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2022.07.22
#内科 #対象疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは

脂肪肝は食べ過ぎや飲みすぎなどが原因で肝臓に中性脂肪がたまった状態のことで、主にアルコールの飲み過ぎによって発症する “アルコール性脂肪肝”と、そのほかの原因で発症する“非アルコール性脂肪肝”に分けられます。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは、非アルコール性脂肪肝から進行して脂肪肝炎や肝硬変の状態までを含む全ての肝臓の病気のことです。NAFLDのうち、脂肪肝のまま進行しない状態を“NAFL”、肝炎に進行した状態を“NASH”と呼びます。

NAFLD は肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧症といった生活習慣病などが主な原因であり、メタボリックシンドロームや肥満者の増加に伴い患者数が増えているといわれています。また、NAFLDの患者は心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患にかかりやすいことが分かっているほか、NAFLDが慢性腎臓病など肝臓以外に生じるさまざまな病気との関連していることが分かってきています。このようなことから、治療や予防のためには生活習慣の改善が重要とされています。

非アルコール性脂肪性肝疾患の症状

NAFLDの多くは無症状です。一方で、進行して肝硬変になったりすると、以下のような症状が現れることがあります。

進行した場合の症状

  • 全身の倦怠感
  • かゆみ
  • 黄疸(おうだん)(白眼や皮膚が黄色くなった状態)

など

受診の目安

前述のような症状が出た場合は、肝硬変などのリスクを踏まえ早めに消化器内科の受診を検討するとよいでしょう。

前述のとおり非アルコール性脂肪性肝疾患は、肝硬変に移行するリスクがあります。肝硬変は肝がんに移行する確率が高いため、早期発見・治療が重要です。ただし、肝臓の異常は自覚症状が出にくいため、定期的に健康診断を受けるとよいでしょう。

なお、健康診断などで行う血液検査では確実に診断できない場合があり、血液検査の結果が正常値でも非アルコール性脂肪性肝疾患でないとは限りません。診断方法としてもっとも簡単なのは、腹部エコー検査とされています。下記に該当する場合は非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクが高いため、医療機関で腹部エコー検査を受けるとよいでしょう。

  • ウエスト周りが男性で85cm、女性で95cmを超えている
  • 20歳の時から10kg以上体重が増えた
  • 糖尿病、脂質異常症、高血圧症のいずれかにかかっている

非アルコール性脂肪性肝疾患の治療のポイント

治療の目的として重要なことは、線維化の進行を抑えて肝硬変や肝がんに移行させないようにすることです。現時点では確立された治療法がないため、食事・運動療法で対処する必要があります。

食事療法

食べ過ぎや飲み過ぎなどの食生活が原因と考えられているため、食生活を見直すことが大切です。ポイントは以下のとおりです。

  • 脂肪分、糖質などの過剰摂取を控える
  • ジュース、清涼飲料水、果物を取り過ぎないようにして、果糖の過剰摂取を防ぐ
  • 緑黄色野菜をたくさん食べ、ビタミンやミネラルを摂取する
  • 食物繊維をたっぷり取る

食物繊維を取ると満腹感を得やすくなり、食事によるトータルのカロリー摂取量を減らしやすくなります。また、摂取した糖質の吸収を穏やかにするはたらきもあり、肝臓の負担を軽減するのにも役立つため、積極的に摂取するとよいでしょう。食事療法の具体的な内容については、医師や保健師、管理栄養士などと相談しましょう。

運動療法

運動不足も原因の1つとして考えられているため、運動も見直す必要があります。運動療法では1週間で150分以上の運動をするのが理想とされていますが、難しい場合は短い時間でもよいので、普段より体を動かすことが大切です。運動によって筋肉量が増えると代謝が上がり、非アルコール性脂肪性肝疾患の改善につながるとされています。

少し汗ばむくらいの有酸素運動をするのがよいですが、レジスタンス運動(スクワットやもも上げなどのじっくりとした筋トレ)をしたり、イスに座って上半身の体操をしたりするだけでも効果が期待できます。

薬物療法

非アルコール性脂肪性肝疾患そのものの治療薬の開発も進められていますが、現時点で保険が適用されているものはありません。

しかし糖尿病や脂質異常症、高血圧などを合併している場合は、それらの治療薬を使うことで、非アルコール性脂肪性肝疾患も改善する可能性があります。基礎疾患がない場合はビタミンEを服用することも可能ですが、ビタミンEも保険は適用されません。

非アルコール性脂肪性肝疾患になったときに気を付けたいポイント

定期的に検査を受ける

非アルコール性脂肪性肝疾患は放置すると肝臓の線維化が進み、肝硬変や肝がんに移行するリスクがあります。非アルコール性脂肪性肝疾患と診断された後も、定期的に血液検査や画像検査を行って経過を観察し、都度適切に対処することが重要です。