明けましておめでとうございます。
イーヘルスクリニック新宿院の天野です。今年もよろしくお願いします。
感染症がこれほど注目される時代も珍しいのはないでしょうか。手洗い、うがいといった感染症対策はもちろん重要ですが、感染症に対抗するには免疫力を高めることが欠かせません。
今回は日常生活でできる、僕自身も実践している感染症に負けない「免疫力を高める5つの生活習慣」をご紹介いたします。
1日30分の日光浴は、感染症に対して免疫力を上げてくれるビタミンDの産生を促進する働きを持っています。ビタミンDは骨の健康維持に重要な必須栄養素として知られています。最近の研究で、抗炎症作用や免疫調節作用、抗がん作用などによってもたらされる、多彩な効果が知られるようになりました。
具体的には、各種の生活習慣病のリスク低減、そして感染症予防などの効果が報告されています。
ビタミンは原則として、「体内で生成されず、何らかの形で外界から得らなければならない、健康維持に必要不可欠な栄養素」と定義されています。しかし、ビタミンDだけは他の一般的なビタミンと違い、日光などの紫外線を浴びることによって体内で生成することができます。
現在の日本人の状況を鑑みると、子ども、若年女性、高齢者のいずれにおいても、ビタミンDが不足している人が増えている、と考えられています。
ビタミンD不足の原因として考えられるのは、
などです。
ビタミンDは、我々の体内において生合成も行われており、日光の紫外線が皮膚に照射されるとビタミンD合成が誘発されます。1日20-30分程度の紫外線にあたることにより、体内のビタミンD生合成を促進し、感染症に対して強くなる可能性があります。(日焼けなど気になる方は日陰で20-30分程度、紫外線を浴びるだけでも十分なビタミンDの産生ができると考えれています。)
小さい頃に親から、「ちゃんと寝ないと風邪を引くよ!」などと言われたことがあるのではないでしょうか。睡眠によって、風邪やその他の感染症を防ぐことのできる可能性があるとする研究結果が、信頼ある国際雑誌「JAMA Internal Medicine」に掲載されました。
2005~2012年に、平均年齢46歳の男女2万3,000人を対象に行われた研究についてご紹介します。対象者は睡眠時間、睡眠障害の有無に加えて、過去1カ月に風邪およびその他の感染症(インフルエンザ、肺炎、耳感染症など)に罹患したかどうかを報告しました。研究によると、一晩の睡眠時間が5時間以下の人は、睡眠時間がそれより長い人に比べて、過去1カ月以内に風邪をひくリスクが約30%も高かったということがわかりました。その他の感染症の過去1カ月のリスクに至っては、睡眠時間が短い人のほうが、7~8時間睡眠の人よりも80%以上高かったのです。
また、睡眠障害または睡眠の悩みがある人は、過去1カ月に風邪を引いたリスクが約30%高く、感染症全般のリスクは2倍以上になることもわかりました。
研究の代表者であるPrather氏は、「睡眠不足の環境下では、感染症と戦う白血球であるT細胞があまり機能しないことがわかっている」として、良い睡眠をとるためには、まずは毎日同じ時間に起きることから始め、寝室を涼しく、静かで暗くなるように整えることを勧めています。
基本的な寝やすいための生活習慣
寝ても途中で起きてしまう、熟睡できない等の症状が続く場合は、以下の疾患が隠れている可能性がありますので、受診(内科もしくは心療内科)をお勧めします。
睡眠不足に至る隠れた重大な疾患
一般的には偏らない食生活が健康にいいと言われていますが、偏らない食生活とは一体何を指すのでしょうか?
感染症に対して、ビタミンC、ビタミンD及び亜鉛などの栄養素/ミネラルが欠乏すると、抵抗力が弱くなると考えられています。ビタミンDの摂取については1でも触れていますが、多く含まれている食品を摂取するとともに、1日30分程度、紫外線を浴びることをおすすめします。また、亜鉛はアルコール代謝時に使用されるために、アルコールを多く摂取する人は、亜鉛も意識的に多く摂取した方が良いと考えられています。
推奨される摂取量
①ビタミンC 2-3g/日
②ビタミンD 1000-2000IU/日
③亜鉛 20 mg/日
普段の食生活から、これらの栄養素/ミネラルを摂取できるように、積極的に心がけることをお勧めします。
多く含まれている食品
以前から、太っている人(BMI>25-30が目安)のほうがより感染症にかかりやすく、また一旦かかると重症化しやすい、と言われてきました。その理由の1つが、太っている人に起こる低アディポネクチン血症であるといわれています。
アディポネクチンとは、脂肪細胞から分泌されるホルモンの1つです。
このホルモンの作用には、
といったものがあります。
つまり、アディポネクチンには抗メタボリック作用がありますので、超善玉ホルモンまたはスーパー健康ホルモンでとも呼ばれているのです。アディポネクチンの値は高ければ高いほど良いということになりますが、太ってしまうとアディポネクチンの分泌は低下してしまいます。そして、アディポネクチンの値が4µg/ml以下になると糖尿病、心筋梗塞やメタボリックシンドロームになりやすくなります。これを「低アディポネクチン血症」といいます。
近年の研究では、アディポネクチン値が低いと、骨髄で白血球の一種である顆粒球の増殖に異常が生じることが動物実験で分かっています。感染症に罹患した時に白血球の増殖が十分でないと、感染症に対しての抵抗力が下がってしまいます。感染症から自分自身を守るためにも、太り過ぎは良くないと言えます。
感染症の発症予防には、我々の免疫が重要な役割を果たしています。免疫に関連する重要な細胞の例として、血液中のNK細胞が挙げられます。NK細胞とは白血球中のリンパ球のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力をもつ細胞。体の中に入ったウイルスや細菌などの異物を最前線で攻撃し、ウイルス感染やがんなどを予防する役割を担っています。しかし、NK細胞の活性(働き)は年齢とともに低下してしまいます。そこで、感染症の予防のために、このNK細胞の活性をどれだけ高く維持できるかが重要になってきます。
NK細胞の活性をあげる方法のうち、「よく笑う」という方法がNK細胞の活性を上昇させた研究をご紹介します。この研究は、20~62歳の男女19名に約3時間、漫才や喜劇などで大いに笑う体験をさせ、直前と直後に採血してNK細胞の活性を調査したものです。直前の値が基準値(正常範囲)より低かった人では、笑いの体験後に全員の値が上昇したことが確認されました。また、直前が基準値だった5人は、直後の検査で全員が範囲内でも特に高い数値を示していることが認められました。暗い世の中と感じてしまうこともあるかもしれませんが、あえて面白いドラマや映画を見つけ、少しでも笑える機会を増やしてみてください。その結果、免疫能が上昇し、感染症に対してもよい影響を及ぼす可能性が高まります。
参考記事
記事作成:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。