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コラム
2026.05.01

テストステロン低下は「遺伝」より「生活習慣」?内臓脂肪との悪循環を断ち切る食事法

【医師解説】テストステロン低下は「遺伝」より「生活習慣」?内臓脂肪との悪循環を断ち切る食事法

イーヘルスクリニック新宿院 院長の天野です。

日々の診療の中で、40代から50代の男性患者様から「最近、なんだか疲れやすい」「休日はソファから動けない」「性欲が湧かないし、筋力も落ちてきた気がする」といったご相談を受けることが頻繁にあります。

多くの方は「もう歳だから仕方ない」「親父もそうだったから遺伝だろう」と、年齢や体質のせいにして諦めがちです。しかし、血液検査をしてみると、男性ホルモンである「テストステロン」の値が同年代の基準を大きく下回っているケースが少なくありません。

たしかに、私たちの体質には生まれ持った遺伝が関係しています。ですが、テストステロンに関しては、皆さんが思っている以上に「日々の生活習慣」がホルモン値を左右する決定権を握っているという事実をご存じでしょうか。

双子の研究が明かす「残り半分の真実」

テストステロン値がどれくらい遺伝で決まるのかを調べた、非常に興味深い双子の研究があります。

12歳の双子(183組)や、成人男性の双子(約128人)を対象にした調査によると、テストステロン値のばらつきのうち、遺伝で説明できるのは「約50〜56%」に留まりました。

これは何を意味するのでしょうか。
残りの約半分の要因は、遺伝子ではなく「非共有環境」、すなわち個人の生活習慣(日々の食事、運動量、睡眠の質、ストレスの有無など)にあるということです。

遺伝はどうすることもできませんが、生活習慣なら今からでも自分の意志で変えられます。「半分は自分の行動次第でコントロールできる」というのは、ホルモン低下に悩む男性にとって非常に大きな希望と言えるでしょう。

最大の敵「肥満」がテストステロンを奪うメカニズム

では、生活習慣の中で何が一番テストステロンを下げる原因になるのでしょうか。クリニックの現場で患者様のライフスタイルを伺っていると、圧倒的に多い共通点が「肥満(特にぽっこり出た内臓脂肪)」です。

太ると男性ホルモンが下がるのには、明確な医学的理由が2つあります。脂肪は単なる「余ったエネルギーの貯蔵庫」ではなく、様々な物質を分泌する厄介な臓器として働き始めるのです。

① 脂肪が「女性ホルモン」の製造工場になる(エストロゲン経路)

お腹にたっぷり脂肪がつくと、その脂肪細胞から「アロマターゼ」という酵素が大量に分泌されます。実はこの酵素、大切な男性ホルモンを、あろうことか女性ホルモン(エストロゲン)に変換してしまうという性質を持っています。
体内で女性ホルモンが増えると、脳のセンサーは「体内にホルモンは十分にある」と勘違いし、精巣に対して「テストステロンを作れ!」という指令(LH/FSH)を出すのをサボってしまいます。

② 慢性炎症とインスリン抵抗性(内分泌・炎症経路)

肥満になると、体の中では常に「ぼや(慢性炎症)」が起きている状態になります。さらに、血糖値を下げるインスリンの効きも悪くなります(インスリン抵抗性)。
こうした代謝の異常や炎症は、脳の視床下部や下垂体といった「ホルモンの司令塔」の働きをダイレクトに低下させます。肥満に伴いやすい「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が加わると、睡眠の質が劇的に落ち、夜間に作られるはずのホルモンがさらに枯渇してしまうのです。

テストステロンが減ると、筋肉量が落ちて基礎代謝が下がり、さらに脂肪がつきやすくなります。
「太る → テストステロンが下がる → 筋肉が減る → さらに太る」
この恐ろしい負のループこそが、中年男性から活力を奪い、男性更年期障害(LOH症候群)を招く最大の原因です。

不足しがちな栄養素の補給、男性更年期(LOH症候群)のご相談はこちらから承ります。

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朗報:「体重を落とせば」ホルモンは復活する

ここまで読んで「もう手遅れかもしれない」と不安になった方もいるかもしれませんが、安心してください。
肥満によるテストステロン低下は、精巣そのものが完全に壊れてしまったわけではない「機能的障害」です。つまり、減量によって再び回復させることが十分に可能なのです。

カロリーを制限して体脂肪が落ちると、先ほどお話しした悪玉酵素「アロマターゼ」が減り、インスリン抵抗性や慢性炎症もスーッと引いていきます。すると脳のセンサーが再び正常に働き始め、精巣へ向けてしっかりとホルモン製造の指令を出してくれるようになります。

📉 体重減少とテストステロン回復の目安(臨床感)

  • 体重5%の軽度減量: テストステロン値の軽度な改善が見込めます。少し体が軽くなったように感じ始めます。
  • 体重10%の中等度減量: 数値が明確に上昇し、気力や性機能など、体感としてもはっきりと変化が現れることが多いラインです。
  • 大幅な減量: 同年代の正常値レベルまで完全にホルモン値が回復する例も珍しくありません。

例えば体重80kgの方なら、まずは8kgの減量を目指します。いきなり高い目標を掲げるのではなく、「現在の体重から10%の減量」を一つのマイルストーンに設定してみてください。

テストステロンを最適化する食事とは?

減量するにあたり、「結局、何を食べればいいのか」と悩む方は多いでしょう。
医学的なエビデンスに基づくと、オリーブオイルや魚中心の地中海食、全体量を抑える低カロリー食、お肉や大豆をしっかり食べる高タンパク食など、実はどの食事法を選んでも、体重が落ちればホルモン値の改善効果に大きな差はないとされています。

一番大切なのは「1ヶ月だけの過酷な我慢」ではなく、「あなたが無理なく長期間続けられる食事スタイルを見つけること」です。

そのうえで、テストステロンの生成を材料面からしっかり後押しするために、以下の4つの栄養素は日々の食事で意識的に摂るようにしましょう。

  • 🥩 ① 高タンパク質(ホルモンと筋肉の源)
    肉、魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質はもちろん、大豆やナッツなどの植物性タンパク質も有用です。筋肉の合成を促す「ロイシン」などの必須アミノ酸を十分に補給することが重要です。
  • 🥑 ② 良質な脂質(油抜きはNG)
    テストステロンの原料は「コレステロール」です。極端な脂質制限ダイエットをするとホルモン値が急降下してしまいます。オリーブオイル、アボカド、青魚の脂、ナッツ類など、良質な脂質は適度に取り入れてください。
  • 🍄 ③ ビタミンDとミネラル(亜鉛・マグネシウム)
    テストステロン生成の強力なサポーターです。
    【ビタミンD】サーモン(1切れで1日分が摂れます)、卵黄、キノコ類など。食事や日光浴で不足する場合はサプリメントの併用が強く推奨されます。
    【亜鉛】「セックスミネラル」とも呼ばれます。牡蠣、赤身肉、鶏肉、豆類などを意識しましょう。
  • 🍠 ④ 複合炭水化物(質の良い糖質)
    糖質制限のしすぎはエネルギー不足を招き、かえってストレスホルモンを増やしてテストステロン値を下げてしまいます。白砂糖やジャンクフードは避け、全粒粉、イモ類、果物、色の濃い葉野菜といった「質の良い炭水化物」でバランスをとりましょう。

「最近ちょっとお腹が出てきた」「昔のような気力が湧かない」と感じている方は、それが体からのSOSかもしれません。まずは日々の食事を少しだけ見直し、無理のない範囲で内臓脂肪を落とすことから始めてみませんか。

当院では、医師と管理栄養士がタッグを組み、血液検査による正確なホルモン値の測定から、一人ひとりのライフスタイルに合った無理のない食事指導までをトータルでサポートしています。なかなか一人ではダイエットが続かない、専門的なアドバイスが欲しいという方は、ぜひお気軽にクリニックを頼ってくださいね。

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この記事の監修者

天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)

イーヘルスクリニック 新宿院

この記事の運営者:イーヘルスクリニック新宿院