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2023.01.16

新型コロナ後遺症と慢性炎症の関係

新型コロナ後遺症と慢性炎症

新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、一定期間が過ぎて検査で陰性になった後にも、罹患後症状(いわゆる「後遺症」)としてさまざまな症状が見られる場合があります。WHO(世界保健機関)では後遺症(post COVID-19 condition)について「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの(通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にもみられる。)」と定義しています。

日本での感染者数は、2022年12月4日時点で約2522万人(※厚労省HPより)。その約10%に当たる250万人が「コロナ後遺症」に該当する可能性があります。

後遺症の実態についてはさまざまな研究がなされていますが、未だ不明点が多く、それぞれの症状と新型コロナウイルス感染症との因果関係は、十分には分かっていません。しかし、最近の研究では少しずつですが、コロナ感染と食事、栄養との関係について、わかってきたこともあります。

ハーバード大学らがアメリカ・イギリスの約59万人を対象に行った研究では、「果物や野菜などの植物性食品の摂取量が多い人は、COVID-19発症率が9%低く、重症化リスクは41%低い」ということが明らかになりました。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降に長期間続く主な後遺症、いわゆる「long COVID」の症状に対して、慢性炎症が関わっている可能性があることがわかってきています。この研究は米フロリダ大学のArch Mainous氏らによるもので、詳細は5月12日の「Frontiers in Medicine」に掲載されたものです。研究では同時に、炎症を抑制する治療介入が後遺症の予後を改善する可能性が報告されています。そこで以下では、慢性炎症を極力やわらげるために適切な栄養、食事のポイントをご紹介します。

慢性炎症とは

慢性炎症とは、体内で静かに、ゆっくりと起きている炎症です。

ケガをしたときに皮膚が赤くなり、痛みを感じ、はれたりします。これは体内で起こっている炎症の一つで、ケガや病気になった時に、明らかな症状をともなって突然生じる「急性炎症」です。これに対して、明らかな症状がないにも関わらず、体内で静かに起きていく炎症を「慢性炎症」といいます。

炎症は、一般的には我々を外敵から守ってくれる免疫システムの一種です。しかし、近代の生活習慣や環境の変化のなかでは、本来は「味方」であったはずの炎症が慢性的に体内で起こりつづけ、「敵」になってしまっているのです。
慢性炎症の改善には、普段からの生活習慣の改善がとても大切です。特に慢性炎症の度合いには、食事内容が大きく影響しています。慢性炎症が影響して引き起こされるのはコロナ後遺症だけではありません。糖尿病、動脈硬化関連疾患(高血圧症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病など)、またさらに慢性疲労症候群や副腎疲労などとも関係していると考えられています。

慢性炎症と食事との関係性

それでは改めて、慢性炎症と食事との関係性を振り返ってみましょう。
以下には、慢性炎症を促進させる食事の内容と、反対に慢性炎症を改善する食事の内容について、代表的なものを挙げています。見比べてみてください。

慢性炎症を促進させる食事

  • 精製された炭水化物(一般的なパンやパスタ)
  • フレンチフライや他のフライ
  • ソーダなどの砂糖が豊富な飲料水
  • 赤肉や肉製品(ホットドックやソーセージ)
  • マーガリン、ショートニングやラード

慢性炎症を改善する食事

  • トマト
  • オリーブオイル
  • 緑色野菜
  • ナッツ(アーモンドやくるみ)
  • 魚(サーモン、マグロ、サバなど)
  • 果物(リンゴ、オレンジ、イチゴ、ブルーベリーやチェリー)
  • コーヒー(砂糖の入っていないブラックコーヒー)

より自然でかつ精製されていない健康な食事は、コロナ後遺症のさまざまな症状や慢性的な疾患、およびそのリスクを予防するだけではなく、ポジティブな感情を保ちやすくなるなど、メンタルの改善にもつながる可能性が指摘されています。
突然、すべての食習慣を改めるのは難しいものですが、少しずつでも慢性炎症の起こりにくい食習慣を取り入れていくことは、今後のコロナ後遺症、あるいはその他の生活習慣に起因する疾患、健康的な精神のためには必要なことであるといえます。

ぜひ食卓にのぼるものを見直し、食べ物から体調を整えていくことをおすすめします。また自分自身の食習慣と照らし合わせ、どのように変えていけば良いか迷うという方は、生活にあわせた適切な食習慣のアドバイスを得られる、当院の栄養指導をお気軽にご利用ください。

著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)