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2022.06.20
#内科 #対象疾患

息苦しい

受診の目安になる症状

  • 息苦しくて動けない
  • 急速に呼吸が苦しくなっている
  • 安静にしていても息苦しさがある
  • 横になると息苦しいが座ると治る
  • 意識がはっきりしなくなる
  • 脈が速くなり冷や汗をかいている
  • 胸に激しい痛みを伴う
  • 喉の痛み、嘔吐、声がれ、チアノーゼ(唇や指先が青または紫色になる)などを伴う

息苦しいという症状は、一般的に呼吸に何らかの不快感が伴う状態をいいます。具体的には呼吸がしづらい、息が詰まる感じ、空気を吸い込めない感じなどと表現され、これを医学用語では“呼吸困難”と呼びます。

息苦しいという症状は日常生活でもみられることがあり、運動時や高所で呼吸が速くなることは誰にでも起こり得る反応であり、過度に心配する必要はないでしょう。ただし、安静にしていても息苦しさが治まらなかったり、以前は問題なくできていた運動をして息苦しくなったりする場合には何らかの病気の可能性が疑われるため注意が必要です。

上記の症状が当てはまるときは、場合によっては一刻を争う状況であり、救急搬送が必要となることもあるため、早めに内科やかかりつけ医などの受診を検討するようにしましょう。

息苦しいと感じる原因と対処法

息苦しいと感じる原因には、運動時や標高の高さのほか、加齢やホルモンバランスの乱れ、肺や心臓の病気の可能性も考えられます。

運動

運動をするときは、運動に必要なエネルギーを生産するために酸素が必要になります。激しい運動をすればするほど多くの酸素が必要となるため、体が多くの酸素を取り入れようとして息苦しくなることがあります。

この場合は、しばらく休むことで元どおりになることが一般的です。ただし、休んでも息苦しかったり、これまではできていた運動でも息苦しさが現れたりする場合には受診を検討しましょう。

高所

標高の高い場所では酸素が薄く、1回に吸い込む酸素の量が減ることで体内に送られる酸素量が不足します。そのため息苦しいと感じることがあり、酸素を補うために呼吸回数を増やすことで息切れが起こることがあります。

この場合は、今いる場所より高い場所に行かないようにしたり、安静にしたりすることなどが大切です。また、酸素ボンベを利用して酸素を取り入れる方法もあります。必要に応じて医師に相談することも検討しましょう。

加齢

加齢によって呼吸器系の機能が低下すると、息苦しさの原因となることがあります。年齢が高くなると呼吸筋の筋力が低下したり、ガス交換量が減少したりするため息苦しさを感じることがあります。また、日ごろから運動不足になっていると、心臓が血液を送り出すための筋力が弱くなって症状がみられることもあります。

息苦しさの原因がなんらかの病気である場合は、その病気の治療を行うことで改善が望めますが、治療で改善が難しい場合は、それ以上症状を悪化させないための治療が中心となることが一般的です。

ホルモンの乱れや異常・自律神経の乱れ

女性は更年期(閉経前後の計約10年間)になると、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、自律神経の乱れから息切れやほてり、イライラなどさまざまな症状が現れることがあります。また、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の場合は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで息切れや動悸、手の震えなどの症状が現れます。

さらに、過労やストレスも同様に自律神経の乱れにつながり、息切れが起こりやすくなる場合があります。また、ストレスを感じると無意識のうちに呼吸が浅くなりやすく、これが息切れにつながることもあります。

更年期障害やバセドウ病が原因の場合は適切な治療が必要であり、それ以外の場合も十分な睡眠やストレスをためない心がけが大事です。

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症です。感染しても症状が現れない方もいますが、症状が現れる場合には、発熱や息苦しさなどの呼吸器症状、体のだるさなどの症状がみられることがあります。中には重症化し肺炎を引き起こす場合もあるため、高齢の方やほかに病気のある方など重症化しやすい方は注意が必要です。

治療方法として、軽症の場合は自然によくなる方が多いため、症状に応じた解熱剤や咳止め薬などの処方を検討しながら様子を見ることが一般的です。一方で、中等症から入院が必要となり、薬物療法や酸素療法なども検討されます。重症化した場合、人工呼吸器や体外式模型人工肺(ECMO)などが必要となる場合もあります。気になる症状がある場合には、仕事や学校などを休み感染を広げない工夫を取ったうえで、地域の医療機関に電話でご相談ください。

気管支喘息

気管支喘息(きかんしぜんそく)とは、気管支(空気の通り道)が急に狭くなり、呼吸が苦しくなる発作を繰り返す病気のことです。気管支に炎症が起こるため、ちょっとした刺激で気管支の壁の腫れ、痰の分泌、周りの筋肉の収縮などが起こって気管支が狭くなるといわれています。

治療には、気管支の炎症を抑えて発作を予防する薬(吸入ステロイド薬など)や、発作を起こしにくくするための体力づくり、ダニなどの悪化因子の除去などの方法があります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)(COPD)とは、有害物質を長期間にわたって吸い込み続けたことで肺に炎症が生じる病気です。中高年に発症する生活習慣病の1つと考えられており、主な原因はたばこの煙といわれています。

COPDでは、体を動かしたときの息苦しさ、慢性的な咳や痰といった症状が現れます。また、喘鳴(ぜんめい)(呼吸をするときに“ヒューヒュー”“ゼーゼー”という音がする)や発作性呼吸困難など、喘息のような症状を合併する場合もあります。

治療では、まずは禁煙することから始めます。一度低下した肺の機能を回復させることは難しいですが、禁煙と薬によって悪化を防ぎ、日常生活をスムーズに送れるようにすることができるといわれています。また、重症の方の場合は、酸素を供給する器具を使用することもあります。

肺炎

肺炎とは、細菌やウイルスなどの感染によって肺に炎症が起こる病気です。息苦しさのほか、咳、痰、胸の痛み、発熱などの症状が現れます。ほかにも、疲れやすい、発汗、頭痛、吐き気、筋肉の痛み、腹痛、下痢といった症状が現れることもあります。

軽症であれば抗菌薬の内服、重症であれば入院して抗菌薬の注射による治療を行うことが一般的です。

肺がん

肺がんとは、気管支や肺胞の細胞ががん化した病気です。自覚症状がないうちに進行していることもありますが、症状がある場合は、息苦しさや咳、痰、血が混じった痰、発熱、動悸、胸の痛みなどが現れることがあります。

これらの症状は肺がん以外の呼吸器の病気でもみられるため、症状があったからといって過度に心配する必要はないでしょう。ただし、複数の症状があったり、長引いたりしていて気になる場合は、早めに医療機関の受診を検討するとよいでしょう。

治療には、手術や薬物療法、放射線治療などの選択肢があり、がんや患者さんの状態によって選択します。

気胸

気胸とは、胸の中で肺を包む胸膜腔という場所に空気がたまった状態をいいます。胸腔にたまった空気に肺が押された形になるので、肺が小さくなり息苦しさを感じることがあります。

もっとも多いのは、自然と内臓(主に肺)が破れる自然気胸で、10~30歳代のやせ型の男性に多い病気です。このほか、けがなどで肋骨(ろっこつ)が肺に刺さって起こる外傷性気胸、子宮内膜症が横隔膜や肺に広がり穴が開くことで起こる月経随伴性気胸、肺から空気が漏れ続ける緊張性気胸があります。

治療は気胸の種類や重症度によって異なります。主に、胸腔ドレナージ(胸腔にチューブを入れて空気を抜く)や手術などが行われます。自然気胸であれば、軽度かつ無症状の場合は経過観察となり、安静にして穴が(ふさ)がるのを待つこともあります。

心臓の病気

心不全、狭心症、心筋梗塞などの心臓の病気でも息苦しくなることがあります。

これらの治療は種類によって異なります。たとえば、心不全は糖尿病や高血圧症、高コレステロール血症といった生活習慣病に起因することも多いため、治療では、薬物療法や生活習慣の見直し、食事療法などを行います。また、原因となる心臓の異常があれば、それらの治療のために手術も検討されます。

貧血

貧血とは、赤血球の数やヘモグロビンの濃度が低下する病気です。血中のヘモグロビンには酸素を運ぶ役目があるため、特に体を動かしたときに息苦しさが現れることがあります。

治療では鉄剤の投与を行うことが一般的です。また、食事での鉄分の摂取不足に注意することも大事です。

息苦しいと感じるときに気を付けたいポイント

安静にする

息苦しさによる不安などでパニックになると、症状が悪化することがあります。そのため、まずは落ち着いて安静にするようにすることが大切です。

COPDや心臓の病気、貧血などでは安静時は症状が出ないこともありますが、だからといって放置すると命に関わることもあるため、状況に応じて受診を検討するとよいでしょう。

禁煙する

喫煙が主な原因となるCOPDの場合は禁煙することが大事です。さらに、喫煙は気管支の炎症や心臓病、がんなどとも関連するといわれています。心臓疾患や呼吸器疾患などを悪化させる可能性もあるため、禁煙を心がけるとよいでしょう。

場合によっては受診を検討する

息苦しさの原因には、運動や高所のほか、呼吸器や心臓の病気である場合もあります。時に重大な病気がきっかけになっている可能性もあるため、気になる症状がある場合は早めに内科やかかりつけ医などの受診を検討するとよいでしょう。

中でも急速に呼吸が苦しくなっている、苦しくて動けない、意識が遠くなる、脈が速くなって冷や汗をかいているといった場合は、救急搬送が必要なこともあるので注意が必要です。