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胸痛とは、胸の表面や深いところ(内臓)で起こる痛みのことです。時に胸ではないところが原因で胸に痛みを感じることもあります。一口に胸痛といっても痛みの感じ方や表現の仕方はさまざまで、たとえば焼けつくような痛み、うずくような痛み、不快感、圧迫感、締め付けられる感じ、ガスがたまっているような感じなどと表現されることもあります。
胸痛はよくある症状の1つですが、命に関わる病気が原因となっている可能性も考えられます。特に心臓や肺の病気は胸痛がみられることが多く、緊急を要することもあります。そのため、最初に紹介したような症状が続いている場合は、早めに内科やかかりつけ医などの受診を検討するとよいでしょう。また、耐え難い症状がある、症状が続いているといった場合は救急での受診が必要となる場合もあります。
胸痛や胸の苦しさを感じる原因の1つが、緊張などの精神的なものです。大切な試験や面接の前に緊張してドキドキしたり、怒られたときに胸がズキッとしたりするのは、めずらしいことではありません。胸の症状は精神状態が影響して起こることもあるため、胸痛や胸の苦しさを感じたからといって必要以上に心配する必要はないでしょう。
肋間神経痛とは、肋間神経(肋骨に沿って走る神経)が障害されることで感じる痛みのことです。体の片側に強い痛みを感じることが一般的で、胸の前面や背中、脇腹の辺りが痛んだり、咳や深呼吸、体位を変えたりすることで痛みが強くなったりすることがあります。
肋間神経痛の原因は、肋骨の骨折や腫瘍、椎間板ヘルニア、帯状疱疹などさまざまで、明らかな原因が分からないこともあります。また治療方法は、薬や手術、ストレッチによる運動療法など、原因や症状によって異なります。
逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流してしまい、食道に炎症が生じる病気のことです。成人の10〜20%は逆流性食道炎にかかっているといわれており、特に高齢者に多くみられます。
食後に胸やみぞおち付近に痛みを感じるほか、胸やけ、酸っぱいものが上がってくるなどの症状があります。また、睡眠中に胃液が喉まで上がることで、喉の違和感や慢性的な咳、声のかすれなどの症状が出ることもあります。
逆流性食道炎の治療には、内服薬と生活習慣の改善が必要とされています。薬は、胃酸を抑える薬を服用し、症状が改善しない場合は胃酸を中和したり、胃のはたらきを改善したりする薬を併用することもあります。
このほか食べ過ぎや飲み過ぎ、早食いを控えたり、食後2〜3時間は横にならないようにしたりするなど、食事の内容や食べ方を見直すことも必要です。
胸膜炎とは、胸膜(肺を覆う膜)に炎症が起こることです。胸膜炎が起こる原因は細菌感染、がんなどさまざまで、特に感染症の場合に胸痛を伴う発熱が起こるとされています。
胸膜炎の治療方法は原因によって異なり、感染症の場合は抗菌薬、がんの場合は抗がん薬などを使用します。また、炎症によって胸腔内に浸出液が移動すると、胸水(胸膜の間に液体がたまること)が生じることがあります。胸水が多くたまっている場合は体外に排出する処置が必要です。
気胸とは、肺を包んでいる胸膜腔に空気がたまってしまうことです。
気胸になると呼吸をした際に肺が広がりにくくなるため、急な胸の痛みを感じたり、呼吸困難に陥ったりすることがあります。
気胸の原因としてもっとも多いのは、肺の表面が自然に破れる自然気胸です。10~30歳代の男性に多くみられます。
気胸の治療法は、気胸の種類や重症度などで変わります。
軽度かつ無症状の自然気胸の場合は経過観察となり、安静にして穴が塞がるまで待つのが基本です。重症度が中等症~重度の場合は、胸腔ドレナージ(胸に管を入れ、溢れた空気を外に排出する)を行います。
また、胸腔ドレナージで症状が改善しない、気胸が再発した、左右両側の気胸であるといった場合には手術が検討されます。
虚血性心疾患とは、狭心症や心筋梗塞といった心臓の血管が詰まる病気のことです。
狭心症の場合は、胸の真ん中から左側にかけての圧迫感や締め付けられるような痛み、上腹部の痛み、肩や首に広がるような痛みを感じることがあります。このような症状は数分で消えることが一般的で、より強い痛みが長く続いたり、冷や汗が出たり、呼吸困難などの症状もあったりする場合は心筋梗塞の可能性があります。
虚血性心疾患の治療は薬物療法が基本で、場合によっては心臓カテーテル治療(直径2mmほどの管を血管や心臓内部に挿入して血管を広げたりする治療)などの手術も行います。
また、虚血性心疾患は動脈硬化が原因となるため、食事療法など行い生活習慣を改善することも重要です。虚血性心疾患は生死にかかわる病気であるため、少しでも気になる症状がある場合は早めの受診を検討するとよいでしょう。
大動脈とは心臓から送り出された血液が最初に通る太い血管のことで、内側から内膜、中膜、外膜の3層になっています。このうち中膜が裂けて、大動脈の壁だった場所に血液が流れ込んでしまった状態を“大動脈解離”といいます。
大動脈解離が起こった場合、急に引き裂かれるような激しい胸の痛みを感じ、時間とともに痛みが広がります。さらに、意識障害や失神、腹痛などの症状が現れることもあります。
大動脈解離の治療法は、手術、痛みの緩和や血圧低下を目的とした薬の使用など、解離した場所によって変わります。また、大動脈解離の原因のほとんどは、動脈硬化とされているため、虚血性心疾患と同様に食事を改善する必要があります。
大動脈解離も生死に関わる病気であるため、ここで挙げたような症状がある場合は早めに医療機関の受診を検討するとよいでしょう。
肺から発生するがんにかかったり、ほかの場所で発生したがんが転移して胸の辺りまで広がったりすると、強い胸の痛みが続くことがあります。
この場合は、手術や薬物療法、放射線治療など、適切な治療法を選択したり組み合わせたりして、がんを治療する必要があります。
心臓や肺の病気は胸の痛みや苦しさを感じることが多く、緊急性を要することもあります。特に耐えがたい症状が続いている場合は、生命の危機の可能性もあるため救急での受診が必要なこともあります。
症状が軽い場合でも、治療が必要な病気の可能性があるため、早めに内科やかかりつけ医などの受診を検討するとよいでしょう。