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2023.01.30

肥満と行動変容~痩せたいとき注意するポイントとは?~

「痩せたい」と考えている人はたくさんいます。しかし一方で、「痩せる方法」を間違って認識しているケースも多々あるのです。痩せる方法としては、①食事、②運動、③睡眠の3つの柱を改善していくことが大切です。4つめは医療の力に頼る、メディカルダイエットになります。

現在、BMIや腹囲など何らかの指標によって肥満への対策を必要としている場合、ポイントを抑えて自分の行動を変容させることは改善の近道となります。
今回は、肥満を改善するために重要なポイントをご紹介します。

食べ物のカロリー表示の確認

肥満の改善を目指す場合、食べ物のカロリー表示を確認することから始めましょう。難しいことではなく、まずは表示を「確認するだけ」です。
カロリー表示の確認に関する、ある研究についてご紹介します。この研究は、メニューへのカロリー表示が消費者に与える影響を調査した186の研究、および、同じく小売店に与える影響を調査した41の研究をまとめ、メタ分析を行ったものです。
分析の結果、メニューにカロリーの情報が表示してあるだけで、消費者が選ぶメニューのカロリーは27kcal減少しました。このうち女性の選ぶメニューは1人あたり60kcalも減少しており、男性よりも女性のほうが大きく影響を受けることもわかりました。さらに過体重の人の場合、1食当たり83kcal減らすことも確認されました。

つまり痩せたい場合は、まず自分が購入する食べ物のカロリー表示を確認することが重要なのです。カロリー表示・確認を習慣的に行うことによって自然にカロリーの低い食べ物を選ぶ傾向が身に付き、その結果、肥満の解消につながると考えられます。

食べる量はお皿の大きさによって決まっている?

次は、行動経済学の考え方を利用して減量する方法を2つご紹介します。

1つ目はアンカリングです。アンカリング(Anchoring)とは、認知バイアスと呼ばれる、先入観に基づく認識の歪みの一種です。先に何らかの数値(アンカー)が与えられていると、後の数値の判断がアンカーに影響されて、正確な数値よりもアンカーに近い数値に置き換えられてしまうことをアンカリングと呼びます。
この現象は、数字以外の部分でも起こり得ます。肥満予防の場合、アンカーに相当するのが「皿の大きさ」です。

人が食べるモノの量は初期アンカー値に偏っていることが多く、とりわけ肥満の人が食べる量は、皿のサイズに大きく影響されています。映画館に来場した人に、中サイズか大サイズのポップコーンを提供した「ポップコーン実験」という実験があります。この実験では、大サイズをもらった人は、中サイズをもらった人よりも55%も余計に食べた、との結果になりました。カロリーに換算すると、177kcal相当です。

アンカリングの概念は、2型糖尿病に該当する肥満患者の体重減少および血糖コントロールにおいても効果を発揮しています。130人の糖尿病患者に対して行われた研究では、患者を無作為に、市販の「食事サイズコントロールプレート(小さいお皿)」を使うグループ(介入群)と通常の食事アドバイスを行うグループ(対照群)に振り分け、経過を観察しました。
6か月後、対照群の体重減少が0.1%に留まったのに対し、介入群では1.8%と、有意に体重減少が認められました。治療薬の減量については、対照群の10.8%が減薬となったのに対し、介入群の患者は実に26.2%が減薬可能となっています。

2つ目はナッジです。ナッジとは「ひじで軽くつつく」という意味の英語で、行動経済学では「人々を強制することなく、望ましい行動に誘導するようなシグナル、仕組みまたは戦略」のことを指し示しています。つまり肥満におけるナッジとは、理論を応用することで、“知らず知らずのうちに”健康的な行動を促す仕組みや環境を作ることです。

例えば、100gのクラッカー4袋と400gのクラッカー1袋で食べる量やカロリーを比較したところ、100gのクラッカー4袋のほうが400gのクラッカー1袋よりも、食べる量が25%(75kcal)少なかった、という例があります。
食べ物の形を工夫することで、摂取するカロリー量を抑えることができるという一例です。

肥満は伝染する?肥満の友達を作らないと痩せる?

「肥満は伝染する」というのは、本当だと思いますか?
米ハーバード、カリフォルニア両大学の研究者によって、「肥満は社会的に伝染する現象である」との研究結果が発表されています。この研究は1971年から2003年まで32年間にわたり行われたものです。友人や親戚関係を中心として、1万2067人を対象に体重の推移をモニターしました。

結果、肥満の友人を持つ人は、自身も肥満になる確率が57%増大することがわかっています。これは、食生活や遺伝など、肥満に関連すると考えられている他のリスクよりもさらに高い数字でした。

それはなぜなのでしょうか? 分析すると、「肥満の友人がいると、肥満の状態が体に良くないという認識が薄れてしまう」「肥満になる可能性のある生活習慣を“普通である”と認識してしまう」といった理由が見えてきました。研究者はこの結果について「逆に言えば、1人の人が健康的な食事や運動で肥満を防げば、他の人の肥満を防ぐことにもなる」とコメントしています。

確かに、肥満を解消することは自分一人の健康のために思えるかもしれませんが、それは同時に、身の回りの人、あなたの大切な人の健康のためになる可能性があります。

正しい肥満の解消方法を身に付けて、少しずつ健康リスクを下げていきましょう。

著:医師 天野方一(eHealthclinic院長)

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