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2023.02.03
#アレルギー科 #対象外来

季節性アレルギー鼻炎(花粉症)の予防方法と治療法(皮下注射療法 ゾレア®)

花粉症季節性アレルギー鼻炎(花粉症)の予防方法と治療法

花粉症は、花粉が原因となり、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状が起こる病気です。花粉症のメカニズムは、花粉が体内に入ったことで異物を排除するために免疫機能がはたらき、IgE抗体という免疫物質ができます。その後、再び花粉が体内に入ると、肥満細胞という細胞の抗体とそのIgE抗体が結びつき、化学物質が分泌されてさまざまな症状につながるとされています。

今回は症状を改善するために予防方法や一般的な治療法、さらには今までの標準治療では症状が改善できなかった、重症花粉症で困っている方に対して、注射で乗り切る『オマリズマブ(ゾレア)』治療についても解説していきます。

花粉症の予防

花粉症の予防は、原因となる花粉を回避・除去することが大切です。これは治療の一環でもあります。まだ花粉症にかかっていなかったり、症状が軽かったりする場合でも、大量の花粉と接触することをきっかけに花粉症を発症したり、症状が強くなったりすることがあります。そのため、花粉症予防のためにも花粉の回避・除去は重要だといわれています。

花粉症の予防方法には、以下のようなものがあります。

  • 花粉の多い季節には、室内にいる時間を増やし、外に出る時間を減らすこと
  • 風通しの良い場所での外出、特に花粉が飛散している時間帯は避けること
  • 鼻づまりを解消するためには、鼻の洗浄をすること
  • 帽子やサングラスを着用し、顔全体を覆うこと
  • 身の回りに花粉がたまりにくい環境を整えること
  • 適度な運動やストレス軽減、喫煙やアルコールの使用を控えること

花粉症対策の日常生活のポイントについてはこちらの記事もご確認ください。

花粉症の治療

アレルギー性鼻炎の治療には症状を和らげる対症療法として薬の処方や、根本的に改善を目指す根本治療としてアレルゲン免疫療法や手術があります。このほか、原因物質の除去や接触の回避を行うことも重要です。花粉症は、花粉が飛散する季節になってから症状が出るため、治療は症状が出る前に予防的に開始することが望ましいです。具体的には、花粉飛散の予想される季節の1ヵ月前から開始することをお勧めします。
ただし、花粉症の症状が既に出ている場合は、すぐに治療を開始することが重要です。

薬の処方

・抗ヒスタミン薬

アレルギー症状の原因物質の1つであるヒスタミンのはたらきをブロックし、くしゃみや鼻水などの花粉症の症状を軽減する薬です。数多くの種類があり、症状や重症度によって使い分けます。眠気などの副作用がありますが、近年は眠気が出にくいものも開発されています。効き目の強さや眠気の少なさなど、鼻の症状やライフスタイルに合わせて選択することが大切です。様々な種類があるので、医師との相談の上、どの薬を使用するか検討していきます。

・ステロイド薬

ステロイド薬とは、炎症を抑えたり免疫を抑制したりする薬です。花粉症の治療では、鼻噴霧用ステロイド薬や経口ステロイド薬、点眼薬が使われることもあります。
例えば、くしゃみや鼻水などの鼻の症状が強いときには、鼻噴霧用ステロイド薬を利用します。ステロイド点鼻薬は、飲み薬と違って部分的に作用するため、全身への副作用が少ないといったメリットがあります。花粉症の初期療法の段階から重症まで、どの段階でも使用され、中等症、重症の場合は第二世代抗ヒスタミン薬などと併用されることがあります。

・アレルゲン免疫療法

アレルギーの原因物質であるアレルゲンが含まれる薬を少量ずつ長期間にわたって体内に取り入れ、体を慣らしていくことでアレルギー症状を緩和・改善させる治療法です。治療期間は3〜5年と長期間ですが、根本的な治療が期待できる唯一の方法です。アレルゲン免疫療法には、注射もしくは舌下錠を用いる方法がありますが、近年はより簡単に扱える舌下錠を使用する方法が主流となっています。
現在は、「スギ花粉
」「ダニ」が原因となるアレルギー性鼻炎に対して治療は可能です。治療は保険適用となり、アレルギーの根本治療が期待できる唯一の方法です。
アレルゲン免疫療法の詳細はこちら

・皮下注射療法(ゾレア®)

「ゾレア®」は今までの標準治療では症状が改善できなかった、重症花粉症で困っている方に対しての新たな治療法です。
オマリズマブ(ゾレア®)は従来、重症の気管支喘息や慢性蕁麻疹に対する治療薬として使用されていました。2019年12月、このゾレア®に季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)に対する適応が追加され、花粉症の治療にも用いられるようになっています。

ゾレア®は抗IgE抗体の一種です。IgE(Immunoglobulin E)とは、アレルゲンに対する免疫応答を引き起こすためのタンパク質です。ゾレア®はIgEと結合することで、IgE本来の働きを阻害し、アレルゲンに対する反応を抑制します。これにより、炎症や過敏反応を減らすことができ、症状を軽減するのがゾレア®の作用です。特に重症な花粉症に対して有効で、症状を軽減する効果が期待されます。

ゾレア®は炎症の原因であるアレルギー反応を抑えます(※製薬会社の外部サイトにリンクします)

皮下注射療法(ゾレア®)の投与適応と投与期間

投与対象は重症花粉症に限定されており、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 12歳以上
  2.  血清中総IgE濃度が30~1500IU/ml
  3.  体重が20~150㎏
  4. スギ花粉抗原に対する特異的IgE抗体価がクラス3以上
  5. 重症以上の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)で、前回のスギ花粉シーズンで重い症状があった方
  6. 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の既存の治療を今シーズンに1週間以上行い、効果が不十分だった方

また、ゾレア®は毎年スギ花粉の飛散前と飛散時期である1〜5月に投与しています。治療期間は、臨床試験の結果に則り、12週間程度が目安です。治療効果を最大限に感じていただくために、遅くても3月には治療を開始することをお勧めしております。また、抗ヒスタミン薬などの標準治療も引き続き併用します。

皮下注射療法(ゾレア®)の投与量と費用

ゾレア®は2週もしくは4週間隔で投与をします。1回あたりの投与量並びに投与間隔は、初回投与前血清中総IgE濃度・及び体重などに基づき設定します。

ゾレア®は2019年に保険適応になりました。また、治療費は、血液検査(血清総IgE濃度)の結果と体重によって異なります。2020年4月の薬価改定により、1ヶ月1回150㎎の投薬は保険適用(自己負担3割)であれば8,744円と以前より価格が下がり、治療が受けやすくなりました。(300mgであれば17,488円といった形で、投与量によって費用は変わります。)

4週間ごと投与量

2週間ごと投与量

ゾレア®の投与量と治療費の詳細はこちら(※製薬会社の外部サイトにリンクします)

ゾレア®の用量設定について(※製薬会社の外部サイトにリンクします)

また、1ヵ月分の医療費の支払い額(自己負担額)が一定額を超えた場合、超過分の払い戻しが受けられる制度として「高額療養費制度」があります。
ゾレア®皮下注射も投与量によっては「高額療養費制度」の対象となる可能性がございます。
詳しくは下記サイトをご確認ください。
厚生労働省 高額療養費制度について

※高額療養費制度をはじめとする医療費サポート制度については、加入の保険者により異なります。患者様ご自身がそれぞれお問い合わせください。

高額療養費制度のお問い合わせ先
・協会けんぽ→全国健康保険協会
・各種共済組合→該当する共済組合
・企業等の健康保険組合→企業健康保険組合の担当部署
・国民健康保険→市区町村などの国民保険課など

皮下注射療法(ゾレア®)の治療の流れ

初診(1回目受診)
医師が重症花粉症と診断し、今までに特異的IgE抗体検査が未実施の場合、血液検査を行います。まずは、抗ヒスタミン薬や点鼻薬などで治療を開始します。

再診(2回目受診)初診から1週間~
既存の投薬治療で効果不十分なスギ花粉症であると医師が診断した場合、血液検査を実施。
総IgE検査、特異的IgE抗体検査を行い、スギ花粉抗原に対する値がクラス3以上であることを確認。

再診(3回目受診)
ゾレア®の投与量/投与間隔などの決定し、初回投与。

再診(4回目以降)
スギ花粉のシーズン中は2週間 or 4週間ごとに投与。

皮下注射療法(ゾレア®)の副作用について

主な副作用は下記の通りです。

  • 穿刺部位の赤み、腫れ、かゆみなど

また、投与後は下記の症状に注意が必要です。

  • 気管支の痙攣
  • 湿疹
  • 呼吸困難
  • 血圧低下 など

ゾレア®の副作用について詳細はこちら(※製薬会社の外部サイトにリンクします)

花粉症は早めに治療の検討を

花粉症の予防、症状改善のためには、花粉の回避・除去、生活習慣の改善などの対策が必要です。さらに、早めの治療も重要です。早ければ花粉が飛散する3か月以上前から治療を始める場合もあるため、花粉症の疑いがあると思ったら早めの受診を検討するとよいでしょう。

■こちらの記事もご覧ください。

花粉症の一般的な治療について

花粉症の漢方治療について

イーヘルスクリニック新宿院では、それぞれの患者さんに合った治療を検討します。治療法については分かりやすく説明し、安心してご納得いただいたうえで治療方針を決めていきます。
花粉症でお悩みの際は一度ご相談ください。

著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)

参考文献

https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis/xolair/mechanism
https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis/medical-expenses/testing-cost