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2023.02.06
#内科 #発熱外来 #対象外来

新型コロナ後遺症を克服するための3つのポイント

新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大により、罹患された方も少なくないことでしょう。なかには、熱が下がり検査も陰性になったものの、何らかの不調、いわゆる「新型コロナ後遺症」の症状が残ってしまう事例があります。

今回は、新型コロナウイルスの後遺症に関して、現在わかっている3つの原因と、後遺症を克服するための3つのポイントを、それぞれ共有します。

後遺症の原因と、それに対する治療法

新型コロナウイルス感染症の後遺症についてはいまだ分かっていないことも多く、確立された治療方法がありません。また、後遺症の実態についてはさまざまな研究がなされていますが、やはり不明点が多く、それぞれの症状と新型コロナウイルス感染症との因果関係は、十分にはわかっていない部分も多くあります。しかし、最近の研究で少しずつ、その実態が解明されようとしています。

ハーバード大学等がアメリカ・イギリスで約59万人を対象に行った研究では、「果物や野菜など、植物性食品の摂取量が多い人は、新型コロナウイルス感染症の発症率が9%低く、重症化リスクは41%低い」ということが明らかになりました。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降に長期間続く主な後遺症、いわゆる「long COVID」の症状に対して、慢性炎症が関わっている可能性があることが分かってきています。5月12日の「Frontiers in Medicine」に掲載された米フロリダ大学のArch Mainous氏らによる研究では、新型コロナ後遺症と慢性炎症との関連に言及しているだけでなく、炎症を抑制する治療介入によって後遺症の予後が改善される可能性が報告されています。

2002年以降、SARSの流行においては、ME/CSF(筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群)の病態が注目を集めました。これは、免疫異常を背景に神経組織の炎症が発生し、様々な神経機能異常を引き起こすものです。新型コロナ後遺症においても同様に、多くの専門家が「ブレインフォグや歩行障害、めまい、動悸などの自律神経障害には、МE/CSFが関与しているのではないか」と指摘しています。
МE/CSFにおいて問題となるのは、主に「神経接合部」です。運動神経や自律神経などの神経伝達物質受容体に炎症が発生するため、セロトニンやアドレナリンなどの神経伝達物質の欠乏を招き、様々な神経機能の異常をきたすことが分かっています。

病態の改善のために求められる治療の一つが、免疫異常と炎症を制御するものです。一方、活性酸素の増加による酸化ストレスも問題で、体内の「抗酸化力」を向上させる治療法も不可欠となります。炎症を抑えて免疫を正常化する治療と、抗酸化力を向上させる治療には、たくさんの共通点があります。例えば、ビタミンCやビタミンDなどの各種ビタミンと、グルタチオンなどの抗酸化成分の投与は、炎症の抑制・抗酸化力の向上、どちらにも効果が期待できる方法です。

さらに神経機能回復のためには、神経伝達物質の原料となるタンパク質や各種アミノ酸、補酵素となるビタミンB群や鉄など、さまざまなビタミン・ミネラルを十分に補充する必要があります。

また、新型コロナ後遺症の治療には漢方薬も活用されています。漢方薬は条件を満たせば保険適応となるため、経済的な事情をあまり気にせず、大きな負担なく治療を受けられるというのも、現実的なメリットです。

現在までにわかっていることをまとめると新型コロナ後遺症の治療には、

  1. 慢性炎症を抑える
  2. 酸化ストレスを抑える
  3. 免疫の過剰な応答を抑える

の3つのポイントがあります。

この3つのポイントを抑え、症状を改善していくためには、ビタミンDやビタミンCなどのビタミン、あるいはミネラル等の栄養素を正しく取り入れる、オーソモレキュラー療法の考え方が重要です。こうした予防的な治療法は、欧米を中心に発展してきました。正しい食事から栄養を取ることはもちろん、必要に応じてサプリメントや点滴などで高濃度の栄養を補充します。また、身体に悪影響のある物質を避け、体内からそのような物質を排出することも病気の治療や予防に必要です。 

 

当院では、この3つのポイントに対して、点滴療法/サプリメント、栄養相談そして漢方薬を中心に、治療を行っていきます。

点滴療法/サプリメント

欧州で行った、新型コロナ後遺症とビタミンCなどのサプリメントに関する研究をご紹介します。
この研究では、1390名の患者をL-アルギニン+ビタミンC群とマルチビタミン併用療法(代替療法)の2群に分け、アンケートに回答してもらう方法がとられました。1ヶ月の治療後、L-アルギニン+ビタミンC群の患者さんは、代替治療群と比較して有意に新型コロナ後遺症に関するスコアが低かったことが認められました。抗酸化物質であるビタミンCは、活性酸素の元を取り除いてからだの酸化を防ぐ効果があり、これによって症状が改善した可能性があります。

点滴療法やサプリメント療法は特効薬ではありませんが、新型コロナ後遺症発症に対して治療介入する方法の一つだということは間違いないでしょう。

当院でもコロナ後遺症への効果的なアプローチを目的に、以下のような点滴療法・サプリメントをご提供しています。

高濃度ビタミンC点滴

〈期待される効果〉

  • 抗酸化作用
  • コラーゲン合成(肌の張り改善)メラニン合成抑制(シミ改善)
  • リンパ球機能改善(免疫機能向上、感染症予防)
  • 抗アレルギー作用(抗ヒスタミン作用によるアレルギーの緩和、花粉症の軽減)

疲労回復注射(ニンニク注射)

〈期待される効果〉

  • 慢性疲労、倦怠感回復、肩こり、冷え性
  • 神経細胞障害改善→疲れの改善
  • 自律神経の中枢神経改善⇒呼吸や消化、血液循環、心拍数正常化

プラセンタ

〈効果〉

  • 抗酸化作用
  • 細胞代謝改善(疲労回復)
  • 細胞再生効果(肌細胞:美白・肌のハリ維持、肝臓細:疲労回復・肝機能改善)
  • 更年期障害改善
  • 免疫調整(アレルギー改善)

以下では、当院でご提供しているサプリメントの一例をご紹介します。

ビタミンD

ビタミンDは免疫調節に重要な役割を果たす栄養素です。

具体的にいえば、ビタミンDは免疫細胞として知られているT細胞やB細胞、マクロファージなどの免疫細胞に取り込まれ、それらの細胞の活性化や増殖を促進します。これにより、細菌やウイルスなどの感染症に対する免疫力の向上が期待できます。
また、ビタミンDには炎症反応を抑制する作用もあります。炎症は免疫細胞の活性化を促す一方で、過剰な炎症反応は疾病を引き起こす原因になってしまうものです。ビタミンDは、炎症反応を抑制することで、免疫細胞の活性化を調節します。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸にはEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが含まれています。これらは免疫細胞の活性化や活性酸素の産生を抑制することで、抗炎症作用を持つと考えられる物質です。また、血管の弾力性を高め、動脈硬化を予防することができるとされています。

 ビタミンC

ビタミンCは、酸化還元反応を阻害することで、過酸化脂質などの酸化物質を除去する性質を持ちます。その結果、ビタミンCには抗酸化作用があると考えられているのです。また、抗酸化作用だけでなく、免疫力の向上や、美肌効果なども期待できます。

ビタミンE

ビタミンEには、脂質過酸化によって生じる活性酸素を除去する性質などから抗酸化作用があるとされています。

レスベラトロール

レスベラトロールはポリフェノールの一種で、抗酸化作用や抗炎症作用があります。抗炎症作用については、炎症関連遺伝子の発現を抑制することで、炎症反応を減少させると考えられているものです。また、自然抗酸化物質の一つで、活性酸素を除去することで、細胞膜やDNAなどを保護する作用を持ちます。さらには、活性酸素によって引き起こされる炎症や、心血管疾患、がんなどの発症リスクを軽減することが期待できる物質です。レスベラトロールは、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質と共に働き、抗酸化作用を増強することができます。

αリポ酸

αリポ酸は体内に存在する抗酸化物質の一つで、摂取することで抗酸化作用が期待できます。αリポ酸は免疫細胞の活性化を促進する働きを持ち、加齢に伴う免疫力の低下を防ぐとも考えられてる物質です。ただし体内のαリポ酸量は年齢に伴い、特に30~40歳頃から著しく低下することが知られており、食品やサプリメントから摂取することが推奨されています。

アガリクス

アガリクスとは、南米ブラジル原産のキノコで、もともとはブラジル・サンパウロ郊外のピエダーテ地方に自生していたと言われています。現地では、太陽の下でも生えてくる生命力の強いキノコであることから「太陽のキノコ」と呼ばれていました。アガリクスには、抗酸化作用や抗炎症作用、抗がん作用などが期待されています。また、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが含まれるため、健康に良いと考えられます。

栄養相談・食事療法

普段から摂取している食事・栄養も、上記の3つのポイントに対する効果的なアプローチが期待できます。ここでは食事で摂取しないほうがいいもの、また摂取したほうがいいものについて解説します。

摂取しないほうがいい食べもの

摂取を控えることが望ましい、慢性炎症を悪化させる食材として挙げられるのは、赤身肉・加工肉・果糖入り飲料などです。慢性炎症を促進させる食事の内容と、反対に慢性炎症を改善する食事の内容について、以下に代表的な飲食物をご紹介します。見比べてみてください。

慢性炎症を促進させる食事

  1. 精製された炭水化物(一般的なパンやパスタ)
  2. フレンチフライなどのフライ類
  3. ソーダなどの砂糖が豊富に入った飲みもの
  4. 赤肉や肉製品(ホットドックやソーセージ)
  5. マーガリン、ショートニングやラード

慢性炎症を改善する食事

  1. トマト
  2. オリーブオイル
  3. 緑色野菜
  4. ナッツ(アーモンドやくるみ)
  5. 魚(サーモン、マグロ、サバなど)
  6. 果物(リンゴ、オレンジ、イチゴ、ブルーベリー、さくらんぼ)
  7. コーヒー(砂糖の入っていないブラックコーヒー)

積極的に摂取したほうがいい食べもの

地中海食は、現在のところ「最も健康効果が高く、信頼できる」と考えられている食事法です。

地中海食には、以下のような特徴があります。

  • 不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルをよく使う
  • 飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取量が少ない
  • タンパク質源のメインは魚である
  • 野菜や果物などの植物性の食品が多い

地中海食の特徴の多くは、慢性炎症を改善する食事の条件と共通する部分があります。また、地中海食ではサーモンなどの魚類や野菜や果物を多く摂ることができるため、抗酸化作用や抗炎症作用があることもわかっています。

「新型コロナ後遺症と食事の関係について」詳細はこちら

漢方薬

漢方薬は新型コロナウイルス後遺症の特効薬になると断言はできませんが、原因が分かっていないさまざまな症状に対応できる可能性があります。そのため、後遺症をはじめとする、新型コロナウイルス感染症に関連した症状の改善に役立つ可能性もあるでしょう。

新型コロナ後遺症の症状としては、倦怠感(だるさ)、不眠や不安感、頭痛、脱毛などが多く報告されています。以下では、それぞれの症状に対して処方が検討される漢方薬について解説します。

倦怠感(だるさ)があるときに検討される漢方薬

補中益気湯・ほちゅうえっきとう

補中益気湯は、倦怠感や食欲不振、寝汗などの症状に効果が期待できます。一般的に、体力があまりなくて疲れやすく、胃腸が弱い方に用いられます。

十全大補湯・じゅうぜんたいほとう

十全大補湯は倦怠感や疲れ、貧血、食欲不振に改善をもたらし、手足の冷えなどのさまざまな症状を和らげる効果が期待できます。一般的に、食欲がなく、体力低下や手足の冷えなどが気になる方に用いられます。

不眠や不安があるときに検討される漢方薬

加味帰脾湯・かみきひとう

加味帰脾湯は精神的不安や、神経症などの症状に対する効果が期待できます。一般的に、体力があまりなく、血色があまりよくない方に用いられます。

頭痛があるときに検討される漢方薬

葛根湯・かっこんとう

葛根湯は、かぜの引きはじめや鼻かぜ、肩こりなどの症状に効果が期待できます。一般的に、比較的体力があり、頭痛や発熱、寒気、肩こりなどを伴う方に用いられます。

脱毛があるときに検討される漢方薬

八味地黄丸・はちみじおうがん

八味地黄丸は、脱毛のほか、腰や脚の痛み、泌尿器または生殖器の機能低下などの症状に効果が期待できます。一般的に、疲労や倦怠感が著しく、尿の不調、口の渇きなどを伴う方に用いられます。

 

イーヘルスクリニック新宿院の新型コロナ後遺症の治療

新型コロナウイルス感染症は、5類感染症に移行したとはいえ、決して終息したわけではありません。特に、後遺症のリスクを考えると、感染対策は依然として重要です。ワクチン接種、マスク着用、手洗いなどの基本的な感染対策を継続し、自分自身だけでなく、周りの人々を守るために、引き続き注意を払うことが大切です。

イーヘルスクリニック新宿院では、新型コロナウイルス後遺症(Long Covid)でお悩みの方へ、多角的な治療アプローチを提供しています。

具体的には、

  • サプリメント療法: ビタミンD、C、亜鉛など、抗酸化作用や免疫機能改善が期待される栄養素を補給することで、炎症を抑え、体の回復を促します。
  • 漢方療法: 古くから伝わる漢方の知恵を活かし、体全体のバランスを整え、症状の緩和を目指します。
  • 幹細胞培養上清液「点鼻薬」療法: 幹細胞培養上清液には、組織修復や再生を促進する効果が期待されており、嗅覚・味覚障害などの症状改善に役立つ可能性があります。

これらの治療法は、患者様の症状や体質に合わせて、最適な組み合わせを提案します。

新型コロナ後遺症に対しては、さまざまな観点から症状に対して有用と思われる対策を行うことが重要です。つらいと感じる症状のあるときはお気軽にご相談ください。

<参考文献>

新型コロナウイルス感染症・罹患後症状のマネジメント 厚生労働省

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■新型コロナ後遺症と慢性炎症の関係

 

 

参考文献

・Metabolites. 2022 Jun 14;12(6):546.
・Front Med (Lausanne). 2022 May 12;9:891375.
・Pharmacol Res. 2022 Sep;183:106360.
・Nutrients. 2022 Mar 20;14(6):1305.

 

記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

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