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2023.01.30
#自費診療

肥満による健康障害は何なのか!!と適切なダイエット方法

肥満とは

肥満は、美容上の問題だけでなく、様々な健康障害、寿命短縮と関係することは、皆さんも、すでに御存知なのではないでしょうか?具体的には、どんな病気を招くのでしょう?そこで今回は、肥満が原因で起こりうる病気について、また過去の研究で証明されている適切な体重減少方法やダイエット方法少しずつご紹介していきます。

世界保健機関(WHO)は、国際的な基準として、BMI(体重(kg)/((身長(m))2)25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と定めています。日本人ではBMIが25を超えると2型糖尿病や循環器疾患のリスクが高くなり、内臓脂肪が増えていく傾向がみられるので、日本肥満学会は日本人の肥満を「BMI 25以上」と決めています。厚生労働省の調査によると、日本でも肥満は特に40歳以上で、この20年間で増え続けています。20~60歳代の男性の28.7%、女性の21.3%が肥満です。肥満は各種生活性生活習慣病や、狭心症や脳卒中の発症や各種癌の発症とも関係しているといわれています。更に重要なことが、少しの減量によりこれらの疾患にかかるリスクが減少することはできることです。

ここでは、肥満による健康リスクと過去の研究に元づいた減量方法を研究の内容の一部とともに紹介します。
*メタ分析とは過去の複数の研究の結果を統合する統計解析のことである。根拠に基づく医療において、最も質の高い根拠の1つとされています。

肥満によって引きこされる可能性がある主な疾患

  1. 生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病)
  2. 狭心症/心筋梗塞、脳卒中
  3. 睡眠時無呼吸症候群
  4. 癌、悪性腫瘍
  5. 性機能の低下

生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病)

肥満の人はそうでない人に比べて糖尿病で約16倍、高血圧症で約3.5倍、心疾患で約2倍もかかりやすいというデータがあるようです。肥満・糖尿病、高脂血症、高血圧の合併は 「死の四重奏」と呼ばれています。

狭心症/心筋梗塞、脳卒中

肥満により上記のような生活習慣病にいたり、その結果動脈硬化が進行し心筋梗塞や脳卒中が発症してしまいます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群には気道(空気の通り道)が閉塞する「閉塞性」、呼吸そのものが起きなくなる「中枢性」のものがありますが、そのほとんどが「閉塞性」によるものです。この病気は中高年の男性、それも肥満体型の方に多いといわれています。肥満によって舌が分厚くなって、空気の通り道を邪魔し、寝ている間に気道が閉塞(もしくは部分閉塞)するために起こります。

癌の発症、増悪に関係

肥満は、消化器系や女性のホルモン関連悪性腫瘍などのがん種の発生およびがん死と強い関連が過去の論文を集めたメタ解析で明らかになっています。肥満の評価は以下の7つの指標で行った。(BMI、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、ウエスト-ヒップ比、体重、体重増加、肥満手術による体重減少)具体的に肥満と関連したがん種は、食道がん、胃がん、男性の大腸がん(結腸、直腸)、胆道系のがん、膵がん、閉経前女性の子宮内膜がん、腎がん、多発性骨髄腫、ホルモン補充療法歴のない閉経後女性の乳がん、子宮内膜がん、卵巣がんです。

性機能の低下

肥満男性では精液の量が少なく、精子の数や濃度、運動率なども低いことが、インドの男性約1,300人を対象とした後ろ向きコホート研究で明らかになりました。具体的には肥満(BMI 30以上)の男性では肥満ではない男性と比べて精液の量のほか、精子の数、濃度、運動率などが低いことが分かっています。

疾患のみならず寿命への影響

米国のハーバード公衆衛生大学院と、英国のケンブリッジ大学が中心となった研究チームによる研究では、重度の肥満では寿命が約10年短くなるおそれがあることが分かりました。 1970~2015年に行われた239件の大規模疫学調査から、32ヵ国の1,060万人のデータを解析した結果であります。研究チームは、別の疾患による死亡リスクを取り除くために、喫煙経験者、調査開始時に慢性疾患のある人、調査開始から5年以内に死亡した人のデータを除き、最終的に残ったアジア、欧州、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの395万1,455人のデータを詳しく調査しました。13.7年間追跡して調査した結果、「重度の肥満の人では寿命が約10年短くなり、2人に1人は70歳より前に死亡するおそれがある」ことが判明しています。

またBMI25以上の人出は5上昇するごとに死亡リスクは31%上昇することが分かっています。更に疾患別にみると、BMIが5上昇するごとに、心血管系疾患の死亡リスクは49%、呼吸器疾患の死亡リスクは38%、がんの死亡リスクは19%、それぞれ上昇しました。

 肥満そのもの自体が不健康な生活を惹起している??

以前の記事では肥満による健康障害について書きましたが、肥満自体が我々の不健康な生活習慣であるという面白い話をします。

我々の食欲をコントロールしているホルモンの1つであるのがレプチンです。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、基本的に食事後に分泌されます。レプチンが分泌されると、脳の視床下部という部分にある満腹中枢が刺激され、満腹感を感じるようあり食欲が抑制されます。慢性的な高脂肪食の摂取は脳にある視床下部に炎症を惹起させ、レプチンの効き目が悪くさせます(レプチン抵抗性の上昇)。レプチンがきかないために。食欲が高進している状態が継続し満腹感が感じにくくなり、最終的には多く摂取してしまい肥満につながります。

また、ネズミの実験でありますが、肥満に伴うレプチン抵抗性の上昇(レプチンが聞きにくくなること)と自発的な運動を行いたいという気持ちが下がってしまうことも分かっています。我々はレプチンの効き目が悪くなると、よりきかせようとしレプチンの分泌を増やし、高レプチン血症を作ってしまいます。高レプチン血症が原因で脳内のホルモンバランスが崩れ、運動による脳内報酬が低下(運動しても気持ちよいと思わない)し、自発的な運動が減ってしまします。

つまり肥満になると、肥満自体が原因でさらに食欲が上がってしまったり、運動したいという気持ちが減ってしまい、悪循環にいたってしまいます。

適切なダイエット、減量方法

肥満を改善する方法には、①食事、②運動、③睡眠の3つの柱があります。4つめは医療の力に頼る、メディカルダイエットになります。

食事

低糖質(炭水化物)ダイエットはやはり痩せる

低炭水化物ダイエットは痩せるとか、痩せるけれども体によくないとか、さまざまな説を聞いたことがある人も多いでしょう。実際このダイエット方法は、BMI 30以上の肥満の人にとっては効果を発揮する可能性があります。低炭水化物食と低脂肪食の効果を示す研究結果をご紹介します。これは、肥満に該当する2型糖尿病患者115人を対象に、24週間にわたってダイエットの結果を比較した研究です。

被験者は低炭水化物食群(糖質1日50g未満)と低脂肪食群に不作為に振り分けられ、ダイエットの経過と結果について分析を受けました。その結果、両群とも体重は減っていましたが、24週目の体重は低炭水化物食群のほうが、より減っている傾向が見られたのです。また、体重以外に血中コレステロール、中性脂肪、血糖値についても、低炭水化物食群のほうが有意に低下していました。

過度な低糖質ダイエットについては、健康へのメリットとなるのか否か、いまだに議論の的となっていますが、少なくとも肥満の人が半年程度にわたって行うダイエットとしては、効果的であると判断しても良いでしょう。

また、極端な低糖質ダイエットではなく、1日に摂取する糖質の量を120g以下に抑える軽度の糖質制限でも、減量が可能であるとの報告もたくさんあります。120gというのは、おにぎりにして大体4個、食パンだと4枚程度の量です。

厳しい糖質制限をしなくても糖質摂取量が1日120g以下であれば、摂取した量だけでは脳や筋肉で使われるエネルギー源をまかないきれず、不足したエネルギーはケトン体から補給されます。ケトン体は脂肪細胞が分解されるときに作られる物質です。食事などで摂取した糖質量が足りなければ、体は脂肪を分解してケトン体を作り出し、エネルギーとして使用します。つまり糖質制限は脂肪の分解を促し、結果的に減量につながるのです。

睡眠

睡眠不足で1日の平均カロリー摂取量が385kcalも上昇する

肥満外来で実際に指導している内容をベースに、肥満と睡眠との関係を解説します。端的に言うと、睡眠時間が少ないと太りやすくなってしまう、ということです。

まずはアメリカのコロンビア大学が、約1万5000人を対象に調べた、肥満と睡眠に関する研究をご紹介します。この研究では、平均睡眠時間が7-9時間のグループに対して、睡眠6時間だと23%、5時間だと50%、そして4時間以下だと73%も、肥満になる確率が高くなることが分かりました。つまり「睡眠時間が短ければ短いほど、肥満になる」ということが示されています。原因としては摂取カロリー量が上昇するためと考えられています。アメリカで行われた研究では、5時間睡眠の人は8時間睡眠の人に比べて、食欲を抑制するレプチン分泌量が15.5%減り、食欲増進作用を担うグレリン分泌量が約15%増えたとの報告がなされています。
“早寝早起きはヒトを健康に賢くする”という言葉には、何かしらの信憑性があると言えそうです。ぜひこうした研究結果を気に留め、十分な睡眠時間を確保するよう工夫してみてください。

メディカルダイエット

① リベルサス

リベルサス(一般名:セマグルチド)は、経口GLP-1受容体作動薬に分類される2型糖尿病の治療薬です。GLP-1受容体とくっついてインスリンというホルモンの分泌を促すと、血糖値が下がります。なお、空腹時には作用せず、食事によって血糖値が高くなった時に作用するため、低血糖が起こりにくいという特徴があります。

リベルサスには食欲抑制や胃排泄遅延(胃に食物が長時間とどまること)が期待できるため、肥満治療にも使用することがあります。研究結果もでており、2型糖尿病患者さんに対して投与した試験では、投与から26週までの体重減少量が、3㎎で-0.5kg、7㎎で-1.0kg、14㎎で-2.4kgだったという結果が出ています。

②フォシーガ

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)とは、糖を尿とともに排泄し、血糖値を下げたり体の中の水分量の調節をしたりする薬です。“選択的SGLT2阻害薬”と呼ばれる治療薬の仲間で、腎臓の糖を再吸収するはたらきを持つタンパク質“SGLT2”のはたらきを抑えることで、糖をグルコース(ブドウ糖)の再吸収を抑制して尿中に排泄させ、血糖値を下げる作用がある薬です。SGLT2阻害薬を投与すると、食事で糖質制限をしているような状態になるため、体重減少につながるとされています。尿と一緒に排出することを促します。

③防風通聖散

防風通聖散は、腹部に皮下脂肪が多く蓄積していて便秘がちな方に処方されることがあり、肥満症、高血圧による動悸・のぼせなどの症状、むくみ、便秘などに効果があるとされています。

eHealth clinicの肥満外来は、主に栄養カウンセリングや薬の処方を行なっています。一口に肥満を治療するといっても適切な治療は患者さんによって異なり、全て同じとはいえません。eHealth clinicでは丁寧な問診から、一人ひとりに合った治療を提案します。なお、それぞれの治療は副作用などのリスクもあります。副作用など注意点は診察時に説明をいたします。不安や疑問があればお気軽にご相談ください。


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著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)

参照文献
・Lancet Diabetes Endocrinol. 2020; 8: 377-391