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2022.09.28
#アレルギー科

アトピー性皮膚炎の治療に使われる薬とは?〜症状が改善しないときに確認したいこと〜

アトピー性皮膚炎では肌の炎症やかゆみ、乾燥などの症状がみられます。これらのつらい症状を改善するために使用する薬には多くの種類があります。アトピー性皮膚炎の薬にはどのような特徴があり、副作用はどの程度なのかなど知っておくことが大切です。

本記事では、アトピー性皮膚炎の治療に使用される薬の種類と効果、副作用などについてまとめました。

アトピー性皮膚炎に対する薬物療法は対症療法中心

アトピー性皮膚炎を薬で完全に治すことは難しく、治療は症状をできるだけ抑える対症療法が中心となります。治療の目標は、症状がないか、あっても日常生活に支障がない程度の状態を維持することです。そのため、症状や部位に合わせて適した薬を組み合わせて長期間使用していくことが治療の基本になります。

使用される薬剤のほとんどが軟膏やクリーム、ローション、テープ剤などの外用薬です。そのほかの薬は外用薬の補助として使用したり、外用薬では効果がみられなかった場合に使用が検討されたりすることが多いです。

炎症を抑える多様な外用薬

(1)ステロイド外用薬

アトピー性皮膚炎を治療するときに、まず利用する抗炎症外用薬です。子どもから大人まで、あらゆるアトピー性皮膚炎で使われます。

作用の強さ(ランク)が5段階あり、症状に合わせて使い分けます。強いランクのステロイド外用薬を長期間使用すると、毛が濃くなったり肌が薄くなって血管が浮き出て見えたりするなどの副作用があるため、症状が落ち着いたら弱いランクに下げていきます。

(2)タクロリムス水和物軟膏

ステロイド外用薬とは違った作用機序で炎症を抑える外用薬です。

ステロイド外用薬でも症状が改善しなかった場合に、皮膚の薄い首から上の炎症に塗ります。ジクジクした傷のある部位には使えません。また、人によってはヒリヒリすることがあります。

(3)デルゴシチニブ軟膏

免疫細胞が体を攻撃することを抑え、かゆみや炎症を軽減させる外用薬です。ステロイドと違って長期間使用できますが、傷のある部分には塗れません。また、ニキビなどができやすいとされています。

 

近年、ステロイド軟膏や保湿剤以外にも新しい機序の軟膏が登場しています。2022年にはモイゼルト軟膏が新たに発売されました。この薬は従来のものとは異なる作用機序を持ち、安全性が高く、使用上の制約も少ないため、長期間使用できる抗炎症外用剤です。2021年9月にはアトピー性皮膚炎の効能効果として製造販売承認を取得しました。

モイゼルト軟膏は外用ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤と呼ばれる薬で、アトピー性皮膚炎の病態に関与するサイトカインやケモカインといった物質の産出を制御します。これにより、皮膚の炎症やかゆみを抑えてアトピー性皮膚炎を改善します。

 

この研究は、アトピー性皮膚炎の成人患者に対するディファミラスト軟膏1%の効果と安全性を検証する第3相無作為化二重盲検試験です。試験には18歳以上の患者が参加し、4週間にわたり1日2回、ディファミラスト軟膏1%またはプラセボを適用しました。

目的:

  • ディファミラスト軟膏1%のアトピー性皮膚炎治療における有効性と安全性を評価すること。

方法:

  • 日本の18歳以上の成人患者を対象に、ディファミラスト軟膏1%とプラセボを比較する無作為化二重盲検試験が行われました。
  • 参加者はランダムにディファミラスト軟膏1%またはプラセボを1日2回、4週間使用しました。

結果:

  • 4週間後、ディファミラスト軟膏1%を使用した患者のうち38.46%が症状の著しい改善を示しました。これは、プラセボ群の12.64%に比べて有意に高い割合です。
  • 副作用は主に軽度から中等度であり、発生率も低かったです。

結論:

  • ディファミラスト軟膏1%は成人のアトピー性皮膚炎治療において効果的かつ安全であることが示されました​。

参考文献:J Am Acad Dermatol. 2022 Mar;86(3):607-614.

 

かゆみや炎症を抑える内服薬

(1)抗ヒスタミン薬

かゆみの原因であるヒスタミンという化学物質のはたらきを抑えて、かゆみを軽減します。強い作用はないので、ステロイド外用薬などの補助として服用することが多いです。薬剤のタイプによっては眠気やだるさなどが表れることがあります。

(2)シクロスポリン

免疫が体を攻撃しないように抑えるはたらきがあります。外用薬だけでは強いかゆみや炎症を抑えられない患者さん(16歳以上)が服用します。

長期間服用の安全性が確立されていないため、服用時には期間や量を細かく調整します。まれに腎臓障害がみられたり、ウイルスなどの感染症にかかりやすくなったりします。

かゆみや皮疹を抑える皮下注射

(1)デュピルマブ

アレルギー反応に関係した炎症を抑えてかゆみや皮疹を改善します。これまでの治療で症状が改善しなかった成人に適した皮下注射です。

2週間に1回の間隔で注射のために通院する必要があります。結膜炎を起こすリスクが高くなるという報告があります。

症状が改善しないときは外用薬の塗り方を再確認

ステロイド外用薬を塗っても症状が改善しない場合は、塗り方に問題があるかもしれません。

外用薬の量は、フィンガーチップユニット(FTU)を目安にします。1FTUはチューブから押し出した薬が「大人の人差し指の先端から第1関節まで乗る量(約0.5g)」です。これを大人の両方の手のひら分の面積に伸ばして塗るのが適切だとされています。塗るときはゴシゴシすり込まずに、やさしく広げるようにします。どうしても症状が改善しない場合は、塗り方が合っているか医師に確認するとよいでしょう。

症状が改善しても薬は途中でやめないで医師に相談を

アトピー性皮膚炎の薬を使用している患者さんに気を付けてほしいのは、かゆみや湿疹が消えても使用をやめないことです。皮膚の表面はきれいに症状が治まったように見えても、皮膚の中ではまだ炎症がくすぶっているケースが少なくありません。自己判断で薬をやめてしまうと、鎮まりつつあった炎症がぶり返してしまうので、医師の指示どおりに服用しましょう。

薬の変更希望や使い方の疑問などがあるときは、必ず医師に相談してください。

 

アトピー性皮膚炎にお悩みの方へ

アトピー性皮膚炎は、かゆみと湿疹を伴う皮膚炎が長期間続く病気です。根本的な原因は解明されていませんが、体質と環境が関係していると考えられています。

アトピー性皮膚炎は、適切な治療を受けることで症状を抑え、日常生活に支障のない状態を維持することが可能です。しかし、完治は難しい病気でもあります。

当院では、患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立て、

  • スキンケア:保湿剤による皮膚のバリア機能の強化
  • 薬物療法:ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの塗り薬、抗ヒスタミン薬などの飲み薬
  • 環境コントロール:ダニやホコリなどのアレルゲン対策、ストレスの軽減

などを行っています。

また、アトピー性皮膚炎は、お子様だけでなく大人も発症する病気です。近年では、大人向けの治療法も進歩しています。

アトピー性皮膚炎でお悩みの方は、ぜひイーヘルスクリニック新宿院のアレルギー科にご相談ください。

 

参考記事

アレルギー検査の費用はどれくらい? ~検査を受ける診療科や保険適用の有無について解説~

遅延型アレルギー検査で調べられる項目とは? ~何科で受けられるのか、検査費用についても解説~

花粉症の抗ヒスタミン薬の効果や特徴とは?~第一世代と第二世代の違いについてご紹介~

 

記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。