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2022.06.14
#腎臓内科 #対象疾患

蛋白尿

受診の目安になる症状

  • 健康診断などで蛋白尿を指摘された
  • 尿が泡立つ
  • むくみがある
  • ひどい貧血がある
  • だるさ、眠さがある など

蛋白尿とは、尿中に基準値以上のタンパク質が排泄されている状態のことです。蛋白尿になるのは、必ずしも病気が原因というわけではありません。健康な人でも、タンパク質の多い肉などを過剰に摂取したことで腎臓のはたらきが追いつかなかったときや、激しい運動をしたことでタンパク質が多く生産されることなどが原因で、一時的に蛋白尿になることがあります。これを“生理的蛋白尿”といいます。

一方で病的なものが原因の場合は、腎臓のはたらきに異常がある可能性があります。腎臓には老廃物が含まれた血液をろ過して、尿を作るはたらきがあります。その際、体に必要な栄養素であるタンパク質は血液に戻りますが、腎臓に異常があるとタンパク質が再吸収されずに尿中に排出されてしまうのです。

腎臓に異常があっても目立った症状がないまま進行することが多く放置されがちですが、むくみなどの症状が現れたときには透析治療が必要な状態の手前までになっていることがあります。そのため、定期健診などで蛋白尿を指摘されたら放置せず、早めに腎臓内科などを受診するとよいでしょう。

蛋白尿の原因と対処法

生活習慣(生理的蛋白尿)

先述のとおり、生活習慣などがきっかけで健康な人でも蛋白尿になることがあります(生理的蛋白尿)。たとえば肉を大量に食べた結果、腎臓のはたらきが追いつかなくなるほどタンパク質が血液中に増えたときや、激しい運動によって体内で大量にタンパク質が作られたときなどに現れることがあります。このほか、長時間立ちっぱなしだったときや、かぜなどで発熱したときにも蛋白尿がみられることもあります。

この場合は、原因がなくなれば蛋白尿も消失するため、まずは様子をみてもよいでしょう。

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)が原因で、蛋白尿になることもあります。CKDとは、慢性的(一般的には3か月以上)に続く、全ての腎臓病のことです。腎臓病には、さまざまな種類があり、それぞれ特徴や治療法が異なります。

【慢性腎臓病】の詳細はこちら

慢性糸球体腎炎(lgA腎症)

慢性糸球体腎炎とは腎臓の中で血液を濾過(ろか)し、尿を作るはたらきを持つ“糸球体”に慢性的な炎症が生じる病気です。中でもlgA腎症は免疫物質の1つである“免疫グロブリンA(lgA)”にこれまでと違う異常なタイプが出現し、それが糸球体にたまることによって炎症が起こると考えられています。無症状で健診の蛋白尿などをきっかけに発見されることもありますが、扁桃炎などにかかった後には目で見て分かるような血尿がみられるケースもあります。

lgA腎症の治療方法は蛋白尿や血尿の度合いによっても異なりますが、どのような場合でも減塩などの食事療法と禁煙は重要です。そのほか、降圧薬やステロイドなどの免疫抑制薬による薬物療法や、扁摘パルス療法が検討されることがあります。扁摘パルス療法とは、異常なタイプのlgAが産生されてしまうことを防ぐために扁桃摘出術を行ったうえ、糸球体の炎症を抑えるためにステロイドパルス療法を行う治療方法です。

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ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、さまざまな原因によって血液中のタンパクが尿に大量に漏れ出てしまうことをいいます。血液中のタンパク濃度が薄くなることで、むくみや体重の増加、だるさなどさまざまな症状が現れます。また尿検査で尿蛋白が確認でき、尿に泡立ちがみられることもあります。

ネフローゼ症候群の治療方法は原因によっても異なりますが、ほかの病気を原因としない“一次性ネフローゼ症候群”の場合には、ステロイド薬を中心とした薬物療法が検討されることが一般的です。またむくみなどの症状に対しては、食事療法や薬物療法が検討されます。食事療法では、塩分を1日6g未満にすることなどが指導されるほか、薬物療法では利尿薬や降圧薬、血栓症を予防するための抗凝固薬などが検討されることが一般的です。

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糖尿病

糖尿病とは、インスリンというホルモンの不足やはたらきの低下が原因で、血糖値が高い状態が続く病気のことです。糖尿病が引き起こす三大合併症の1つに、糖尿病性腎症があります。これは、糖尿病の治療が不十分な状態が続き、血管がダメージを受けやすくなることで腎臓のはたらきが弱くなり、結果として蛋白尿が現れるのです。また、糖尿病性腎症も慢性化すればCKDに至る病気です。

糖尿病性腎症の病期は5段階に分かれており、もっとも初期の第1期から第2期までであれば、腎臓の治療をしなくても食事制限や運動、投薬などによる厳密な血糖コントロールを行うことで改善する可能性があります。必要に応じて血圧を下げる薬、血液をサラサラにする薬、利尿剤、血液中の毒素を排出する薬などを使うこともあります。症状が進行した場合は、塩分やタンパク質の摂取制限、運動制限なども必要とされています。

【糖尿病】の詳細はこちら

膠原病(全身性エリテマトーデス)

膠原病(こうげんびょう)によって、蛋白尿になることもあります。膠原病とは、真皮や骨などを構成しているコラーゲンに炎症・障害が起こる病気の総称です。膠原病に含まれる病気のうち、全身性エリテマトーデスは腎臓に障害を起こすことがあります。全身性エリテマトーデスでは、発熱、関節が痛む、光線過敏になる、皮疹(表皮にできる発疹(ほっしん))が現れる、口腔内(こうくうない)潰瘍(かいよう)ができるといった症状が現れ、さらにループス腎炎という合併症が起こることがあります。

全身性エリテマトーデス、ループス腎炎ともに、治療には副腎皮質ステロイド薬を用います。副腎皮質ステロイド薬で十分な効果が得られなかったり、副作用が強く出たりした場合や重症の場合は、免疫を抑える薬を使うこともあります。

※各疾患の治療は必要に応じて、提携医療機関に紹介させていただきます。

蛋白尿になったときに気を付けたいポイント

食生活を見直す

蛋白尿がある場合は、食生活の改善に努めるとよいでしょう。蛋白尿は、それ自体が腎臓に負担をかけるものです。そのため、腎臓にかかる負担が軽くなるように、必要以上にタンパク質を取らないようにする必要があります。ただし、単にタンパク質を減らすのではなく、炭水化物を多めに取るなどしてエネルギーを確保するようにしましょう。また、血圧を管理するために、減塩することも大切だといわれています。

なお、このような食事管理法は、原因となる病気や体の状態などで異なるため、医師や栄養士のアドバイスにしたがって行うようにしましょう。

疲れをためない

体が疲れているときは、腎臓にも疲れがたまっているといわれています。そのため、しっかり睡眠を取って、疲れを翌日に持ち越さないようにしましょう。病気の状態によっては、運動や仕事量の制限が必要な場合もあります。そのため、どの程度動いてよいのかを医師に確認するとよいでしょう。

かぜなどに注意する

かぜやインフルエンザなどに感染すると、腎臓のはたらきが落ちるとされています。そのため、人混みを避ける、マスクの着用、うがいや小まめな手洗いなどの感染対策を徹底するとよいでしょう。

放置せずに受診をする

蛋白尿は自覚症状がないことが一般的で、症状が出たときには透析治療が必要な状態の手前まで来ていることがあります。そのため、定期健診などで蛋白尿を指摘されたら、放置せずに早めに腎臓内科などの受診を検討するとよいでしょう。

 

イーヘルスクリニック新宿院の腎臓内科

健康診断でクレアチンが高い、尿蛋白や血尿が陽性の場合は、当院の腎臓内科を受診してください。基礎疾患や腎機能のリスク因子を検査し、最適な治療プランを提案します。治療オプションは理解しやすく説明し、患者様の了承を得た上で治療方針を共に決定します。当クリニックには管理栄養士もおり、食事に関する専門的なアドバイスも受けられます。健康な未来への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。

 

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記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

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