
「昨日は3時間しか寝ていないけど、気合でなんとかなる」
「慢性的に睡眠不足だけど、もう慣れたから大丈夫」
多くのビジネスパーソンが、このように感じながら日々の業務をこなしているかもしれません。しかし、その「なんとかやれている」という感覚こそが、最も危険な落とし穴です。日本の睡眠不足による経済損失は年間約15兆円にも上ると試算されており、個人の問題だけでなく、社会全体の問題となっています。
今回は、睡眠不足があなたの仕事のパフォーマンスと健康にどれほど深刻な影響を与えているか、科学的根拠を基に解説し、現代の医療でできる対策をご紹介します。
「睡眠不足は仕事の効率を落とす」と頭では分かっていても、その深刻さを実感している人は少ないでしょう。ご複数の研究で衝撃的な事実が報告されています。
つまり、徹夜明けや睡眠不足の状態で仕事をすることは、お酒を飲んで仕事をしているのと変わらないほど、判断力や注意力が鈍っているということです。自分では「普通にできている」つもりでも、客観的には大きなミスを犯しかねない危険な状態なのです。
パフォーマンスの低下は、具体的な業務にも現れます。睡眠不足は、あなたの能力を静かに、しかし確実に蝕んでいきます。
睡眠不足は、チームを率いる立場の人にも深刻な影響を与えます。
自分だけでなく、チーム全体の生産性や士気まで下げてしまう可能性があるのです。
「睡眠不足に慣れた」と感じるのは、体が順応したわけではありません。感覚が麻痺し、心身が発するSOSサインに気づけなくなっているだけです。睡眠不足という負債(睡眠負債)は日々蓄積し、やがて深刻な病気のリスクとなって現れます。
では、どうすれば良いのでしょうか。まずは生活習慣の見直しから始め、必要であれば医療の力を借りることも重要です。
生活習慣の改善だけでは眠れない場合でも、心配はいりません。現在の睡眠医療では、従来の睡眠薬とは異なる、依存性のリスクが極めて低い安全な薬が主流となっています。
睡眠不足による「なんとなくの不調」や「パフォーマンスの低下」は、あなたの心と体が発している明確な危険信号です。それを「気合」や「慣れ」で乗り越えようとせず、専門的なケアで解決することが、ご自身のキャリアと健康を守る上で不可欠です。
睡眠に関するお悩みがあれば、どうぞお気軽に当クリニックにご相談ください。
参考コラム
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参考文献
1. Williamson AM, Feyer AM. Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occup Environ Med. 2000;57(10):649-655. (https://oem.bmj.com/content/57/10/649.long)
2. Barnes CM. Sleep? Who needs sleep?! An organizational science perspective. Res Organ Behav. 2017;37:1-21. (https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0149-7634(17)30164-1)