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2022.09.30
#腎臓内科 #糖尿病内科(内分泌・代謝外来) #対象疾患

糖尿病だけではなく、慢性腎臓病にも適応がある選択的SGLT阻害薬『フォシーガ』とは?

糖尿病とは、血糖値が長期間高い状態が続く病気で、日本では成人の6人に1人が疑われています。血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足(インスリン分泌不十分)したり、はたらきが低下したりする(インスリン抵抗性)ことが原因で、進行すると目や腎臓、神経などに関わる病気につながる可能性があります。

フォシーガとは

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)とは、糖を尿とともに排泄し、血糖値を下げたり体の中の水分量の調節をしたりする薬です。“選択的SGLT2阻害薬”と呼ばれる治療薬の仲間で、腎臓の糖を再吸収するはたらきを持つタンパク質“SGLT2”のはたらきを抑えることで、糖を尿と一緒に排出することを促します。

フォシーガは、もともと2型糖尿病の治療薬として広く知られてきた治療薬ですが、2021年には2型糖尿病を合併しない慢性腎臓病の治療薬としても承認されました。研究の結果によれば、ほかの治療薬と併用することで、腎臓の機能低下や腎臓病の進行を抑制し、心血管疾患や腎不全による死亡リスクを下げる効果が期待できるといわれています。

フォシーガの腎機能に対する効果

3ヵ月以上にわたって続く全ての腎臓病を、慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)と呼びます。慢性腎臓病は20歳以上の8人に1人がかかっていると考えられており、近年では新たな国民病ともいわれている病です。
慢性腎臓病の発症には加齢や、肥満につながるような食習慣、運動不足、喫煙といった生活習慣が関連していると考えられています。そのため、肥満や脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病がある方は慢性腎臓病のリスクが高く、注意が必要です。
機能の指標の1つとしてeGFRというものがあります。eGFRは60以下が病的であり、10を下回ると透析の必要がある数値です。
1980年代、慢性腎臓病の患者さんの治療はタンパク質制限と安静しか方法がなかったために、1年間にeGFRが10以上も低下していました。2000年代になるとARBと呼ばれる降圧薬が使用できるようになり、年間のeGFRの低下が5-6まで改善しています。近年はフォシーガなどの選択的SGLT2阻害薬が出現してきたために、eGFRの低下は年間2前後に留まるまでに改善してきています。

参考文献:N Engl J Med. 2020 Oct 8;383(15):1436-1446.

フォシーガが処方される病気

フォシーガは以下のような病気の患者さんに対して、処方を検討されることがあります。

  • 1型糖尿病(重度の腎機能障害がなく、すでに食事療法・運動療法を行っている患者さんに限る)
  • 2型糖尿病(重度の腎機能障害がなく、すでに食事療法・運動療法を行っている患者さんに限る)
  • 慢性心不全(すでに標準的な治療を受けている患者さんに限る)
  • 慢性腎臓病(重篤な腎不全がなく、透析を受けていない患者さんに限る)

フォシーガの処方の特徴

  • 糖尿病だけではなく、慢性腎臓病にも保険適応あがる
  • 腎臓の機能低下や腎臓病の進行を抑制し、心血管疾患や腎不全による死亡リスクを下げる効果がある
  • 糖を尿と一緒に排出することを促す作用がある
  • 1日1回使用

QA

・フォシーガは肥満外来(医療ダイエット)でも使われますか?

フォシーガは、食事で摂取した余分な糖分を尿として排出する作用があり、糖質制限に近い効果を期待できます。具体的には、腎臓から吸収される糖の量を減らし、ダイエット効果や体重減少の効果が期待できます。
ただし、肥満外来(医療ダイエット外来)でのフォシーガ使用は、基本的には自費診療となり、保険が適用されません。

・肥満外来(医療ダイエット)でフォシーガ以外の薬は使用できますか?

肥満外来(医療ダイエット)ではフォシーガ以外ではGLP-1受容体作動薬を使う場合があります。GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、胃腸の動きを調整し、食欲を抑制する薬であり、3〜6か月で5〜10kgの体重減少が期待できます。海外では肥満症の治療薬として使用されています。日本国内では、リベルサスという唯一のGLP-1経口薬が2021年2月に発売され、当院ではこれを主に使用しています。リベルサスの成分であるセマグルチドは、ビクトーザの成分であるリラグルチドと比較して、体重減少効果が約3倍高いと報告されています。最近の研究によると、セマグルチドを服用したグループでは、プラセボを使用したグループと比較して、平均14.9%、15.3kgの体重減少が記録されました。

ただし、現時点で肥満外来(医療ダイエット外来)におけるGLP-1受容体作動薬の使用は自費診療となり、保険適用外になります。

参考文献:
N Engl J Med. 2021 Mar 18;384(11):989-1002.
Diabetes Metab. 2020 Apr;46(2):100-109.
参考記事:
糖尿病の治療薬“GLP-1”とは? ~特徴と使用上の注意点を解説~

・フォシーガの使用に注意が必要な人はいますか?

フォシーガを使用する際には、以下のような方は慎重に検討する必要があります。これらの状況に当てはまる可能性がある場合は、あらかじめ医師に伝えておく必要があります。

・血糖コントロールが悪い、高齢であるなどを理由に脱水を引き起こしやすい方
・尿路感染や性器感染がある方
・栄養不良やアルコールの取りすぎなどで低血糖を引き起こす可能性のある方
・1型糖尿病と慢性心不全・慢性腎臓病を合併している方
・肝臓の機能が悪い方
・妊婦、あるいは妊娠している可能性のある方
・授乳中の方
・小児
・高齢の方

・フォシーガが使用できない方

以下のような方は、フォシーガを使用できません。当てはまる可能性のある方は、あらかじめ医師に伝えるようにしましょう。

  • フォシーガの成分に過敏症を持っている方
  • 重症ケトーシス*がある方
  • 糖尿病性昏睡状態(とうにょうびょうせいこんすいじょうたい)*の方や糖尿病性昏睡状態になる可能性のある方
  • 重症の感染症や重篤なけがのある方
  • 手術前後の方

*重症ケトーシス:血液中のケトン体の濃度が高くなった状態。吐き気のほか吐く息の甘酸っぱい匂い、深い呼吸などの症状が現れる。

*糖尿病性昏睡状態:異常な高血糖によって、初期は体のだるさや腹痛などがみられる。進行すると強い脱水状態が生じ、血圧の低下などがみられるほか、最終的には意識を失う可能性もある。

フォシーガの使用中に注意したい症状

フォシーガの使用中は、以下のような重篤な症状が現れる可能性があります。気になる症状が現れた場合には、速やかに医師へ相談するようにしましょう。
また、使用中は血液検査の結果などに変化が生じることもあるため、医師の指示に従って定期的な検査を受けるようにしましょう。

低血糖

空腹、冷や汗、血の気が引く、手足の震えなどの症状が挙げられます。

腎盂腎炎じんうじんえん

寒気、発熱、背中を叩いたときに痛みなどがあります。

外陰部・会陰部の壊死性筋膜炎えしせいきんまくえん

陰部の痛みや腫れ、発熱、体のだるさなどがみられます。

敗血症

発熱、寒気、脈が早くなる、体のだるさなどがみられることがあります。

脱水

喉の渇き、体重減少、立ちくらみやめまい、疲れやすさなどが生じることがあります。

ケトアシドーシス

意識の低下、嘔吐や吐き気、腹痛などがみられることがあります。

当院の治療方針について

慢性腎臓病は進行すると腎機能が元に戻らなくなるため、予防と早期発見が重要です。クレアチニン酸値が高い状態であるにも関わらず治療をせず放置している場合や、タンパク尿が軽度でもみられる場合は、知らないうちに腎機能が低下し始めている可能性があります。疑問や不安があれば、症状がなくても早めに医師に相談しましょう。

イーヘルスクリニック新宿院では、糖尿病や慢性腎臓病の診療を行っています。患者さんの症状について丁寧に診察し、必要な検査や適切な治療法を提案してまいります。来院はもちろんオンライン診療にも対応しており、忙しい方でも通いやすいような体制を整えていますので、気になることがあればいつでもご相談ください。
診療は土日祝日も対応しており、24時間365日診療予約がネットから可能です。忙しい方でも受診しやすい体制を整えていますので、お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。

参考記事

糖尿病とは~予防から治療法まで~

糖尿病の診断基準とは?

糖尿病の合併症

糖尿病の食事療法

糖尿病の運動療法

健康的に痩せる断食(ファスティング)ダイエット

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