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アトピー性皮膚炎は、皮膚に激しいかゆみのある皮膚炎(湿疹)ができる病気です。慢性的によくなったり悪くなったりすることを繰り返し、完治しにくいことで知られています。子どもから大人まで多くの人を悩ませている病気の1つといえます。“奇病な”という意味のギリシャ語が由来である、この不思議な病気にはまだ分からないことがたくさんあります。
ここでは、現時点で分かっているアトピー性皮膚炎の発症のメカニズム(原因)や遺伝との関わりについて解説します。
アトピー性皮膚炎は、ウィルスや細菌といった、はっきりした病原菌が特定できる病気ではありません。さまざまな原因が複合的に関わることで、免疫が暴走して自分の体を攻撃してしまう病気の1つです。
現在、アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは“アトピー素因”をもっているといわれます。アトピー素因とは、(1)家族や自分が気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、結膜炎などにかかった経験がある(2)アレルギー反応に関わるIgE抗体を産生しやすい体質であることです。生まれつきアトピー素因をもつ人が、アレルゲンの多い環境やストレスなどたくさんの刺激にさらされた結果、アトピー性皮膚炎が発症すると考えられています。
アトピー性皮膚炎は遺伝するのか、という疑問をよく耳にしますが、アトピー性皮膚炎自体は遺伝しません。
ただし、アレルギー反応を起こしやすいアトピー素因が遺伝するケースが少なくないのは事実です。そのため、親がアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患をもっていると、子どもにアトピー素因が遺伝し、アトピー性皮膚炎を発症する可能性があると考えられます。特に子どもではアトピー性皮膚炎だけでなく、花粉症や気管支喘息などのアレルギー疾患が次々に表れるケースもめずらしくないようです。
さらに、アトピー性皮膚炎の患者には、肌を保湿してバリア機能を保つはたらきに関係のある遺伝子、炎症反応に関する遺伝子、かゆみに関する遺伝子などの変異がみられるという報告があります。これらは、アトピー性皮膚炎と関連がある候補遺伝子とされています。
アトピー素因があるからといって、だれもがアトピー性皮膚炎に悩まされるとは限りません。アトピー性皮膚炎の原因は、肌のバリア機能が低下してカサカサになった皮膚に、アレルギーの元となるアレルゲンが触れて炎症を起こすことにあります。
そのため、常に肌の保湿を心がけて皮膚機能を正常に保ち、アレルゲンに触れることがなければアトピー性皮膚炎の重症化を防ぐことができるといえるでしょう。アトピー性皮膚炎を悪化させないために、生活面などで気を配るとよいとされることをまとめると、次のようになります。
アトピー性皮膚炎に似た症状が表れる病気はたくさんあります。疑わしい場合は皮膚科医やアレルギーに関する知識の豊富な医師などを受診して、早期に検査を受けることをおすすめします。
アトピー性皮膚炎は完治させることが難しい病気ですが、症状を抑えることは可能です。主治医と一緒に上手に付き合っていく方法を探しましょう。