リベルサス
喘息(気管支喘息)を持つ患者さんは、気管支(気道)に炎症が起きていることから、バリア機能が弱まっているため、さまざまな刺激に弱くなっており、ウイルスに感染しやすいと考えられています。このことから、現在流行している新型コロナウイルスへの感染を不安に思う方もいますが、一体どうなのでしょうか。本記事で解説します。
世界8都市の新型コロナウイルス感染症患者を対象に行ったある調査では、喘息(気管支喘息)を持っている人の割合が5.27%と、その地域での喘息を持っている人の割合(7.95%)に比べて少ないことが報告されています。また、日本呼吸器学会が新型コロナウイルス患者の中でも呼吸器の病気を持っている人を対象に行った調査では、喘息患者の割合は3.4%で、日本全体の喘息患者の割合(10%前後と推測される)より低いことが分かっています。
このことからも、喘息患者さんは新型コロナウイルスに感染しにくいのではないかと考えられています。
新型コロナウイルス感染症は現在、さまざまな研究から重症化や死亡リスクに関係する特徴が分かってきています。具体的には、高齢者、喫煙歴がある人、高血圧や糖尿病など基礎疾患のある人などです。しかし、ここに喘息は含まれていません。実際に、新型コロナウイルス感染症患者を対象に日本の大学病院で行われた調査でも、喘息と新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクとの関連性は明らかではなかったということが報告がされています。
また世界的にも、新型コロナウイルス感染症患者のうち重症化した人は慢性閉塞性肺疾患(COPD)や糖尿病を持っている人が多かったことが分かっていますが、喘息を持っている人との重症化の関係性は示されなかったといわれています。
喘息患者さんが新型コロナウイルスに感染しにくい、また重症化・死亡リスクには関連性が示されていない理由にはアレルギーに関連するタンパク質“サイトカイン”のはたらきが関係していると考えられています。
新型コロナウイルスの感染には、“アンジオテンシン変換酵素II受容体(ACE2)”と呼ばれるタンパク質と結合する必要があります。喘息はアレルギーが原因となっていることがあり、アレルギーに関連するサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質:インターロキシン13: IL-13)が、ACE2の発現を下げ、逆に喘息患者さんが通常作らないと考えられているサイトカイン(インターフェロン)にはACE2Rの発現を増やしてしまうことも報告されています。
このほか、ACE2は喫煙によって増加することが分かっているため、喫煙者の方は禁煙するようにしましょう。
このコロナ禍において喘息患者さんが気を付けたいのは、医師の指示に従って治療を継続することです。また、上記でご紹介したとおり、喘息は新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクなどと直接的な関係性は示されていません。そのため、日頃から新型コロナウイルス感染症の感染対策を行いながら行動することが大切です。
喘息は日頃から正しい治療を続けることで症状を抑えることができます。症状がうまくコントロールできていない状態で新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすくなるので、医師の指示に従って治療を継続していきましょう。
症状が落ち着いていると自己判断で治療や経過観察を中断する人も少なくありません。自己中断している人は、早めに医師の診察を受けて適切な治療をしましょう。
喘息と新型コロナウイルスの重症化・死亡リスクの関係性は示されていないとはいえ、患者さんが新型コロナウイルスに感染した場合に重症化しないとはいません。特に喘息の症状がうまくコントロールできていない人は、新型コロナワクチンの接種を検討しましょう。ワクチンには感染を予防するはたらきだけでなく、重症化を予防するはたらきもあります。
喘息患者さんと新型コロナウイルスの関係性については、さまざまな研究から明らかになりつつあります。しかし、だからといって情報を鵜呑みにして自己判断をせず、疑問や不安があった場合は、必ず医師に確認するようにしましょう。また、ワクチン接種も新型コロナウイルス感染症の重症化予防につながります。まだ接種を受けていない方、3回目の接種を受けていない方は早めの接種を検討しましょう。
eHealth clinicの呼吸器内科・アレルギー科では喘息の治療をはじめ、新型コロナウイルス感染症などの診療も行っています。忙しい方でも通院しやすい体制を整えており、24時間365日ネットから診療予約が可能なほか、オンライン診療にも対応しております。忙しくて受診する時間がないといった方でも、一度オンライン診療を利用して医師にご相談ください。eHealth clinicには医師や看護師、管理栄養士、検査技師などが在籍し、一丸となり患者さんをサポートします。
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Does asthma affect morbidity or severity of Covid-19? Journal of Allergy and Clinical Immunology 2020 In Press
わが国の呼吸器内科における併存呼吸器疾患別にみた COVID-19 の診療実態 日本呼吸器学会