高尿酸血症の食事で気を付けるポイントとは?具体的な食事の注意点を解説
「痩せたい」と考えている人はたくさんいます。しかし一方で、「痩せる方法」を間違って認識しているケースも多々あるのです。痩せる方法としては、①食事、②運動、③睡眠の3つの柱を改善していくことが大切です。4つめは医療の力に頼る、メディカルダイエットになります。
今回は、肥満外来で実際に指導している内容をベースに、肥満と睡眠との関係を解説します。端的に言うと、睡眠時間が少ないと太りやすくなってしまう、ということです。
まずはアメリカのコロンビア大学が、約1万5000人を対象に調べた、肥満と睡眠に関する研究をご紹介します。この研究では、平均睡眠時間が7-9時間のグループに対して、睡眠6時間だと23%、5時間だと50%、そして4時間以下だと73%も、肥満になる確率が高くなることが分かりました。つまり「睡眠時間が短ければ短いほど、肥満になる」ということが示されています。
同様の結果をもたらす研究は数多く、不眠が肥満のリスクになることを証明しているのです。ちなみに不眠は肥満のみならず、心血管疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常など、生活習慣病やうつ病とも密接に関連していることがわかってきています。
不眠と肥満の関係に話を戻すと、なぜ不眠によって肥満になるのか? といった原因については、摂取カロリーの増加によるものなのか、消費カロリーの減少によるものなのかがはっきりしていませんでした。
しかし、最近の研究で、不眠による肥満の原因が摂取カロリーの上昇であることが証明されつつあります。
英国キングズカレッジロンドンで近年おこなわれたメタ分析によれば、睡眠不足が続くと摂取カロリー量が増加する、と報告されています。メタ分析というのは、過去の複数の研究の結果を統合し、あらためて分析しなおした統計解析のことで、現状の医療では最も信頼性が高いと考えられている研究方法の一つです。
当該の研究では、睡眠時間7~12時間の人と、そうではなく何らかの形で睡眠時間が制限されている人とに分けて、起床後24時間の摂取カロリー量を比較しています。その結果、睡眠に制限があった人のほうが、摂取カロリー量が1日平均385kcal多いことが分かりました。一方、エネルギー消費量に対しては睡眠による影響が見られませんでした。
また、睡眠不足は摂食行動の変化に影響していることが同じ研究で分かっています。具体的には脂肪の摂取量が増え、たんぱく質の摂取量が低下していました。ただし、炭水化物には変化がみられませんでした。
結論として、不眠であること自体が肥満のリスクであり、その直接的な原因は摂取カロリーの上昇であると言えるのです。
それでは「不眠になると、なぜ摂取カロリー量が上昇するのか?」という謎について、紐解いていきましょう。
不眠と摂取カロリー量の増加に大きく関わっていると考えられる物質がいくつかあります。そのうちの一つが腸管ペプチドYY(PYY)です。
PYYは、視床下部の受容体に作用して食欲を抑え、食べる量を減らす作用を持つため、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに対して重要な役割を果たすと考えられています。3.5時間睡眠を3日つづけた人は、7時間睡眠の人と比較して血中PYYが有意に低かったという報告があるように、睡眠時間が短いとPYYが十分に作用せず、必要以上に食べてしまう可能性があるでしょう。
また、PYY以外に、レプチンやグレリンといったホルモンも、睡眠や肥満に関連しています。
レプチンは、交感神経活動亢進作用によってエネルギー消費を増やすため、肥満の抑制や体重増加の制御に役立っているホルモンです。また脳に対して代謝向上や食欲抑制のシグナルを送っているのも、レプチンです。
一方、グレリンは胃から分泌され、脳の視床下部に食欲増進と血糖値上昇の命令を出しているホルモンです。
アメリカで行われた研究では、5時間睡眠の人は8時間睡眠の人に比べて、食欲を抑制するレプチン分泌量が15.5%減り、食欲増進作用を担うグレリン分泌量が約15%増えたとの報告がなされています。他にも、睡眠時間が短い人は、そうでない人と比較して、ストレスホルモンであるノルアドレナリンが上昇することがわかっています。ノルアドレナリンは食欲の上昇作用以外にも、血圧や血糖を上昇させる作用があり、体重の増加を招きやすいといえるでしょう。
このように睡眠不足になると様々なホルモン環境が変わり、太りやすい食品を嗜好するようになる可能性があります。その結果、摂取カロリーと消費カロリーのアンバランスが起こりやすいのです。
先出の研究では、睡眠不足によって増加する摂取カロリー量は1日385kcalという結果でした。長期にわたって寝不足が続き、継続的にカロリーを多く摂る生活を続けていれば、それが体重の増加につながる可能性は十分にあるでしょう。
“早寝早起きはヒトを健康に賢くする”という言葉には、何かしらの信憑性があると言えそうです。
ぜひこうした研究結果を気に留め、十分な睡眠時間を確保するよう工夫してみてください。
著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)