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2023.01.11
#腎臓内科

慢性腎臓病の予防と食事パターン

慢性腎臓病(CKD)はさまざまな原因で腎機能が悪化した状態の総称です。慢性腎臓病の人は全世界で増加の傾向にあり、患者数は、日本では1,330万人以上、世界では実に6億人以上と推計されています。
慢性腎臓病をもっと細かく見ると、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎症、腎硬化症といったさまざまな種類があります。いずれにしても腎臓の状態が慢性的に良くない状態のため、できるだけ予防したい病気です。

慢性腎臓病はどうして予防が大切なの?

ところで、慢性腎臓病はどうして予防しなくてはいけないのかな? と考える方も多いでしょう。
慢性腎臓病になってから治療するのではなく、できるだけ予防したいというのには、主に2つの理由があります。
1つ目は、慢性腎臓病が末期腎不全の危険因子になるためです。末期腎不全とは、腎機能が正常の5%以下で透析が必要な状態を指しています。
2つ目は、慢性腎臓病に罹患していると、心血管疾患など、さまざまな疾患にかかりやすくなるためです。慢性腎臓病が原因となって次の病気が引き起こされてしまいます。

にも関わらず現在の医学では、いったん悪化した腎機能を改善するための有効な打ち手がありません。つまり上に挙げたような状態を避けるためには、慢性腎臓病を予防する以外に方法がないのです。
慢性腎臓病の予防には、タンパク質制限、減塩、禁煙といった生活習慣の改善が推奨されています。
今回は、とくに「食生活習慣の改善」に的を絞り、最新の研究からわかった「腎機能のために良いと考えられる食事のパターン」をみなさまに共有していきます。

最新の研究データでわかる、腎機能のためにいい食事とは?

今回、参照している研究は、エビデンスレベルの最も高い「メタアナリシス システマティックレビュー」といわれるものです。過去に行われた複数の研究結果を統合し、まとめたうえで、再度解析をしなおし結論を導いています。この方法によって統合されたコホート研究は18件で、研究対象となった人数はじつに約63万人にのぼります。また観察期間の平均年数も10.4年と長期にわたるため、非常に内容の濃い研究といえるでしょう。
これだけの研究材料からみえてきた、慢性腎臓病予防に対して効果的・健康的な食事内容とは、以下のようなものです。

【野菜・果物、ナッツ、豆類、全粒粉、魚、低脂肪の乳製品】

これに対して、不健康な食事のパターンは、以下のようなものとなります。

【赤身肉、加工肉、塩、砂糖入り飲料】

健康的な食事パターンは、慢性腎臓病の発生率リスクを約30%低下させます(オッズ比[OR]0.70(95%信頼区間[95%CI]、0.60~0.82))。またアルブミン尿の発生リスクを約23%低下させることもわかっています(OR 0.77、[95%CI、0.59~0.99];I2=37%]4試験)。

 

この研究でわかった、慢性腎臓病予防に有効な食事パターンは、同時に心血管疾患や糖尿病などの疾患を予防するにも有用です。

2012年に発表された、約12万人を対象とした研究によると、魚、ナッツなどの豆類および非精製の赤肉由来のタンパク質(ハムやソーセージなどの精製肉ではない、加工していない肉)を1日3オンス(約85g)摂取した場合、心血管疾患のリスクは13%減少しました。一方、1日に1.5オンス(約42.5g、ホットドック1個の量に相当)の加工肉を摂取した場合では、心血管疾患のリスクが20%も増加しました。つまり加工肉は、魚やナッツ、非加工肉に比べて量が半分でも、心血管疾患におけるリスクをかなり高くするといえます。

一方、赤身肉の摂取は糖尿病とも関連性をもっています。約14万9,000人を対象とした研究では、赤身肉を多く摂取した人は、あまり食べない人と比較して糖尿病発症リスクが高まることがわかりました。
赤身肉の摂取量が変わらなかった集団に比べ、1日あたりの摂取量が0.5皿分以上増えた集団では、その後の4年間で2型糖尿病を発症するリスクが48%上昇していることがわかっています。一方、摂取量が1日あたり0.5皿以上減った集団では、全追跡期間中の2型糖尿病の発症リスクが14%低下していました。

「健康的な食事パターン」のポイントはいかがでしたでしょうか? 腎機能低下を予防するためには、何よりもまず減塩が第一であることはもちろんです。減塩を常に意識しつつ、今回紹介したポイントを、ふだんの食生活の中で意識してみてください。

著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)

参考文献

・Clin J Am Soc Nephrol. 2019 Oct 7;14(10):1441-1449.
・Archives of internal medicine. 2012 Apr 9;172(7):555-63.
・JAMA Intern Med. 2013 Jul 22;173(14):1328-35.

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