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2023.06.28
#内科

脂肪肝を改善する食事とは? ~7つの食事のポイントをご紹介~

脂肪肝とは、肝細胞(肝臓の大半を占める細胞)の30%以上に中性脂肪がたまった状態のことです。 脂肪肝の原因のほとんどは食べ過ぎとお酒の飲み過ぎとされており、改善するには食事や運動など生活習慣を見直すことが必要となります。この記事では、eHealth clinicでの脂肪肝を改善するための食事について解説します。

脂肪肝を改善する食事

脂肪肝を改善する食事は人によって異なります。そのため、自己判断せず、医師や管理栄養士の指示に従って進めるようにしましょう。以下では、脂肪肝の食事のポイントの一部をご紹介いたします。

ポイント(1)摂取エネルギー量を見直す

食事療法などによって体重を減らすことで、脂肪肝の改善につながることが分かっています。“NAFLD/NASH診療ガイドライン2020”によれば、脂肪肝の方が体重を5%減少させると、肝疾患によって低下しがちな生活の質(QOL)の改善が期待できるといわれています。さらに体重を7%以上減少させると、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の進行を軽減できるとされ、特に10%以上体重を減少させた場合には、肝臓の線維化の改善にも期待できるといわれています。
体重は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると増えます。また、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで中性脂肪も蓄えられてしまうため、脂肪肝を改善する食事の基本は摂取エネルギー量を見直すことです。

1日の摂取エネルギー量の目安

  • 1日の摂取エネルギー量の目安:標準体重(身長(m)×身長(m)×22)×25kcal

※ここでかけるエネルギー量は患者さんによって異なります。

  • 標準体重:身長(m)×身長(m)×22

例) 160cmの場合は56kg(計算式:1.6m×1.6m×22)

ポイント(2)糖質を控える

糖質は肝臓で中性脂肪に変えられるため、糖質(ごはん、パン、麺類、果物など)を控えるだけでも脂肪肝が改善することがあります。特に、ショ糖(ジュースや菓子などに含まれる)は、米などに含まれる糖質よりも中性脂肪が肝臓にたまりやすいため注意が必要です。

ポイント(3)脂質を控える

脂質を取り過ぎると中性脂肪が増えて脂肪肝につながるため、脂質も控えるようにしましょうましょう。特に、リノール酸を多く含む油(紅花油、コーン油など)、コレステロールを多く含む卵、トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングを使った菓子や菓子パンなどは避けるとよいでしょう。ただし、脂質を極端に制限すると必須脂肪酸(体内で合成されないため、食事から取る必要がある脂質)の欠乏につながるため、脂質の種類を選んで取り入れることが必要です。

脂質は不飽和脂肪酸を摂取する

油脂を構成する脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸の取り過ぎはコレステロール値の上昇につながり、循環器疾患の発症リスクも高まるとされています。さらに、糖質を控えることに加え、不飽和脂肪酸を摂取すると脂肪肝が改善されるというデータもあります。脂質を取る場合は飽和脂肪酸ではなく不飽和脂肪酸を摂取するとよいでしょう。

【不飽和脂肪酸が多い食材】

  • サラダ油、魚油といった液体の油

  • など

なお、料理には植物性の油を使うとよいでしょう。1日に大さじ1杯程度までが目安です。また、青魚に含まれる一部の不飽和脂肪酸には、中性脂肪を下げるはたらきがあるとされているため、肉の代わりに魚を取るなどの工夫をしましょう。ただし、肉を一切食べてはいけないということではありません。肉を食べるときは脂身を取り除いたり赤身肉を選んだりして、牛乳も低脂肪乳にするとよいでしょう。

【飽和脂肪酸が多い食材】

  • 肉の脂身
  • ラード
  • バター
  • 生クリーム
  • 乳脂肪
  • インスタントラーメンなどの加工食品
    など

ポイント(4)たんぱく質を適度に摂取する

たんぱく質は筋肉などの体を作る栄養素であるため、過度な制限は代謝が低下し太りやすくなることがあります。また、脂肪が排泄しづらくなって肝臓にたまってしまうことが分かっています。特にダイエットなどをしている方の場合は、タンパク質が不足しがちなので注意しましょう。一方で、取り過ぎると摂取エネルギー量が増加して脂肪の産生も増加することもあるため、適切な量を摂取することが大切です。
適切なタンパク質量は人によって異なるため、詳細は医師や管理栄養士と相談しながら決めましょう。

▼栄養相談について詳しくはこちら▼

ポイント(5)食べる順番に注意する

食物繊維が多い食べ物は満腹感を得られやすいといわれています。そのため、エネルギーの取り過ぎを予防することにつながり、積極的に取り入れることがすすめられています。食物繊維の多い食材には、野菜や海藻類、きのこ類が挙げられます。

ポイント(6)食べる順番に注意する

食事をした後に血糖値が急激に上昇すると、インスリン(血糖値を下げるホルモン)がたくさん分泌されます。インスリンは余分な糖を中性脂肪としてためてしまうため、脂肪肝の予防・改善のためには血糖値を急激に上げないようにする必要があります。

食べる順番に注意することで、血糖値の上昇がゆるやかになるとされており、野菜、肉・魚、ごはん(炭水化物)の順番で、よくかんで食べるとよいといわれています。

ポイント(7)お酒を控える

アルコールからも脂肪が作られます。日本酒換算で1日5合以上を1週間飲み続けると、アルコール性脂肪肝になることがあり、アルコール性脂肪肝になった場合は禁酒が原則となります。禁酒すると1か月ほどで血液検査の数値が正常化して肝臓のはたらきも改善し、早ければ数か月で健康な肝臓に戻るとされています。

1日のアルコールの摂取目安は、ビールでは中瓶1本、日本酒では1合、ワインでは1~2杯、ウイスキーではダブル、酎ハイではレギュラー缶1本です。細かなポイントは医師や管理栄養士の指示に従いましょう。

食事を見直して脂肪肝の改善を

脂肪肝の改善には食事の見直しが大事です。ただし、脂肪肝以外にも体の不調を抱えている場合は、食事療法の内容が異なる場合があります。そのため、具体的な食事内容は医師や管理栄養士の指示に従うようにしましょう。

eHealth clinicの内科では脂肪肝の診療を行っています。具体的な脂肪肝の食事については、医師や管理栄養士が患者さんの生活スタイルや普段の食事などを丁寧にヒアリングしたうえで、本人が無理なく継続できる食事を提案します。ご不安なことがあればお気軽にご相談ください。

「脂肪肝の薬」について詳しく見る

「SDLT2阻害薬」について詳細はこちら

 

脂肪肝の治療に新たな選択肢として注目されているSGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、元々糖尿病の治療に用いられる薬ですが、最近では心臓や腎臓の病気にも効果があることがわかり、糖尿病や糖尿病性腎症の治療に広く使われるようになっています。また、肥満や糖尿病が多い脂肪肝の患者にとっても、SGLT2阻害薬は肝臓を保護するだけでなく、体重減少や血糖降下の効果もあるため、重要な選択肢となる可能性があります(現時点では保険適応外になります)。
SGLT2阻害薬による肝臓の保護効果に関しては、肝脂肪量の減少やAST、ALT値の低下などが報告されています。

また、SGLT2阻害薬に関する脂肪肝に対する効果の研究の一例として、エンパグリフロジン(ジャディアンス)というSGLT2阻害薬の試験結果があります。インドで行われたE-LIFT試験では、2型糖尿病で脂肪肝を持つ患者を対象にした比較研究で、他の標準治療と比べて肝脂肪量が有意に減少したと報告されています。

エンパグリフロジン(ジャディアンス)を服用したグループでは、対照グループと比較して肝臓の脂肪量が減少したことが確認されました。

参考文献:Sci Rep. 2018 Feb 5;8(1):2362.

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「脂肪肝と肥満の関係とは?~原因・予防・治療法について解説~」について詳しく見る

イーヘルスクリニック新宿院の「肥満外来(医療ダイエット外来)」について

 

参考文献

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020

 

記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。