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2022.08.31
#対象疾患

新しい抗肥満薬(保険適応薬)のGLP-1受容体作動薬『ウゴービ』とは? ~特徴と使用上の注意点を解説~

GLP-1は、もともと人間の体にあるホルモンです。膵臓に作用して血糖値を下げるインスリンの分泌を促すはたらきがあります。GLP-1受容体作動薬はGLP-1を補う薬であり、膵臓からインスリンの分泌を助けます。通常GLP-1は食事をすると小腸から分泌されて体内で分解されますが、GLP-1受容体作動薬のGLP-1は分解されにくいため、インスリン分泌を促して血糖値を下げる効果を発揮します。GLP-1受容体作動薬には胃の消化運動を抑えるはたらきもあります。そのため、食べ物を消化するのにかかる時間が長くなって、食欲を抑える効果があることも特徴の1つです。

GLP-1受容体作動薬は、糖尿病治療に使われるだけでなく、肥満外来(医療ダイエット外来)でも使用されることがあります。ただし、一般的には肥満外来(医療ダイエット外来)で使用されるGLP-1受容体作動薬(例:オゼンピックやリベルサス)は、自費診療となり、保険が適用されないことが多いです。

新しい抗肥満薬(保険適応薬)のGLP-1受容体作動薬『ウゴービ』とは? 

2023年3月27日にGLP-1受容体作動薬の「ウゴービ®皮下注(セマグルチド)」が肥満症の適応として保険診療で認可されました。これは約30年ぶりの抗肥満症薬の保険治療認可となります。臨床試験では、ウゴービを使用した群では平均で体重が13.2%減少したことが示されています。具体的には、体重100kgの人がウゴービ2.4mgの皮下注射を週に1回68週間継続することで平均で13.2kgの減量が得られることが示されました。

参考文献
Lancet Diabetes Endocrinol. 2022 Mar;10(3):193-206.
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t353/202302/578414.html

ただし、適応症は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、かつBMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、またはBMIが35kg/m2以上の患者さんに限られます。

ウゴービ®皮下注の適応は”高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。”に限られます。

※肥満に関連した健康障害:

  1. 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患
  6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
  8. 月経異常・女性不妊
  9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  10. 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
  11. 肥満関連腎臓病

ただし、薬価や発売日は未定です。当院ではウゴービ®を処方するにあたっては、保険診療上の対象になるかを適切に判断し、注射の使い方や副作用のことなどを説明させていただいた上での適正使用をさせていただきます。処方可能になりましたらまたお知らせいたします。

ウゴービという薬は、糖尿病治療薬として使われているオゼンピックやリベルサスと同じ成分であり、その効果も脳の中枢を刺激して食欲を抑え、胃の運動を抑制することで体重を減らす効果が期待されます。ウゴービの最大投与量は、オゼンピックの最大投与量1.0mgに比べて2.4mgまでできるため、より強力な効果が期待できます。ただし、消化器系の副作用である吐き気、下痢、便秘などがより多く見られる可能性があるため、慎重に使用する必要があります。

GLP-1受容体作動薬を使用するときの注意点

GLP-1受容体作動薬は、低血糖の副作用が現れにくいとされています。しかし、使用するときには注意しなければならないこともあります。

・使い始めは副作用が起こることもある

低血糖などの副作用が少ないといわれるGLP-1受容体作動薬ですが、全く副作用が出ないというわけではありません。GLP-1受容体作動薬は胃の消化運動を抑えるはたらきがあるため、使い始めは吐き気、胸やけ、便秘、下痢などお腹の症状が現れることがあります。多くは数日から数週間で自然に慣れていきますが、症状が続くときは薬剤のタイプや量が体に合っていない可能性が考えられます。

・ほかの糖尿病治療薬との併用に注意

糖尿病の治療は、いくつかの治療薬を組み合わせて行うことも少なくありません。GLP-1受容体作動薬以外の治療薬を一緒に使用している場合は、低血糖の症状が現れやすくなります。動悸、吐き気、冷や汗、だるさなどの症状が現れたときは、糖分を補給しましょう。また、気になる症状がみられた場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

新しい抗肥満薬(保険適応薬)のGLP-1受容体作動薬『ウゴービ』の特徴のまとめ

  • 約30年ぶりの保険治療認可された抗肥満症薬
  • GLP-1というホルモンの分泌を促進し、インスリンの分泌を促すだけではなく、食欲を抑える効果がある。
  • 今までのGLP-1受容体作動薬より強力な減量効果が期待できる。
  • 低血糖の副作用が現れにくい。
  • 消化器系の副作用である吐き気、下痢、便秘などがより多く見られる可能性がある。
  • 週1回製剤

QA

  • 肥満外来(医療ダイエット外来)は保険適用ですか?
    ただし、以下の条件を満たす場合は、『ウゴービ』が保険適用されます。

高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のうちいずれかを持ち、食事療法や運動療法を試みたものの効果が得られなかった場合
BMIが27kg/m2以上で、2つ以上の肥満に関連する健康障害がある場合、またはBMIが35kg/m2以上の場合

  • GLP-1受容体作動薬以外で肥満外来(医療ダイエット外来)で使用される薬はありますか?

当院の肥満外来(医療ダイエット外来)では、腎臓で糖を再吸収するタンパク質「SGLT2」の働きを抑制する治療薬(例:フォシーガなど)を使用することがあります。この治療薬は、糖を尿と一緒に排出するように促す効果があります。

参考記事
https://ehealthclinic.jp/medical/%e3%83%95%e3%82%a9%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%82%ac/

  • インスリンとGLP-1受容体作動薬の違いは何ですか?

インスリンは唯一体内で血糖値を下げるはたらきをもつホルモンで、膵臓にある“β細胞”で作られています。インスリン治療薬は、不足している分のインスリンを注射で補うことで、血糖値の上昇を抑えます。つまりGLP-1受容体作動薬はインスリンの分泌を促す薬で、インスリン治療薬は直接インスリンを追加する薬ということになります。

  • ウゴービとオゼンピックやリベルサスなど他のGLP-1受容体作動薬との違いは何ですか?

ウゴービという薬は、糖尿病治療薬として使われているオゼンピックやリベルサスと同じ成分であり、その効果も脳の中枢を刺激して食欲を抑え、胃の運動を抑制することで体重を減らす効果が期待されます。ウゴービの最大投与量は、オゼンピックの最大投与量1.0mgに比べて2.4mgまでできるため、より強力な効果が期待できます。ただし、消化器系の副作用である吐き気、下痢、便秘などがより多く見られる可能性があるため、慎重に使用する必要があります。

参考記事
https://ehealthclinic.jp/medical/%e3%83%aa%e3%83%99%e3%83%ab%e3%82%b5%e3%82%b9/

  • ウゴービの海外の承認・発売の状況を教えてください。

2023年2月現在、米国、欧州、カナダ、英国、スイス、インド、オーストラリアの規制当局より承認されています。米国、デンマーク、ノルウェーで発売されています。

  • オゼンピックやリベルサスなどのGLP-1受容体作動薬は肥満薬として保険適応されていますか?

リベルサスなどは「2型糖尿病」の効能・効果で承認されていますが、肥満治療目的での使用については日本で承認されていません。ただし、GLP-1受容体作動薬は、アメリカのFDA、EU27か国のEMA、韓国のMFDSにおいて、肥満症の適応で承認をされています。日本では、2型糖尿病治療薬として厚生労働省の認可を受けています。

  • 診察は対面ですか?

当院の肥満外来(医療ダイエット外来)は【来院】と【オンライン診療】のどちらも選択いただくことが可能です。

  • 栄養カウンセリングとはなんですか?

経験豊富な管理栄養士が、食生活について改善指導を行います。自費の肥満外来(医療ダイエット外来)のメニューを申し込まれた方は、初回無料でご利用いただくことが可能です。2回目以降は30分3,300円(税込)でご利用いただけます。

当院の治療方針について

肥満症の合併症には、糖尿病や高血圧、心臓病、慢性腎臓病やがんなどさまざまなものがあり、時に命に関わることもあります。しかし、肥満や肥満症の場合も通常は自覚症状がないため、すぐに気付くことは難しいとされています。肥満外来(医療ダイエット外来)の本来の目的は、肥満症による合併症の発症を防止し、患者さんが健康で生活の質(QOL)が向上し、健康な人と同じ寿命を過ごせるようにすることです。

極端な食事制限、または運動をしないダイエットなどは筋肉や骨が減少するといわれています。この場合、体重が落ちたとしても、体脂肪には変化がないこともあります。むしろ、体の中で多くのエネルギーを消費する筋肉が減ると基礎代謝も減って、反対に太りやすい体へと変化する可能性があります。そのため、無理をして急激に減量しようとせず、食事のコントロールと適度な運動で健康的に体重や体脂肪を落とすようにしましょう。また、急激な減量は体の負担になり、拒食症や貧血、月経異常などにもつながるため、過度な食事制限には注意が必要です。

よって、当院の治療方針は”通常の投薬治療”に加えて”管理栄養士による栄養カウンセリング”の2本柱で行っています。

肥満外来(医療ダイエット外来)の対象になるかを適切に判断し、注射の使い方や副作用のことなどを説明させていただいた上での適正使用をさせていただきます。また、投薬治療に加え、医師や管理栄養士が正しい知識のもと、皆さんの日常生活に合わせた無理のない減量法やコツなどを提案いたします。

イーヘルスクリニック新宿院では、医師をはじめ、看護師や管理栄養士、検査技師などがチームを組んで患者さんの健康を全力でサポートします。診療は土日祝日も対応しており、24時間365日診療予約がネットから可能です。忙しい方でも受診しやすい体制を整えていますので、お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。

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