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コラム
2025.07.01

痩せた高齢者がなぜ糖尿病に?医師が語る「筋肉量」と健康の深い関係

【医師が解説】痩せているのになぜ?筋肉量が少ないと糖尿病リスクが上昇する理由

「昔、私が診察をしていた頃によく思ったことがあります。70代、80代くらいの、とても細身の高齢女性が、ある日突然、糖尿病を発症するケースです。食が細く、決して太っているわけではない。当時は『なぜだろう…?』と不思議でなりませんでした。」

長年、多くの方が「糖尿病は肥満の人がなる病気」と考えてきました。しかし、最新の研究によって、この常識を覆す事実が明らかになってきています。その鍵を握るのが「筋肉量」です。

今回は、日本人131万人という非常に大規模なデータを基にした研究1 から、「筋肉量と糖尿病の密接な関係」について、そして高齢者にとって筋肉がいかに大切かをお話しします。

「太っていないから大丈夫」は間違い?最新研究が示す新事実

医学雑誌『Journal of Diabetes Investigation』に掲載された、日本人131万人を対象とした研究は、私たちの思い込みを覆す衝撃的な結果を示しました。

この研究では、参加者の筋肉量を比較し、その後の糖尿病発症リスクとの関連を調査しました。その結果は明らかでした。

  • 筋肉量が最も少ないグループは、最も多いグループと比較して、糖尿病リスクが男性で27%、女性で10%も上昇。
  • 筋肉量が少ないほど、糖尿病になりやすいという明確な傾向が見られました。

これは、体重やBMI(肥満度指数)だけを見ていては、本当の糖尿病リスクを見逃してしまう可能性があることを示しています。特に、冒頭でお話ししたような「痩せている高齢者」の糖尿病発症の謎を解く、重要なヒントとなります。

なぜ筋肉が少ないと糖尿病になりやすいのか?

筋肉は、体内最大の“ブドウ糖タンク”

食事から摂取した糖質は、消化されてブドウ糖となり血液中に入ります。この血液中のブドウ糖(血糖)が、食後に一時的に増えるのは正常な反応です。この時、増えたブドウ糖を最も多く取り込み、貯蔵してくれるのが筋肉です。筋肉は、いわば体内で最大の“ブドウ糖の貯蔵タンク”なのです。

“タンク”が小さいと、糖が血液にあふれ出す

筋肉量が少ないということは、この“ブドウ糖タンク”が小さい状態と同じです。そのため、食事で増えたブドウ糖を十分に処理しきれず、血液中にブドウ糖があふれ出てしまいます。これが「高血糖」の状態です。
高血糖が続くと、血糖値を下げようとインスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかり、やがてインスリンの働きが悪くなったり、分泌量が減ったりして、糖尿病を発症してしまうのです。

あなたの筋肉量は大丈夫?新しい指標「LBMI」に注目

この研究では、日常診療でも簡単に計算できる「LBMI(除脂肪体重指数)」が、糖尿病予防の新しい指標として注目されています。
LBMIは、体重から体脂肪量を除いた「除脂肪体重(筋肉や骨、内臓など)」を基に算出されるため、単なる体重よりも「筋肉がどれだけあるか」をより正確に評価できます。当院のようなクリニックに設置されている体組成計で、簡単に測定することが可能です。

筋肉量を守り、糖尿病、そしてフレイル・サルコペニアを防ぐために

高齢者にとって筋肉量は、糖尿病予防だけでなく、自立した生活を送る上で不可欠なフレイル(虚弱)サルコペニア(加齢性筋肉減少症)の予防にも直結します。大切な筋肉を守るために、今日から意識したいのは以下の2点です。

  1. タンパク質の摂取: 筋肉の材料となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)を毎食しっかり摂りましょう。
  2. 適度な運動(貯筋): 特に下半身の大きな筋肉を鍛えるスクワットなどのレジスタンス運動が効果的です。「貯金」ならぬ「貯筋」を心がけましょう。

まとめ:大切なのは「体重」より「体の中身」

糖尿病のリスク管理は、新しい時代に入りました。これからは、体重計の数字だけを気にするのではなく、その中身である「筋肉量」に目を向けることが非常に重要です。

ご自身の筋肉量や糖尿病のリスクについて気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの体を正しく知り、未来の健康を守るための一歩を一緒に踏みましょう。

当院での治療方針

糖尿病は生涯を通して、いかにうまく付き合っていくかがポイントとなる疾患です。 血糖値を下げることは治療の手段であって、目的ではありません。本来の治療の目的は、糖尿病診断ガイドラインでも定められているように、”糖尿病による合併症の発症を、増悪を防ぎ、けんこう健康人と変わらない生活の質(quality of life:QOL)を保ち、健康人に変わらない寿命を全うすることにある”であります。
糖尿病による合併症を起こさない、もしくは悪化させないためにはHbA1cを7%未満にすることが推奨されています。

ただし、体の状態や治療内容は一人ひとり異なるため、目標値もその人に合ったものを設定する必要があります。一般的に、高齢者や合併症が進行している方は目標数値を緩やかに、若年者や妊娠中の方はより厳しい数値に設定したほうがよいとされています。当院では、患者さんの背景や年齢、さらに合併症などに合わせた個別の目標を一緒に立てていきます。

当院の治療方針は”薬物療法”と”食事・栄養への介入”の2本柱で行っています。
薬物療法は歴史は60年以上と古く、『糖尿病診療ガイドライン2022』においても第一選択薬として推奨されているメトホルミン、最近の研究では、腎臓病や心臓病リスクを低下させる可能性があるSGLT2阻害剤や血糖値を下げるだけでなく、体重の減少の低下などの追加の利点があるGLP-1受容体作動薬などを使っていきます。
*強化型インスリン療法になった場合は、基幹病院などと連携して治療を行っていきます。

しかし、忙しい生活を送っている”働き盛りの人々”も多くいらっしゃると思いますので、定期的に通院をすることが難しい場合もあると思います。そんな時に、お役に立てるのが当院が行っていますオンライン診療です。オンライン診療後は自宅まで薬を郵送することも可能です。是非、当院のオンライン診療を利用して治療の継続をし、良いコンディションを維持してください。

イーヘルスクリニック新宿院では

イーヘルスクリニック新宿院の内科・糖尿病内科では、糖尿病の診療を行っています。丁寧な診察から、個々に必要な検査や治療をご提案いたします。医師はもちろん、看護師や管理栄養士、検査技師などもチームになって患者さんの健康を全力でサポートいたします。診療は土日祝日も対応しており、24時間365日診療予約がホームページから可能です。忙しい方でも受診しやすい体制を整えていますので、お困りごとがありましたらぜひお気軽にご相談ください。

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参考記事・文献

糖尿病治療ガイド

米国糖尿病学会が「ADA診療ガイドライン2023年版」を発表 注目すべき追加・変更点は?

Introduction and Methodology: Standards of Care in Diabetes—2023

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参考文献
1. Nakamura, T., et al. “Association between lean body mass index and incident type 2 diabetes in a Japanese population: A secondary analysis of a nationwide epidemiological survey of specific health checkups.” J Diabetes Investig. 2024. doi:10.1111/jdi.70102

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