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2025.03.02
#腎臓内科 #対象疾患

エンレストの特徴とは?服用方法や注意すべき副作用を解説

心不全の治療薬として、従来とは異なる新しいメカニズムをもつ薬「エンレスト」が登場しました。エンレストは、血管拡張や利尿作用心臓の負担軽減といった複数の効果を持つ画期的な薬です。

エンレストの特徴や服用方法、注意すべき副作用などを詳しく解説します。エンレストを服用中の方、これから服用を検討されている方、ご家族が服用されている方など、記事を参考にして安心して治療に取り組んでいきましょう。

イーヘルスクリニック新宿院 の腎臓内科の3つのメリット

① 平日20時まで、土日祝も診療
② オンライン診療対応で、すぐに薬が受け取れる
③ 管理栄養士による食事指導も実施

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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医抗加齢医学会専門医日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士

エンレストの作用機序と効果

エンレストの作用機序と効果について、以下の3つに分けて解説します。

  • エンレストとは新しいタイプの心不全治療薬
  • エンレストの作用機序
  • エンレストが効果的な心不全の種類

エンレストとは新しいタイプの心不全治療薬

エンレストは、サクビトリルとバルサルタンという2つの成分が合わさった薬です。それぞれの成分が異なるメカニズムで心臓を守ります。

従来の心不全治療薬とは異なり、エンレストは「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」と呼ばれる新しいタイプの治療薬に分類されます。ARNIは、体内で働く特定の酵素であるネプリライシンの働きを抑え、心臓に良い影響を与えるホルモンの働きを高めることで、心不全の悪化を防ぎます。

2019年に発表された臨床試験では、エンレストは心不全の悪化による入院リスクを減少させる結果が示されている一方、心血管死のリスク減少効果は認められなかったという報告があります。試験では、エンレストが心不全の症状を改善し、生活の質を向上させる効果は高いものの、根本的な病気の進行を完全に止めることは難しいことを示唆しています。

エンレストの作用機序

エンレストの2つの成分は、それぞれ異なる役割を担っています。

1つ目の成分であるサクビトリルは、体内でサクビトリラトという物質に変化します。サクビトリラトは、ネプリライシンという酵素の働きを阻害します。ネプリライシンは、心臓を守る働きをするホルモン(ANPやBNPなど)を分解してしまう酵素です。

2つ目の成分であるバルサルタンは、アンジオテンシンIIという物質の働きを抑えることで効果を発揮します。アンジオテンシンIIは、血管を収縮させ、心臓に負担をかける物質です。2つの成分が相互に作用することで、エンレストは心臓の負担を軽減し、心不全の悪化を防ぐ効果を発揮します。

エンレストが効果的な心不全の種類

エンレストは、特に「左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)」に効果があるとされています。左室駆出率とは、心臓が血液を送り出す力の指標です。左室駆出率が低下した心不全は、心臓のポンプ機能が弱まっている状態です。エンレストは、心臓のポンプ機能を改善する効果があるため、HFrEFの患者さんにとって有効な治療薬となります。

心不全には、HFrEF以外にも、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)など、いくつかの種類があります。HFpEFは、心臓のポンプ機能自体は保たれているものの、心臓が拡張しにくくなっている状態です。

2019年の臨床試験では、駆出率が保たれた心不全の患者さんにおいて、エンレストは心血管死や心不全による入院といった複数の結果を合わせた指標に対して、明確に効果があるとは言えなかったと報告されています。しかし、心不全による入院については、エンレストを服用した群でやや低い傾向が見られました。

ご自身の心不全の種類にエンレストが適しているかどうかは、医師の診断が必要です。

エンレストの服用方法と注意点

エンレストの服用方法と注意点について、以下を解説します。

  • エンレストの服用量と服用時間
  • エンレストと併用禁忌の薬
  • エンレストの効果を高める服用方法

エンレストの服用量と服用時間

エンレストの服用量は、患者さんの病状や年齢、腎機能などによって一人ひとり異なります。慢性心不全の治療でエンレストを服用する場合、多くのケースでは1回50mgを1日2回服用することから始めます。錠剤は25mg、50mg、100mg、200mgの4種類があり、医師が患者さんの状態に合わせて適切な用量を判断します。

1回50mgを処方された場合、朝と晩に50mg錠を1錠ずつ服用します。心臓の状態や他の薬との兼ね合いを見ながら、医師の判断で2~4週間ごとに増量し、最大で1回200mgまで増やすこともあります。

高血圧の治療の場合は、通常、1回200mgを1日1回服用します。高血圧の程度や他の合併症の有無によって、最大で1回400mgまで増量する場合もあります。

エンレストは食事の影響を受けにくい特徴があります。食前・食後どちらで服用しても構いません。毎日同じ時間に服用することで、飲み忘れを防ぐことができます。朝食後と夕食後、あるいは朝食後のみなど、患者さんそれぞれの生活リズムに合わせて服用時間を決めておきましょう。

エンレストと併用禁忌の薬

エンレストには、併用してはいけない薬、あるいは併用には注意が必要な薬があります。具体的には、ACE阻害薬(エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリルなど)や糖尿病の患者さんに処方されるアリスキレンフマル酸塩などです。併用禁忌の薬とエンレストを一緒に服用すると、血管浮腫や腎機能障害、高カリウム血症などのリスクが高まる可能性があります。現在、他の薬を服用している方は、必ず医師に伝えてください。

エンレストの効果を高める服用方法

エンレストの効果を高めるためには、医師の指示通りに正しく服用することが最も重要です。自己判断で服用量を変えたり、服用を中断したりすることは絶対に避けましょう。エンレストは心不全の悪化による入院リスクを減少させる結果が示されている薬ですが、心血管死のリスク減少効果は示されていないという報告もあります。効果を最大限に得るためには、医師の指示に従うことが重要です。

エンレスト単独の服用だけでなく、日常生活でもいくつか工夫することで、より効果的に治療を進めることができます。塩分の摂りすぎに気をつけたり適度な運動を心がけたりすることで、血圧のコントロールや心臓への負担軽減につながります。禁煙も効果的です。さらに、バランスの取れた食事や十分な睡眠も大切です。規則正しい生活習慣を維持することで、エンレストの効果を最大限に発揮することができます。

エンレストの副作用と対処法

エンレストの副作用と対処法について、以下を解説します。

  • エンレストの主な副作用
  • 重篤な副作用と緊急時の対応
  • 副作用が出た場合の対処法
  • 副作用を最小限に抑えるためにできること

エンレストの主な副作用

エンレストで比較的よく見られる副作用には、低血圧めまい頭痛などがあります。副作用は多くの場合一時的なもので、治療を続けるうちに軽快することが多いです。

低血圧の症状としては、立ちくらみやふらつきを感じることがあります。エンレストが血管を拡張させる作用があるため、血圧が下がりやすくなるために起こります。特に服用開始時や増量時には注意が必要です。低血圧の症状がある場合には、服用量を一時的に減らす、あるいは服用時間を変更するなどの対応が必要となる場合があります。

咳は、エンレスト服用中に比較的多く見られる副作用の一つです。咳の程度は個人差があり、軽い咳から激しい咳までさまざまです。咳が続く場合は、医師に相談し、必要に応じて薬の種類を変えるなどの対応を検討する必要があります。

めまいや頭痛も、エンレストの副作用として現れることがあります。多くの場合軽度で、時間の経過とともに改善していきます。しかし、症状が強い場合や長く続く場合は、医師に相談することが大切です。

重篤な副作用と緊急時の対応

エンレストには、まれに重篤な副作用が現れることがあります。例えば、血管浮腫(顔や喉の腫れ)腎機能障害高カリウム血症などです。副作用は命に関わる可能性もあるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。2019年に発表された臨床試験でも、エンレスト服用群で血管浮腫の発生率が高いことが報告されています。

血管浮腫の症状は、顔や唇、舌や喉などの急な腫れが特徴です。喉の腫れは呼吸困難を引き起こす可能性があり、命に関わる危険な状態になることもあります。腫れに伴い、痒みや痛みを感じる場合もありますが、痛みを伴わないこともあります。

腎機能障害は、尿の量が減ったり、むくみが出たりするなどの症状が現れます。高齢者や元々腎臓の機能が弱い方は特に注意が必要です。高カリウム血症は、体がだるくなったり、吐き気や嘔吐、動悸などが現れたりすることがあります。

重篤な副作用症状が現れた場合は、すぐに服用を中止して救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。

副作用が出た場合の対処法

副作用が出た場合は、自己判断で薬の服用を中止したり、量を変えたりせずに、必ず医師や薬剤師に相談してください。副作用の種類や程度によっては、薬の種類を変える、服用量を調整する、あるいは他の薬を併用するなどの対応が必要です。

副作用を最小限に抑えるためにできること

副作用を最小限に抑えるためには、医師の指示通りに薬を服用することが大切です。持病がある場合や他の薬を服用している場合は、必ず医師に伝えるようにしてください。特に、ACE阻害薬やアリスキレンフマル酸塩との併用は禁忌となっており、重篤な副作用が発生するリスクが高まります。

エンレストの服用中は、定期的に検査を受けることも重要です。医師は、血液検査や尿検査などを行い、副作用の有無や体の状態をチェックします。定期的な検査を受けることで、早期に副作用を発見し、適切な対処ができます。特に、腎機能障害高カリウム血症は自覚症状が少ないため、定期的な検査が重要です。

まとめ

エンレストは、心不全治療薬として開発された画期的なお薬です。複数の効果を併せ持つARNIという新しいタイプの治療薬で、心臓に良い影響を与えるホルモンの働きを高めることで、心不全の悪化を防ぎます。

服用量は患者さんごとに異なり、医師の指示に従うことが大切です。副作用として低血圧やめまいなどがみられる場合がありますが、多くの場合、一時的なものです。何か心配なことがあれば、医師や薬剤師に相談しましょう。エンレストは、規則正しい生活習慣と合わせて服用することで、より効果的に心不全の治療を進めることができます。

イーヘルスクリニック新宿院の腎臓内科

受付

健康診断でクレアチンが高い、尿蛋白や血尿が陽性の場合は、当院の腎臓内科を受診してください。基礎疾患や腎機能のリスク因子を検査し、最適な治療プランを提案します。治療オプションは理解しやすく説明し、患者様の了承を得た上で治療方針を共に決定します。当クリニックには管理栄養士もおり、食事に関する専門的なアドバイスも受けられます。健康な未来への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。

参考文献

  1. Solomon SD, McMurray JJV, Anand IS, Ge J, Lam CSP, Maggioni AP, Martinez F, Packer M, Pfeffer MA, Pieske B, Redfield MM, Rouleau JL, van Veldhuisen DJ, Zannad F, Zile MR, Desai AS, Claggett B, Jhund PS, Boytsov SA, Comin-Colet J, Cleland J, Düngen HD, Goncalvesova E, Katova T, Kerr Saraiva JF, Lelonek M, Merkely B, Senni M, Shah SJ, Zhou J, Rizkala AR, Gong J, Shi VC, Lefkowitz MP and PARAGON-HF Investigators and Committees. Angiotensin-Neprilysin Inhibition in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction. The New England journal of medicine 381, no. 17 (2019): 1609-1620.
  2. Michelle M Kittleson. Guidelines for treating heart failure. Trends Cardiovasc Med, 2024

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