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2022.06.28
#泌尿器科 #対象疾患

後天性免疫不全症候群(エイズ)

後天性免疫不全症候群(エイズ)とは

後天性免疫不全症候群(エイズ)とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、免疫機能が低下したことによって、指定されている23種類の合併症のいずれかを発症した状態のことです。HIVに感染していても、指定された合併症が発症していない限りはエイズと診断されません。つまり、エイズはHIVに感染することで発症する全ての病気のことを指します。

エイズの発症には、免疫が関係します。そもそも健康な人には細菌などの病原体から身を守るためるバリアのはたらきをする“免疫”が備わっています。しかし、HIVに感染すると免疫の中心的役割をする細胞(CD4陽性リンパ球)が破壊されるため、免疫が低下します。すると、病原体から身を守る力が弱くなり、合併症の発症リスクが高まるのです。

感染源は精液、膣からの分泌液、血液、母乳などで、主な感染経路は性行為や血液を介した感染、母子感染などです。HIVは一度感染すると体から完全にウイルスを排除することはできないといわれています。ただし、薬によってウイルスの増殖を抑えることが可能です。また適切な方法を取ればほかの人への感染を防ぐことができ、感染後も性行為や妊娠、出産ができる場合もあります。

後天性免疫不全症候群(エイズ)の症状

HIV感染からエイズ発症までは3つの段階に分類でき、時期によって症状が異なります。HIV感染から2週目~4週目頃の“急性期”、その後数年~10年程度続く“無症候性キャリア期”、合併症発症後の“エイズ期”のそれぞれの症状は以下のとおりです。

急性期

HIVに感染して2~4週間ほどすると、HIVが体内で急激に増殖し始め、以下のような症状がみられることがあります。ただし、数日から数週間ほどすれば自然と症状が改善されることが一般的です。

  • 発熱
  • 喉の痛み
  • だるさ
  • 下痢

など

無症候性キャリア期

急性期を過ぎると、数年~10年程度無症状の期間が続きます。人によっては15年以上経過しても症状が出ないこともあり、期間には個人差があります。ただし、症状はなくても体内ではHIVが増殖し免疫力は少しずつ低下します。ある程度まで低下すると、以下のような症状がみられるほか、口腔(こうくう)カンジダ症や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などの病気にかかりやすくなるとされています。

  • 寝汗
  • 長期間続く下痢
  • 急激な体重減少

など

エイズ期

適切な治療が受けられないと、CD4陽性リンパ球が急激に減り、通常の免疫状態ではほぼかかることがない感染症や悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の発症につながることがあります。さらに、エイズの診断基準にある23種類の病気のいずれか1つでも発症すれば、エイズ期となります。この時期には、以下のような症状がみられることがあります。

  • 食欲低下
  • 下痢
  • 低栄養状態
  • 衰弱

など

受診の目安

上記のような症状など、気になることがある場合は早めにかかりつけ医などに相談するとよいでしょう。

前述のとおりHIVに一度感染すると完全に取り除くことはできないとされ、以前は“死の病”とも考えられていました。しかし、現在は医療の進歩により治療によってコントロールができる慢性疾患と捉えられるようになり、エイズの発症前にHIV感染が分かれば、発症をほぼ確実に予防できるとされています。そのため、HIV感染の早期発見、早期治療が重要です。

早期発見のためには、HIV感染者やエイズ患者さんと性行為をしたなど、感染の可能性がある場合はもちろん、日ごろから定期的に検査を受けるとよいでしょう。保健所では無料かつ匿名で検査を受けることができ、感染が分かった場合は専門病院を紹介してもらうこともできます。ほかにも、自治体が設置している特設の検査施設や、民間企業が行うプレ検査(検査キットが送付され、自分で採血して返送)などでも検査が受けられます。

ただし、感染機会があった場合、検査が早すぎると正しい結果が出ないことがあります。抗体検査であれば1か月ほどで抗体を検出できることがありますが、陰性だった場合は、正しい結果を得るためにも、感染機会から3か月経過したタイミングでもう一度検査を受けるとよいでしょう。

後天性免疫不全症候群(エイズ)の治療のポイント

抗HIV薬

発症前(HIV感染者)かエイズ発症後かにかかわらず、抗HIV薬の使用が治療の中心となります。以前は薬の副作用が強かったこともあり、CD4陽性リンパ球の数が一定の数値まで下がってから治療が開始されていましたが、現在は副作用が少なくなってきているため、HIVに感染していれば早期から治療を始めることが一般的です。

治療では、3~4種類の抗HIV薬を組み合わせることが基本です。ただし最近では、1錠に2~3種類の成分が含まれているものもあるため、1日1回1錠の内服でよい場合もあります。

また、抗HIV薬は生涯にわたり飲み続けることが基本となります。飲み忘れがあるとウイルスが薬に対する耐性を獲得してしまい、効果がなくなることがあるため注意しましょう。10回の内服のうち1~2回飲み忘れると、患者さんの半数が治療に失敗するとされているため、きちんと薬を飲むことが大事です。

後天性免疫不全症候群(エイズ)になったときに気を付けたいポイント

HIVに感染しても基本的な日常生活は変える必要はなく、仕事や学業を続けながら通院や治療も可能です。ただ、体調の変化や気になる症状があれば早めに主治医に相談するとよいでしょう。また、以下のような点に気を付けましょう。

生活習慣を改善する

HIV感染や薬の服用によって生活習慣病にかかりやすくなるとされています。そのため、生活習慣病予防のために、たばこやアルコールを控える、食生活に注意する、適度に運動する、体重や血圧を定期的にチェックするといったことを心がけるとよいでしょう。

また、免疫力が低下している状態では下痢や食中毒が起こりやすいため、肉や魚介類、卵などの生食は避け、野菜はしっかり洗うとよいとされています。そのほか、体力維持や気分転換のために適度な運動をしたり、健康維持のために十分な休養を取ったりしましょう。

出血時に注意する

けがなどで出血した場合は、感染のリスクを考えて傷の手当ては自分で行いましょう。周りの人が手当てする場合は、手袋やビニール袋、タオルなどを使い、傷口や血液に直接触れないように注意する必要があります。

また、血液が付着したものはティッシュなどにくるみ、ビニール袋に入れて、しっかりと口を縛ってから捨てましょう。

性行為・妊娠・出産は医師に相談をする

HIVに感染していても性行為は可能とされています。ただしパートナーに感染させるリスクがあるため、安全な方法を主治医などに相談するとよいでしょう。

また、妊娠、出産も可能といわれています。女性が感染している場合は薬でウイルスの量をコントロールし、適切な時期に帝王切開を行い、母乳をあげないとなどの対策によって子どもに感染する確率を0.4%程度まで下げることが可能とされています。男性で子どもを希望する方は、生殖補助医療を受けるといった方法もあるため、早めに医師に相談するとよいでしょう。

定期的に受診する

症状がなくても定期的な受診が必要です。自分の免疫状態を理解して適切な治療を受けることにもつながるため、忘れずに受診しましょう。