血圧の上と下の差の理想値を解説|正常に維持するためのポイントも紹介

「食後になると頭がボーッとする」などの不調を感じたことはありませんか。食べすぎや年齢のせい、と考えてしまう方も少なくありません。食後に感じる症状の背景には、食後低血圧と呼ばれる状態が関わっている可能性があります。食後低血圧は、食後2時間以内に収縮期血圧(上の血圧)が20mmHg以上低下した状態です。
高齢者の食後低血圧による、転倒や骨折リスクがあることが報告されています。骨折による活動量の低下が長期化すると、寝たきり要因の一つになるため、注意が必要です。
この記事では、食後低血圧の主な症状や、食後に血圧が下がる仕組み、日常生活で意識したい対処法のポイントを解説します。ご自身やご家族の体調を理解し、必要に応じて医療機関へ相談する際の参考にしてください。
イーヘルスクリニック新宿院では、食後のふらつきやだるさなどの症状についてもご相談いただけます。血圧の変動や生活習慣を丁寧に確認し、原因に応じた対処法をご提案します。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院や足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士
食後低血圧によくみられる症状を以下に解説します。
食後の眠気自体は、多くの方にみられる自然な反応です。一方で、食後低血圧では「体が鉛のように重く感じて起き上がりにくい」など、強い眠気やだるさとして現れることがあります。
食べ物の消化のために胃や腸へ血液が優先的に集まる結果、脳へ送られる血液量が一時的に減少します。脳が軽い酸素不足・栄養不足の状態になることで、食後低血圧が起きると考えられています。食後30分〜1時間くらいで強い眠気やだるさが毎回出る方は、食後低血圧が関わっている可能性があります。
食後低血圧でよくみられるのが、めまいや立ちくらみです。特に、食事を終えて椅子から立ち上がるときに感じたり、足元がふわふわしたりするような感覚が出る方がいます。血圧の低下により脳への血流が一時的に不足し、体のバランスを保つ機能がうまく働きにくくなるためと考えられています。
めまいやふらつきは、転倒を引き起こしやすい一因です。食後に立ち上がる際には、つかまりやすい取っ手や壁など周囲を確認してください。その後、急に立ち上がらず、一呼吸おいてからゆっくりと動き始めるようにしましょう。
食後低血圧のなかでも注意したいのが「意識が遠のく」「実際に気を失ってしまう」といった症状です。血圧の低下が著しい場合、目の前が急に暗くなるといった前ぶれのあとに、実際に倒れてしまう方がいます。
失神は多くの場合一時的ですが、転倒で頭を打ったり骨折したりする可能性があります。高齢の方は、治療が長期化すると日常生活の質が低下する恐れがあります。食後に気を失った、あるいは近い症状を経験した場合は、早めに医療機関を受診しましょう。食後低血圧に関わらず、原因を明確にし再発予防が必要です。
食後低血圧が理解しやすくなる血圧や血流に関するしくみを解説します。
食後低血圧の原因には、血圧を一定の範囲に保つための「自動調整機能(血圧調節機構)」が影響しています。自動調整機能がうまく機能しない状態になると、心拍数や血管の収縮が十分に高まりません。その結果、全身の血圧を維持できず、一時的に低血圧になることがあります。
食事で炭水化物をとると、血糖値の上昇に伴ってインスリンが分泌されます。食後には消化管から分泌されるホルモン(消化管ペプチド:食物の消化・吸収に関わる信号物質)も増えます。研究によると、消化管ペプチドの一部には血管を広げる作用があり、血圧低下に関与している可能性が指摘されています。
食後低血圧になりやすい人には以下の特徴があります。血圧の自動調整機能が働きにくい状態である可能性があり、注意が必要です。
上記に該当しても、必ず食後低血圧になるわけではありません。上記に該当し食後低血圧の症状が続く場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。処方されている薬の投与量や種類を、状況に合わせて医師が調整します。
食後低血圧の背景には、次の病気が関わっている場合があります。
上記の疾患に共通するのは、自律神経系の障害です。通常、食後は自律神経が心拍数の増加や血管収縮によって血圧を維持します。上記の疾患では、自律神経機能が損なわれているため、食後低血圧が起こりやすい状態です。
糖尿病性神経障害では、高血糖が自律神経を傷つけやすい状態です。パーキンソン病や多系統萎縮症では、脳や神経系の変性によって血圧調節がうまく働かなくなります。多系統萎縮症は、自律神経障害が重篤になりやすく、失神や転倒のリスクも高まります。
食後低血圧の対処法は次の3つです。
食後低血圧の対策は、血圧が変動しにくい食べ方を心がけることから始めましょう。食後の胃腸に血液が集中しないように、以下のポイントと具体策を取り入れてください。
血糖値が上がりやすい食品は、インスリンの分泌に影響しやすいです。インスリン分泌が促されると、血圧変動を引き起こしやすいことが指摘されています。分食や時間をかけて食べるなど工夫しましょう。医師や管理栄養士から食事指導を受けている方は、指示を優先して調整ください。
食後低血圧の対策では「食べ方」が大切になりますが、血圧全体のコントロールの視点では「何を食べるか」も大切です。日常の食事内容を見直すことで、高血圧の予防や改善にもつながります。以下の記事では、高血圧の方が食事で気をつけるポイントや血圧を下げる飲み物・食べ物について解説しています。
>>高血圧の食事で気をつけること!血圧を下げる飲み物・食べ物も紹介
食後は、消化のために血液が胃腸に集中し、血圧が下がりやすい時間帯です。食後の過ごし方を工夫することで、症状の予防につながる可能性があります。
めまいやふらつきを感じた場合には、転倒を防ぐことが最優先です。症状を感じた場合は、しゃがむ、または座って安全を確保しましょう。可能であれば横になり、足を心臓より少し高く上げてください。足を上げる姿勢は、脳への血流が戻りやすくなるとされています。症状が続く場合は、救急受診をし早めの対応が必要です。
生活習慣を見直すことで、血圧が過度に変動しにくい体づくりを目指すことも大切です。日々の生活習慣は、自律神経の働きや血管の状態に影響し、食後低血圧の予防・軽減に役立つ可能性があります。主に以下の取り組みを生活習慣に取り入れましょう。
運動については、心臓や腎臓などに持病がある方や、関節の痛みがある方は、制限が必要な場合があります。新たに運動を始める前に、主治医に確認しておくと安心です。
次の場合は、早めに医療機関への相談を検討してください。
上記の症状は、食後低血圧だけでなく、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気に関連する場合があります。高血圧や糖尿病などで薬を服用している方は、薬の作用や飲むタイミングが、食後の血圧変動に影響している可能性があります。
自己判断で薬を中止したり、量・時間を変更したりすることは、病状の悪化や副作用につながる恐れがあります。気になる症状がある場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。必要に応じて薬の種類や量、飲むタイミングについて調整してもらうことが大切です。
血圧の変動に伴う症状の中には、重大な病気が隠れていることがあります。脳の血管に関わる病気は、早期発見と予防が大切です。以下の記事では、高血圧と脳梗塞の関係や発症の仕組み、予防・改善のポイントについて解説しています。
>>高血圧と脳梗塞の関係とは?原因や予防、改善法についても解説

食後低血圧は、消化のために胃腸に血液が集まることで、食後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上下がる状態です。食後低血圧は主に以下の症状が現れやすいです。
対策として、食事を小分けにし、炭水化物を控え、よく噛んでゆっくり食べることで症状軽減が期待できます。食後は急に立ち上がらず、しばらく休み、症状の軽減につとめましょう。高血圧や糖尿病、パーキンソン病などの治療中や、降圧薬服用中の方は、注意が必要です。症状が伴う場合は、医師に処方薬の調整を相談しましょう。
不調が続く場合や意識が遠のく経験をした場合は、医療機関に相談しましょう。食前・食後の血圧や症状を記録し、主治医に持参することで診断に役立つ場合があります。食後低血圧のリスクを低減させ、安心・安全な毎日を過ごしましょう。
イーヘルスクリニック新宿院では、食後低血圧による転倒や体調不良のご相談にも対応しています。血圧や生活状況を確認し、日常生活での注意点や必要な治療についてわかりやすくご説明します。
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R W Jansen, L A Lipsitz.Postprandial hypotension: epidemiology, pathophysiology, and clinical management.Ann Intern Med,1995,122,4,p.286-295