クレアチニン値が低いとどうなるの?健康リスクと改善方法、注意点を解説

健康診断で「クレアチニン」の数値が何を意味するのか理解していますか? 実は、あなたの腎臓の健康状態を映し出す重要な指標です。 腎臓は、老廃物を除去し、生命維持に欠かせない役割を果たしています。 腎臓は自覚症状が現れにくいため、定期的な検査が腎機能の状態を把握するために重要です。
この記事では、クレアチニン値の年齢・性別による基準値の違い、高値・低値の場合の原因と症状などを解説します。腎機能低下の予防策も紹介しているので、ご自身の健康管理にお役立てください。
以下の記事ではクレアチニンとeGFRの違いや上昇する原因などを解説しています。
>>クレアチニンとは?eGFRとの違いや上昇原因、正常値を保つ対策を解説
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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院や足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士
クレアチニン値を理解するための基礎知識として以下を解説します。
クレアチニンとは、筋肉でエネルギーを作り出す際に使われるクレアチンという物質が分解されてできる老廃物です。クレアチンは、私たちが体を動かすためのエネルギー源となる重要な役割を担っています。クレアチンは、クレアチニンへと変化し、血液によって腎臓へと運ばれ、老廃物として尿の中に排出されます。
腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として体の外に出す働きをしています。腎臓が正常に機能していることで、私たちの体は健康に保たれています。
健康な腎臓は、血液中のクレアチニンを効率よくろ過し、尿として排出します。腎臓の働きが低下すると、クレアチニンをうまく排出できなくなり、血液中のクレアチニン値が高くなってしまいます。クレアチニン値の上昇は、腎臓の機能低下を知らせる重要なサインなのです。腎臓の働きが悪くなると、血液中の老廃物が増加し、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
クレアチニン値を調べるには、血液検査と尿検査の2つの方法があります。血液検査では、腕の静脈から採血して血清クレアチニン濃度を測定します。健康診断などで行われる一般的な検査です。尿検査では、24時間分の尿をすべて採取して尿中のクレアチニン量を測定します。血液検査と尿検査を組み合わせることで、より正確に腎機能を評価できます。
検査費用は検査機関によって異なりますが、健康保険が適用されます。
eGFR(推算糸球体濾過率)とは、腎臓のろ過能力を数値で表したものです。糸球体とは、腎臓にある小さなフィルターのようなもので、血液中の老廃物をろ過する役割を担っています。eGFRは、クレアチニン値、年齢、性別から計算され、腎機能を評価するうえで重要な指標となります。
eGFRの値が低いほど腎機能が低下していると考えられ、60 mL/分/1.73㎡未満が3か月以上続くと、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。
年齢・性別によるクレアチニン基準値と変動する要因について、以下の流れで解説します。
クレアチニンは、筋肉でエネルギーを作り出す過程で生まれる老廃物です。腎臓でろ過され、尿として体の外に排出されます。腎臓の働きが弱くなると、クレアチニンがうまく排出されず、血液中に溜まってしまうため、クレアチニン値が高くなります。
成長期の子どもの腎臓は、大人と比べるとまだ発達段階です。そのため、クレアチニンを排出する力も大人ほど強くありません。子どものクレアチニン値は大人の基準値よりも低く、年齢が上がるにつれて徐々に高くなっていくのが一般的です。
腎臓も私たちと同じように、年齢を重ねることで少しずつ機能が衰えていきます。35〜39歳では平均86.40 ml/min/1.73m²ですが、70〜74歳では平均67.79 ml/min/1.73m²まで低下します。1年に約0.506 ml/min/1.73m²ずつ低下していく計算になります。
高齢者の方でクレアチニン値が低い場合でも、腎臓の機能低下が隠れている可能性があります。例えば、筋肉量が減少することでクレアチニン値が低くなる一方で、腎臓が十分に老廃物を処理できていない場合があります。
男性と女性では、筋肉量に違いがあります。一般的に、男性は女性よりも筋肉量が多いため、クレアチニン値も高くなる傾向があります。厚生労働省の調査では、男性の基準値は0.7~1.2 mg/dL、女性の基準値は0.5~1.0 mg/dLとされています。文献によっては0.65~1.07mg/dL(男性)、0.46~0.79mg/dL(女性)のように異なる場合もあります。クレアチニン値の測定方法や、対象となる集団の違いなどが影響していると考えられます。
クレアチニン値が高い場合、腎臓の機能が低下している可能性があります。腎臓の働きが悪くなると、血液中の老廃物をうまく排出できなくなり、体の中に毒素が溜まってしまいます。高クレアチニン値の原因としては、慢性腎臓病や急性腎障害、尿路閉塞などが挙げられます。激しい運動後や脱水症状、特定の薬の服用によっても一時的にクレアチニン値が上昇することがあります。
腎臓病の初期段階では自覚症状がない場合も多いですが、進行するとむくみや倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が現れることがあります。さらに、貧血やめまい、息切れなども起こることがあります。
クレアチニン値が低い場合は、筋肉量が減っていることが主な原因として考えられます。高齢者や病気で寝たきりになっている人、栄養状態が悪い人は筋肉量が減りやすいため、クレアチニン値が低くなる傾向があります。
妊娠初期の女性もクレアチニン値が低くなることがあります。胎児の成長のために血液量が増え、クレアチニンが薄まるためです。クレアチニン値が極端に低い場合は、筋肉の病気や栄養障害の可能性も考えられます。自己判断せずに医師に相談することが大切です。
腎機能低下の予防と対策のために知っておくべきことについて、以下の2点を解説します。
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが徐々に低下していく病気です。CKDは自覚症状が現れにくい病気であるため、発見されたときには病気がかなり進行しているケースも少なくありません。進行すると、体内に老廃物が蓄積し、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。
CKDの治療は、進行度合い(ステージ)や原因によって異なります。初期段階では、生活習慣の改善指導を中心とした保存療法を行います。減塩や低タンパク質の食事療法、適度な運動、禁煙指導などを行います。高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある方は、より厳しいコントロールが必要です。
CKDが進行すると、薬物療法が必要になる場合もあります。例えば、腎臓の負担を軽減する薬や、合併症を予防・治療するための薬などが用いられます。腎機能が著しく低下したCKDの末期段階では、人工透析や腎移植などの腎代替療法が必要となる場合もあります。人工透析は、腎臓の働きを代替する治療法で、血液透析と腹膜透析があります。腎移植は、健康な腎臓を移植する治療法です。
腎臓病は、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性があるため、専門的な知識と経験を持つ医師による適切な診断と治療が重要です。腎臓病の専門医を受診することで、より専門性の高い検査や治療を受けることができます。腎臓病の専門医を探すには、以下の方法があります。
インターネット上には、病院や医師の情報サイトも多数存在します。サイトを活用することで、専門医の経歴や専門分野、患者さんからの口コミなどを確認することも可能です。どの方法で探すにしても、ご自身の症状や希望に合った医師を選ぶことが大切です。
クレアチニン値は年齢や性別、筋肉量によって変化し、高すぎても低すぎても注意が必要です。腎臓の機能低下は初期には自覚症状が出にくいので、健康診断でクレアチニン値やeGFRをチェックし、少しでも異常があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
日頃からバランスの取れた食事や適度な運動、十分な水分摂取を心がけ、禁煙を意識してください。腎臓に関するご不明点がある場合は、医療機関でのご相談をおすすめします。
健康診断でクレアチンが高い、尿蛋白や血尿が陽性の場合は、当院の腎臓内科を受診してください。基礎疾患や腎機能のリスク因子を検査し、最適な治療プランを提案します。治療オプションは理解しやすく説明し、患者様の了承を得た上で治療方針を共に決定します。当クリニックには管理栄養士もおり、食事に関する専門的なアドバイスも受けられます。健康な未来への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。
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