筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、日常生活に支障をきたすほどの極度の疲労感、認知機能低下、筋肉痛などが長期間続く疾患です。これらの症状は休息を取っても改善せず、病気の進行に伴い悪化することがあります。具体的な原因は未解明ですが、ウイルス感染や免疫系の異常が発症の引き金になると考えられています。特に、発症前に感染症を経験したケースが多く報告されています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染後に見られる後遺症、いわゆるロングCOVIDは、ME/CFSとの関連性が指摘されています。COVID-19回復後も疲労感、集中力の低下、筋肉痛、睡眠障害といった症状が数か月以上持続する場合があり、これらの症状はME/CFSの診断基準を満たすことがあります。COVID-19は免疫系に多大な影響を及ぼし、慢性的な炎症や自律神経系の異常を引き起こすことがあり、これがME/CFSの発症リスクを高めると考えられています。
さらに、ロングCOVIDとME/CFSの両方に共通する特徴として、「労作後不調(PEM)」が挙げられます。これは軽度の身体活動や精神活動後に症状が悪化する状態を指します。このため、COVID-19感染後に継続的な疲労や体調不良を感じる場合は、早期の医療介入が推奨されます。
現在、ME/CFSやロングCOVIDの治療は症状緩和を目的とした対症療法が中心です。
岡山大学の報告によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症から筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)へ移行するケースが確認されています。特に、COVID-19感染後に倦怠感や集中力の低下、筋肉痛などの症状が長期間続く患者の中で、ME/CFSの診断基準を満たす割合が一定数存在することが示されています。
この報告は、COVID-19がME/CFSを発症させる可能性があることを示唆しており、患者の早期診断と専門的なケアの必要性を強調しています。また、この移行頻度に関する研究は、COVID-19後遺症とME/CFSの関連性を理解するうえで重要なデータとして注目されています。
当院では
を組み合わせて、新型コロナ後遺症にお悩みの患者さんが早期に回復できるよう、サポートしています。
新型コロナ後遺症に対しては、さまざまな観点から症状に対して有用と思われる対策を行うことが重要です。つらいと感じる症状のあるときはお気軽にご相談ください。
関連記事はこちら
■幹細胞培養上清液・点鼻薬の効果・評判とは?認知症・コロナ後遺症・花粉症にも効く?
参考文献
記事作成:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。