高尿酸血症の食事で気を付けるポイントとは?具体的な食事の注意点を解説
現代において塩は人間の食には欠かせません。ただ、塩分の過剰摂取がさまざまな疾患のリスクを伴うことが明らかになってきてからは、「減塩」を推奨する時代の流れとなってきました。石器時代では1日の食塩摂取量は1〜3g程度と大変少なかったと考えられています。現在でも、塩を手に入れることができない南米のヤノマモ族は、1日1g未満の食塩で暮らしています。
現在、塩の摂取量・使用量が急激に増えた背景には、製塩の普及や、塩が食物の保存に役立つことがあげられます。特に今から約50年前が食塩摂取量のピークで、日本北部では1日30g近く、日本南部では少ないものの15g程度と大変多かったことが報告されています。その後は、冷蔵庫の普及や食生活の欧米化に伴って、日本人の食塩摂取量は減少傾向にありますが、まだまだ他国に比べて多い状況が今日まで続いています。
そんな中で、減塩は各地で推奨され、世界保健機構(WHO)では1日平均⾷塩摂取量5g未満、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されており、食塩の過剰摂取を控える啓発活動を行ってきています。
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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院や足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士
食塩の過剰摂取は、多くの疾患のリスクと関係することがわかっています。
正常な人でも、塩分を多く摂取すると血圧が高くなりますが、高血圧の人はさらに血圧が高くなりやすいといわれています。食塩の摂り過ぎで血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり動脈硬化になります。更にこの状態が続くと、狭心症/心筋梗塞、脳卒中や慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease, CKD)などの疾患が発症する可能性が高まります。
食塩の過剰摂取が高血圧を発症し、高血圧そのものが慢性腎臓病発症の原因となります。血圧が高い状態が続くことで慢性腎臓病の病態を悪化させる可能性が高くなります。また、食塩の過剰摂取が、腎臓での血液のろ過の際に過剰な負担となることや(糸球体過剰濾過)、尿タンパクの増加に関連していることも報告されています。このため慢性腎臓病の管理の重要なポイントとして研究により、減塩が腎機能低下を抑制する可能性が示唆されています。。
ここでは、我々の健康と密接に関係してくる食塩摂取について日常生活の中で試せる方法をご紹介します。
以下の記事では慢性腎臓病について網羅的に説明しているので、知りたい方はぜひチェックしてみてください。
>>慢性腎臓病とは?症状や罹患時に気をつけたいポイントを解説
減塩の方法はインターネットを検索することで、多くの情報を得ることが可能です。インターネットの情報では、単純に食事に使う食塩の量を減らすことや醬油・味噌の使用を減らすといったものが多いです。そのため「味が物足りなくなる」「なかなかやめられない」という方も多いようです。
そこで、ここでは少し違う角度からの減塩方法をご紹介します。
一回で出てくる塩の量を、穴の面積を小さくすることで物理的に減らせば減塩につながります。人の味覚は意外と適当なものです。アメリカで1,900人を対象に行われた、ソルトシェーカーの穴の面積と塩分摂取量の関係を調べた研究によると、食べ物の味は一切関係なく、ソルトシェーカーの穴の面積と塩分摂取量が比例しているという結果が出たのです。つまり人は、味に関係なくソルトシェーカーを一定回数振ってしまうクセがあることを示しています。まずは自宅にあるソルトシェーカーを見直すことをおすすめします。
外食および即席ラーメンとレトルトのカレーライスを食べる機会を減らすだけで、減塩に直結します。食塩摂取の多くは、外食もしくは加工食品由来である可能性があります。また、日本人の食塩の多い食事のトップ2がラーメンとカレーライスであることがわかっています。そのため、自炊などが得意ではない人でも、まずは外食や即席ラーメンとレトルトのカレーライスの回数を減らすだけでも効果があります。
ある報告では、減塩料理教室に出席した人だけではなく、その家族までもが結果的に減塩を実行できていたことがわかっています。この研究は、対象者を2つのグループに分け、1つのグループには減塩をテーマにした料理教室へ参加してもらい(介⼊群)、もう一つのグループには健康的な⽣活習慣に関する講義へ参加してもらい(対照群)、2カ月後の参加者及び家族の減塩の効果を評価しました。すると、介入群では、2カ月後には約1g/日の塩分摂取の低下が認められた一方で、対照群は有意な低下が認められませんでした。この傾向は参加者のみではなく、家族の塩分摂取量も同様でした。
健康な生活習慣やポジティブ感情は他人に伝染するといわれていますが、減塩についても同様なことがいえます。研究では、減塩料理教室への参加者とその家族について調べられ、家族も一緒に減塩効果があったことは、同じ料理を食する家族であるなら予測できる結果ですが、行動を共にする友人もと考えると、確かに効果はありそうです。
まずは減塩を実行している人と、一緒に食事や料理といった機会を意識的に設けることも一つの方法です。
一部の研究では、食塩摂取が極端に少ない場合(1日3g未満)に疾患リスクが高まる可能性が示唆されています。ただし、これはさらなる研究が必要とされる分野です。特に夏場で高齢者の方は減塩しすぎないことに心がけましょう。
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参考文献