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アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりするのを繰り返しながら長い間続く皮膚の病気のことです。
原因ははっきりと分かっていませんが、体質によるものと環境によるものが関係していると考えられています。体質には、生まれつきアレルギー反応が起きやすかったり、外の刺激から皮膚を守るバリア機能が弱い皮膚だったりすることがあります。環境は、ダニやホコリ、花粉、ペットの毛などの皮膚を刺激するようなもととなるものがあると、それを回避しない限り悪化するという悪循環に陥るといわれています。ただし、症状や原因、症状を悪くさせる原因は人によって異なることが特徴です。
時にアトピー性皮膚炎によって、十分に眠れなかったり、勉強や仕事に集中できなくなったりするなど日常生活に支障が出ることがあるため、適切な治療を受けることが大切です。
アトピー性皮膚炎になると以下のような症状が見られることがあります。また、おでこや目・口・耳のまわり、首、腋、手足の関節の内側などの部位に左右対称に症状が現れやすいとされています。
アトピー性皮膚炎は、時にかゆみなどによって眠れなくなったり、学業や仕事に集中できなくなったりするなど日常生活に支障が出ることがあるため、注意が必要です。アトピー性皮膚炎は、適切な治療を受け、継続することで治すことが期待できると考えられています。そのため、上記のような気になる症状がある場合、特に長期的に症状が続いている場合は我慢せずにアレルギー科などの受診を検討するようにしましょう。
アトピー性皮膚炎の治療の基本はスキンケア、薬物療法、環境を整えること(悪化の原因を取り除く)の3つです。治療を行うことで症状がなくなった状態、またはあっても軽く薬をあまり必要としない、日常生活に支障がない状態、急激に悪化することがほとんどなく、悪化しても継続しない状態を目指します。
アトピー性皮膚炎の患者さんは湿疹によって皮膚のバリア機能が低下しているため、効率よく治療効果を得るためにも皮膚の状態を整えるスキンケアが大切です。
具体的には入浴やシャワーで皮膚を清潔にし、せっけんは刺激の少ないものを使って優しく洗うようにすることを心がけるとよいでしょう。また、保湿剤は入浴後5分以内に塗ることが望ましいといわれています。これは皮膚が水分を保っている間に保湿剤を塗ることで、水分を逃さないようにするためです。もし、すぐに塗れなかった場合は、化粧水などで皮膚を湿らせてから保湿剤を塗るようにするとよいとされています。
アトピー性皮膚炎には根本的な治療法がないため、薬によって症状を和らげる治療法が基本となります。主に炎症を抑えるステロイド外用薬や、顔などの湿疹を改善するタクロリムス軟膏などが使われます。
ステロイド外用薬については副作用の心配をする方もいますが、効果と副作用のバランスを見ながら5段階に分けられた薬の強さから適切なものが選択されます。そのため、過度な心配をせず、気になることがあれば医師に相談するとよいでしょう。
近年、ステロイド軟膏や保湿剤以外にも新しい機序の軟膏が登場しています。2022年にはモイゼルト軟膏が新たに発売されました。この薬は従来のものとは異なる作用機序を持ち、安全性が高く、使用上の制約も少ないため、長期間使用できる抗炎症外用剤です。2021年9月にはアトピー性皮膚炎の効能効果として製造販売承認を取得しました。
モイゼルト軟膏は外用ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤と呼ばれる薬で、アトピー性皮膚炎の病態に関与するサイトカインやケモカインといった物質の産出を制御します。これにより、皮膚の炎症やかゆみを抑えてアトピー性皮膚炎を改善します。
この研究は、アトピー性皮膚炎の成人患者に対するディファミラスト軟膏1%の効果と安全性を検証する第3相無作為化二重盲検試験です。試験には18歳以上の患者が参加し、4週間にわたり1日2回、ディファミラスト軟膏1%またはプラセボを適用しました。
目的:
- ディファミラスト軟膏1%のアトピー性皮膚炎治療における有効性と安全性を評価すること。
方法:
- 日本の18歳以上の成人患者を対象に、ディファミラスト軟膏1%とプラセボを比較する無作為化二重盲検試験が行われました。
- 参加者はランダムにディファミラスト軟膏1%またはプラセボを1日2回、4週間使用しました。
結果:
- 4週間後、ディファミラスト軟膏1%を使用した患者のうち38.46%が症状の著しい改善を示しました。これは、プラセボ群の12.64%に比べて有意に高い割合です。
- 副作用は主に軽度から中等度であり、発生率も低かったです。
結論:
- ディファミラスト軟膏1%は成人のアトピー性皮膚炎治療において効果的かつ安全であることが示されました。
敏感な状態の皮膚に常に刺激があると、かゆみを感じてかいてしまいます。また、かいたことで皮膚がダメージを受けると、アレルゲンなどがそこから入りやすくなるため、アレルギーを悪化させる原因にもなるという悪循環に陥ることがあります。そのため、アトピー性皮膚炎が悪化する原因を突き止め、対策することも大切です。たとえば、以下のような点に注意するとよいでしょう。
唾液や汗、髪の毛、衣類との摩擦、シャンプーなどの洗い残し、皮膚をかく行為など日常的な刺激によってアトピー性皮膚炎が悪化することがあります。
そのため、唾液や汗は拭き取るか洗い流すようにし、髪は束ねる、ウールやごわごわした素材の服は避ける、シャンプー・リンス・せっけんなどはしっかり洗い流すといった点に注意しましょう。かかないに越したことはありませんが、かいても皮膚の刺激が最低限で済むよう、爪を切り、就寝時は長袖長ズボンなどを着用するとよいでしょう。
薬や化粧品、香料、シャンプー・リンス、金属、消毒液などアレルギーの原因物質に触れることで症状が悪化する場合があります。まずは疑わしいものに触らないようにして症状がどうなるか確認しましょう。場合によっては医療機関でパッチテストを受け、原因物質を特定することも必要です。
ダニやホコリ、花粉、ペットの毛など室内の環境が原因で症状が悪化することがあります。そのため、小まめに掃除機をかけたり、ホコリがたまっても掃除しやすい家具の置き方をしたり、ダニなどの温床になりづらい材質のソファやおもちゃを選びましょう。
また、寝具は干して日光に当て、表面に掃除機をかけます。さらに、カビを防ぐために小まめな換気も大切です。ただし、花粉の時期は窓を開けずに除湿器を使うのがよいでしょう 。
まれではありますが、食べ物がアトピー性皮膚炎に関係していることがあります。しかし、食物アレルギーが原因だとはっきりしていない場合、疑わしい食材を除去した食事を続けても効果が期待できないといいます。そのため、自己判断で対策せず、医療機関で検査を受けて、必要な場合は医師の指示のもとで食事内容を変えましょう。
アトピー性皮膚炎ではストレスなど精神的なことが深く関係しているといわれています。まず、ストレスは脳の自律神経や免疫などのはたらきを邪魔して、さらにかゆみを促すと考えられています。 また、反対にアトピー性皮膚炎によるかゆみや湿疹などがストレスの原因になって眠れなかったり、人に会いたくなくなったりすることもあります。さらに、薬や医療への不安から自己判断で治療をやめてしまうこともあるなど、アトピー性皮膚炎と心理状態は相互に関連し合っています。
そのため、ストレスを上手にコントロールすることが大切だとされています。気になることや心配なことがあれば、一人で悩まずに医師に相談するとよいでしょう。
アトピー性皮膚炎は、かゆみと湿疹を伴う皮膚炎が長期間続く病気です。根本的な原因は解明されていませんが、体質と環境が関係していると考えられています。
アトピー性皮膚炎は、適切な治療を受けることで症状を抑え、日常生活に支障のない状態を維持することが可能です。しかし、完治は難しい病気でもあります。
当院では、患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立て、
などを行っています。
また、アトピー性皮膚炎は、お子様だけでなく大人も発症する病気です。近年では、大人向けの治療法も進歩しています。
アトピー性皮膚炎でお悩みの方は、ぜひイーヘルスクリニック新宿院のアレルギー科にご相談ください。
参考記事
・アレルギー検査の費用はどれくらい? ~検査を受ける診療科や保険適用の有無について解説~
・遅延型アレルギー検査で調べられる項目とは? ~何科で受けられるのか、検査費用についても解説~
・花粉症の抗ヒスタミン薬の効果や特徴とは?~第一世代と第二世代の違いについてご紹介~
記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。