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2022.04.26
#内科 #対象疾患

脂肪肝

脂肪肝とは

脂肪肝とは肝臓に中性脂肪がたまった状態のことです。肝臓の細胞の30%以上に中性脂肪がたまった場合に脂肪肝と診断され、放置すると肝炎などの病気につながることがあります。

原因の多くがお酒の飲みすぎや食べすぎです。摂取エネルギー量が消費エネルギー量よりも多いと、余分なエネルギーが中性脂肪などに変えられて、体に蓄えられることで脂肪肝になるといわれています。

脂肪肝の種類

脂肪肝は大きく“アルコール性”と“非アルコール性(NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患)”に分けられます。NAFLDは最近増えてきているタイプで、生活習慣が背景にあるためメタボリックシンドロームや肥満と合併しやすいとされています。このほかにも、薬や栄養障害による代謝の異常なども原因にこともあります。NAFLDでも脂肪肝のまま進行しない状態は“NAFL(非アルコール性脂肪肝)”、肝炎や肝硬変に進行すると“NASH(非アルコール性脂肪肝炎)”と呼び、NASHの場合は時に肝硬変や肝臓がんを発症することもあるため、早期発見・治療が大切です。

「脂肪肝の原因」について詳しく見る

「脂肪肝と肥満との関係」について詳しく見る

脂肪肝の症状

肝臓は多少異常があっても症状が出ないといわれており、脂肪肝でもほとんどは自覚症状がないとされています。一方で、脂肪肝から肝硬変に進行すると以下のような症状が現れることがあります。

進行した場合の症状

  • 黄疸おうだん(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 足のむくみ
  • 腹部の張り など

「脂肪肝の症状」について詳しく見る

受診の目安

脂肪肝は進行すると肝硬変になったり、糖尿病や高血圧、慢性腎臓病、心臓や血管の病気、認知症などを引き起こしたり、体にさまざまな影響を与えるため早期発見が必要です。

しかし、自覚症状がほとんどないため健康診断を受けることが重要となります。血液検査でAST(GOT)やALT(GPT)の数値が基準値外の場合は、脂肪肝をはじめ肝臓に異常がある可能性が考えられます。また、“進行した場合の症状”で紹介した症状に心当たりがある場合は放置せずにまずは内科やかかりつけ医などの受診を検討しましょう。

「脂肪肝の検査」について詳しく見る

 

脂肪肝の治療のポイント

脂肪肝の治療では、その背景にある肥満や糖尿病、脂質異常症などを改善するために、食事療法や運動療法などによる生活習慣改善を行うことが一般的です。

脂肪肝から進行したNASHでは、肥満がある場合は特に減量が必要となり、減量しても状態が改善されない場合は薬物療法を行うことがあります。また、糖尿病やコレステロール値が高いといった方は、それぞれの治療を行うことで脂肪肝も改善されるといわれています。

食事療法

食事に注意して体重を減らすことで、NAFLD、NASHの改善につながるとされています。肥満の場合はまず7%程度体重を落とす必要があり、その後徐々に標準体重まで減量します。

食事療法の基本は糖質(ごはん、パン、麺類、果物など)を控えることです。これだけでも脂肪肝の改善につながることがあります。特に果物に含まれる糖質(果糖)は肝臓で中性脂肪になりやすいため、毎日食べる場合は朝に1/2個だけ食べるといった制限を設けるとよいでしょう。

また、食事によって血糖値が急激に上がると、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が多く分泌されます。インスリンは余分な糖質を中性脂肪にして体に蓄えてしまうため、血糖値を急上昇させない工夫が必要です。たとえば、食べる順番を野菜、たんぱく質、炭水化物にするだけで血糖値の上昇が穏やかになるといわれています。

運動療法

運動で体重を減らすことも、NAFLD、NASHの改善につながるとされています。

たとえば、ウォーキングなどの有酸素運動を1回30分以上、週2回程度行うとよいでしょう。また、筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、食べても脂肪肝になりづらくなるといわれています。そのため、スクワットや片足立ちなどの筋トレも行うとよいでしょう。

「脂肪肝の運動」について詳しく見る

薬物療法

食事療法や運動療法による減量で脂肪肝が改善されない場合は、薬物療法を行うことがあります。NASHの場合は抗酸化作用が期待できるビタミンEや、糖尿病の薬が有効とされていますが、肝硬変への進行や肝がんの発症を長期にわたって予防できるかどうかはまだ分かっていません。

脂肪肝の治療に新たな選択肢として注目されているSGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、元々糖尿病の治療に用いられる薬ですが、最近では心臓や腎臓の病気にも効果があることがわかり、糖尿病や糖尿病性腎症の治療に広く使われるようになっています。また、肥満や糖尿病が多い脂肪肝の患者にとっても、SGLT2阻害薬は肝臓を保護するだけでなく、体重減少や血糖降下の効果もあるため、重要な選択肢となる可能性があります(現時点では保険適応外になります)。
SGLT2阻害薬による肝臓の保護効果に関しては、肝脂肪量の減少やAST、ALT値の低下などが報告されています。

また、SGLT2阻害薬に関する脂肪肝に対する効果の研究の一例として、エンパグリフロジン(ジャディアンス)というSGLT2阻害薬の試験結果があります。インドで行われたE-LIFT試験では、2型糖尿病で脂肪肝を持つ患者を対象にした比較研究で、他の標準治療と比べて肝脂肪量が有意に減少したと報告されています。

エンパグリフロジン(ジャディアンス)を服用したグループでは、対照グループと比較して肝臓の脂肪量が減少したことが確認されました。

参考文献:Sci Rep. 2018 Feb 5;8(1):2362.

「脂肪肝の薬」について詳しく見る

「脂肪肝の治療」について詳しく見る

 

脂肪肝になったときに気を付けたいポイント

無理のない減量

前述の通り治療の基本は食事や運動ですが、無理な食事制限やハードな運動はリバウンドや挫折、体調を崩す原因などにつながる可能性もあります。そのため、継続してできる範囲の食事制限や運動を心がけることも大切です。

たとえば、食事ではバランスよく食べることで新たな食の楽しみが増えることもあります。また運動を継続するコツとしては、一緒に運動をする仲間を作ったり、目標を持って運動に挑戦してみたりすることが挙げられます。

禁酒する

1日に日本酒5合以上相当の飲酒を1週間ほど続けると脂肪肝になるとされています。そのため、特にアルコール性の脂肪肝の場合は禁酒が必要です。なお、アルコール性脂肪肝はしばらく禁酒することで治ることが一般的です。

定期的に検査を受ける

脂肪肝と診断された後も採血や画像検査などの検査を定期的に受け、経過を見る必要があります。自己判断で通院や治療を中断しないようにしましょう。