断せず、内科を受診しましょう。
怒りっぽさの原因として「過度なストレス」があります。適度なストレスは活力になりますが、過度なストレスは心身を蝕みます。強いストレスを感じると、脳の感情をコントロールする働きが鈍ります。
ストレスはホルモンバランスにも深刻な影響を与えます。体は、強いストレスを「生命の危機」と判断し、テストステロンの分泌を後回しにして、男性更年期障害の原因になります。自分に合ったストレス解消法を見つけ、意識的に休息をとることが重要です。
睡眠は、心と体の疲れを回復させるための大切な時間です。慢性的な睡眠不足は、心身のバランスを保つ「自律神経」を乱し、怒りっぽさの原因につながります。自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、休ませる「副交感神経」があります。
日中は交感神経が、夜間や睡眠中は副交感神経が優位に働くのが正常な状態です。睡眠不足が続くと、夜になっても交感神経が優位なままになります。体が常に緊張・興奮状態にあるため、些細なことでイライラしやすくなります。
慢性的な睡眠不足はテストステロンの分泌量を低下させることが報告されています。寝る直前の飲酒やスマートフォンの使用は睡眠の質を下げます。心当たりのある方は、生活習慣を見直しましょう。
怒りっぽさと併発しやすい症状は、以下のとおりです。
テストステロンは、男性の心身の活力を支えるホルモンです。テストステロンが減ると、怒りっぽさだけでなく性機能にも症状が現れます。特に、ED(勃起不全)は代表的な症状の一つです。EDとは、満足のいく性行為のために十分な勃起を達成・維持できない状態です。テストステロン値の低下と深く関連している可能性があります。
「年齢のせい」と片付けられがちですが、ご本人にとっては自信を失う深刻な悩みとなります。以下の変化に心当たりがないか、確認しましょう。
後期発症性性腺機能低下症は、男性の高齢化に伴う臨床症状です。テストステロンの低下と、特有の症状が組み合わさって起こります。一人で抱え込まず、専門の医療機関に相談することが大切です。適切な診断と治療によって、改善が期待できる症状です。
以下の記事では、40代以降の男性に起こりやすい性欲減退の原因やホルモンの関係、具体的な改善策について解説しています。
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イライラや怒りっぽさに加え、心の不調が同時に現れることも多いです。うつ病の症状と似ているため、見過ごされやすいのが特徴です。
男性更年期障害が原因の場合、テストステロンの減少が脳の機能に影響します。感情のコントロールが難しくなったり、意欲が低下したりします。理由もなく不安な気持ちに襲われ、将来が心配になることもあります。ご自身の心の状態を客観的に見るために、以下の項目を確認しましょう。
1つでも当てはまる場合は、注意が必要であるため、症状を見逃さないようにしましょう。
「急に顔がカッと熱くなり、汗が噴き出す」という体のサインも怒りっぽさの原因です。女性の更年期症状に多く見られますが、男性でもテストステロンの減少や自律神経の乱れによって同様の変化が起こる場合があります。テストステロンが低下すると、体の温度調整機能を担う視床下部が影響を受け、ほてりや発汗が増えることが知られています。
特に、慢性的な疲労感は「年齢のせい」と見過ごされがちです。しかし、生活の質を大きく下げる原因となるため、軽視できません。以下の体の不調が続いていないか、確認しましょう。
身体的な不調は、気分の落ち込みやイライラを悪化させます。「体がだるいから気分も晴れず、余計に怒りっぽくなる」という悪循環です。心と体の両方のサインに目を向けることで、改善していきましょう。
怒りをコントロールするための4つの対処法は、以下のとおりです。
薬や特別な治療を考える前に、取り組むべき大切なことは、日々の「生活習慣」を見直すことです。心と体は、毎日の食事や運動、睡眠によって作られています。加齢に伴う心身の不調への対策として、生活習慣の改善が推奨されています。食事面では、テストステロンの生成を助ける亜鉛やビタミンD、タンパク質を意識して摂りましょう。
運動は、気分転換になるだけでなく、テストステロンの分泌を促す効果も期待できます。筋肉に負荷をかける抵抗運動である筋肉トレーニングや有酸素運動が推奨されています。筋トレと有酸素運動を組み合わせることで、心と体の両面から良い影響が期待できます。
睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、イライラしやすくします。毎日7時間程度の睡眠時間を確保しましょう。時間だけでなく「睡眠の質」も重要です。寝る前のスマートフォンの光は、眠りを誘うホルモンの分泌を妨げます。リラックスできる環境を整え、脳と体を休ませましょう。
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生活習慣を見直しても怒りっぽさが改善しない場合、ホルモン補充療法が推奨されます。ホルモン補充療法とは、注射や塗り薬を用いて、体内で不足しているテストステロンを直接補う治療法です。40代以降で、男性更年期障害(LOH症候群)が原因と考えられる場合に効果が期待できます。ホルモン補充療法で期待できることは以下のとおりです。
治療する場合は、専門の医療機関で行う必要があります。血液検査でテストステロンの値が低いことを確認し、治療が適しているかを判断します。治療前に前立腺がんなどがないかを調べることも不可欠です。副作用のリスクを管理するためにも、医師の診断と指導のもとで治療を進めましょう。
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「ホルモン治療には少し抵抗がある」という方は、漢方薬による治療がおすすめです。漢方薬は、体全体のバランスを整え、心と体の不調を根本から改善していくことを目指します。男性の怒りっぽさや更年期症状には、患者さんの体質や症状に合わせて漢方薬が使われます。漢方薬の例と使用者は以下の表のとおりです。
| 漢方薬の例 | 使用者 |
| 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 疲れやすく、食欲がなく、気力が湧かない |
| 加味逍遙散(かみしょうようさん) | イライラしやすく、のぼせや肩こりも気になる |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | 不安感が強く、動悸や不眠に悩まされている |
漢方薬は比較的副作用が少ないとされていますが、体質に合わないこともあります。自己判断で選ぶのではなく、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することが大切です。ご自身の状態に合ったものを選んでもらいましょう。
怒りの感情の裏には、ストレスや不安、孤独感などの、自分でも気づいていない気持ちが隠れていることがあります。カウンセリングは、専門家との対話を通じて自分の心と向き合う時間であり、怒りっぽさの原因を見つめ直す手助けとなります。カウンセリングで取り組む内容は以下のとおりです。
ご家族が本人の怒りっぽさに悩んでいるなら、伝え方にも工夫が必要です。「最近怒りっぽいよ」と指摘すると、相手を刺激してしまう可能性があります。心配している気持ちを伝え、受診や相談を促すことが大切です。カウンセリングは、ご本人はもちろん、対応に悩むご家族にとっても有効なサポートとなります。

「最近イライラしがちだ」と感じるのは、決して性格が変わったからではなく、ホルモンバランスの乱れや身体的な不調が原因かもしれません。感情の変化は心身からの大切なサインであり、放置せずに適切な原因を見極めることが重要です。
生活習慣の改善で落ち着くこともありますが、背景に男性ホルモンの低下が隠れている場合、自力での解決は困難です。
イーヘルスクリニック新宿院では、精密な血液検査によってホルモン状態を「数値」として可視化し、多角的な診断と治療を提供しています。
【当院の特徴】
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Rachel Leproult, Eve Van Cauter. Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy Men. JAMA, 2011, 305, 21, p.2173-2174