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2022.05.20
#内科 #対象疾患

溶血性貧血

溶血性貧血とは

貧血とは、血液中に含まれる赤血球の中に存在する、ヘモグロビンというタンパク質の濃度が低いことをいいます。ヘモグロビンには酸素を運ぶはたらきがあり、ヘモグロビンの濃度が低いと酸素の運搬に支障が出て、さまざまな症状につながるとされています。

溶血性貧血は、血液の中の赤血球が破壊されること(溶血)で起こる貧血のことです。通常、赤血球の寿命は120日程度ですが、溶血性貧血の場合は赤血球が未熟なうちに破壊され、寿命が120日未満と短くなってしまうといわれています。

種類

溶血性貧血には先天性、後天性があり、後天性の代表的な病気が自己免疫性溶血性貧血です。難病指定されている病気であり、免疫システムに異常が起こり、自身の正常な赤血球を破壊することで発症するとされています。

なお、貧血の約7割は鉄分の摂取不足や生理や子宮筋腫などの婦人科疾患、がんなどによる鉄不足が原因の“鉄欠乏性貧血”であり、溶血性貧血は比較的珍しい種類の貧血だといえます。

溶血性貧血の症状

主な症状

溶血性貧血になると以下のような症状がみられることがあります。ただし、赤血球の破壊が軽度でゆるやかに進行する場合は、自覚症状がないこともあります。

  • 息切れ
  • ふらつき
  • 疲労感、脱力感
  • 蒼白
  • 黄疸(おうだん)(皮膚や目が黄色くなる)
  • 胆石
  • 褐色尿 など

重度の場合の症状

進行すると以下のような症状がみられることがあります。

  • 発熱
  • 胸の痛み
  • 失神
  • 心不全
  • 腹部の膨満感、不快感 など

受診の目安

前述のとおり、貧血の約7割は鉄欠乏性貧血だといわれており、過度に溶血性貧血を疑う必要はないでしょう。

ただし、溶血性貧血では重度な場合や進行が速い場合は死に至ることもあります。鉄欠乏性貧血の場合も、悪化すると集中力が低下するなど日常生活に支障が出ることもあります。また、時に貧血の原因ががんなどの重大な病気であることも考えられるため、気になる症状があるときは我慢せずに受診を検討することが大切です。受診の目安として、症状の項目で症状に心当たりがあれば、原因を見つけ出すためにも放置せずに内科やかかりつけ医などに相談してみるとよいでしょう。

溶血性貧血の治療のポイント

溶血を抑えるステロイド薬による治療が中心になりますが、過剰な免疫反応を抑える免疫抑制薬を併用したり、脾臓(ひぞう)の摘出をしたりすることもあります。また、貧血の進行が速い場合は輸血を行うこともあります。

薬の処方

まずは2~6週間程度、毎日ステロイド薬を内服することで、赤血球の破壊を改善させます。この治療で4割程度の患者さんが寛解(完治ではないものの症状が落ち着いた状態)に至るとされています。

治療効果があった場合は状況を見ながら徐々に薬を減らしていきますが、副作用や合併症があったり、悪化を繰り返したりするときは、免疫抑制薬の使用を検討することがあります。

脾臓摘出

ステロイド薬に副作用や合併症があったり、悪化を繰り返したりする場合は、脾臓の摘出も検討されます。

脾臓は赤血球の破壊などに関わる臓器です。ただし、脾臓のはたらきは肝臓や骨髄で補うことができるため、脾臓の摘出だけで病気が治るわけではありません。しかし、免疫抑制薬に比べると効果が期待できるといわれています。

溶血性貧血になったときに気を付けたいポイント

十分な栄養と休養を取る

赤血球が減ると、疲労感や脱力感といった貧血症状が現れることがあります。疲れやすいと感じる場合はしっかり休養し、栄養も十分に取りましょう。特にたんぱく質を積極的に取るとよいとされています。

また、急に立ち上がったり起き上がったりするとめまいが起こることがあるため、動作はゆっくり行いましょう。

寒冷刺激を避ける

自己免疫性溶血性貧血は種類によっては、冷えることで赤血球が破壊されるものがあります。そのため、冷たい水を飲んだり、手を洗ったりするだけで赤血球の破壊につながることもあるため注意しましょう。