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2023.04.09
#糖尿病内科(内分泌・代謝外来) #対象疾患

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ®」に対する期待

糖尿病とは、血糖値が長期間高い状態が続く病気で、日本では成人の6人に1人が疑われています。血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足(インスリン分泌不十分)したり、はたらきが低下したりする(インスリン抵抗性)ことが原因で、進行すると目や腎臓、神経などに関わる病気につながる可能性があります。

2型糖尿病の原因としては、

①インスリンが不足(インスリン分泌不十分)
②インスリンの働きが低下(インスリン抵抗性)

などがあります。

よって、2型糖尿病の治療は、インスリンが不足する「インスリン分泌不十分」や、はたらきが低下する「インスリン抵抗性」の原因を改善することが基本です。

2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。
体内にはインスリン分泌を促進する「GIP」と「GLP-1」という生体内ホルモンがあります。これらに作用するGLP-1受容体作動薬は、日本では2010年から販売され、2型糖尿病の治療に使用されています。

しかし、これまでGLP-1受容体作動薬しかなかったため、GIPに作用する薬剤はありませんでした。マンジャロ®は、世界初のGIP/GLP-1受容体作動薬であり、特にGIPに対する作用が強いとされています。両方の受容体を刺激することで、薬剤としての効果が強まると考えられています。

「GIP」と「GLP-1」の作用

マンジャロ®の効果

「SURPASS J-mono試験」は、日本人2型糖尿病患者636例を対象として行われ、研究により、マンジャロ®(チルゼパチド)はいままでのGLP-1受容体作動薬デュラグルチドに比べて、血糖値を有意に低下させ、また、体重減少効果もあることが明らかになりました。特に、肥満型の2型糖尿病患者での効果が期待されます。

マンジャロ®は、世界初の「GIP」と「GLP-1」の両方の受容体に対する作動薬であり、週1回の投与で済むことから、患者の負担を軽減することができます。また、糖尿病治療薬としてだけでなく、抗肥満薬としても注目される可能性があるため、今後の期待が高まっています。

参考文献:Lancet Diabetes Endocrinol. 2022 Sep;10(9):623-633
参考URL:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t353/202302/578408.html

 

現在までに分かっているマンジャロの特徴

  • 世界で初めて「GIP」と「GLP-1」という2つの受容体に対して作用する薬である
  • 血糖降下と体重減少の効果が従来の薬よりも高い可能性がある
  • 週に1回の投与で済む
  • そして今後、糖尿病治療薬としてだけでなく、抗肥満薬としても注目されることがある

Q&A

  • マンジャロ®(チルゼパチド)は、抗肥満薬として期待されているのでしょうか?

米国、ロシア、インド、日本、中国、台湾など9カ国による国際共同試験では、BMIが30以上またはBMIが27以上で糖尿病以外の心血管リスク因子がある成人に対して、チルゼパチド5mg、10mg、15mg、プラセボを72週間投与したところ、最大用量(15mg/週1回)で20.9%の体重減少が認められ、肥満症の外科手術に匹敵する成績が出ました。したがって、今後は抗肥満薬としても注目を集めることになる可能性があります。

  • マンジャロ®(チルゼパチド)は、抗肥満薬として認可されているのでしょうか?

この薬剤は、2022年5月に米国食品医薬品局(FDA)が2型糖尿病を適応症として承認していますが、現時点では抗肥満薬としての認可はされていません。ただし、今回の結果により、抗肥満薬としても期待されることとなります。

  • マンジャロ®(チルゼパチド)は、糖尿病治療でどのような位置づけにあるのでしょうか?

2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。マンジャロは、海外で「2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」を効能・効果として承認されているため、通常のGLP-1受容体作動薬よりもより早期に使用が見込まれます。

  • マンジャロ®(チルゼパチド)の用法・用量

通常、成人には週1回5mgを皮下注射して、維持用量として使用します。ただし、初めて使用する場合は週1回2.5mgから始めて、4週間後に週1回5mgに増量します。

  • マンジャロ®(チルゼパチド)の副作用

5%以上の患者さんで、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などの消化器症状が報告されています。重大な副作用としては、低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(いずれも頻度不明)が挙げられます。特に注意が必要です。

  • 保険適応されている抗肥満薬はありますか?

2023年3月27日に、肥満症を対象疾患とした「ウゴービ®皮下注(セマグルチド)」が厚生労働省より正式に承認されました。ウゴービ®皮下注の適応は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、かつBMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、またはBMIが35kg/m2以上の患者さんに限られます。ただし、薬価や発売日はまだ決まっていません。

当院ではウゴービ®を処方するにあたっては、保険診療上の対象になるかを適切に判断し、注射の使い方や副作用のことなどを説明させていただいた上での適正使用をさせていただきます。処方可能になりましたらまたお知らせいたします。
ウゴービ®皮下注の適応は”高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。”に限られます。

※肥満に関連した健康障害:

  1. 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患
  6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
  8. 月経異常・女性不妊
  9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  10. 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
  11. 肥満関連腎臓病

イーヘルスクリニック新宿院での治療について

当院の治療方針について、糖尿病は生涯を通して、どのように上手に管理するかが重要です。血糖値を下げることは、治療の手段であり目的ではありません。治療の本来の目的は、糖尿病による合併症の発症を防止し、患者さんが健康で生活の質(QOL)が向上し、健康な人と同じ寿命を過ごせるようにすることです。

糖尿病による合併症を予防するためには、HbA1cを7%未満にすることが推奨されています。ただし、体の状態や治療内容は一人ひとり異なるため、目標値は患者さんの個別の状況に合わせて設定されます。一般的には、高齢者や合併症が進行している方は目標数値を緩やかに、若年者や妊娠中の方はより厳しい数値に設定されます。

当院の治療方針は”薬物療法”と”食事・栄養への介入”の2本柱で行っています。

薬物療法は歴史は60年以上と古く、『糖尿病診療ガイドライン2019』においても第一選択薬として推奨されているメトホルミン、最近の研究では、腎臓病や心臓病リスクを低下させる可能性があるSGLT2阻害剤や血糖値を下げるだけでなく、体重の減少の低下などの追加の利点があるGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬などを使っていきます。

*強化型インスリン療法になった場合は、基幹病院などと連携して治療を行っていきます。

 

イーヘルスクリニック新宿院の内科・糖尿病内科では、糖尿病の診療を行っています。医師をはじめ、看護師や管理栄養士、検査技師などがチームを組んで患者さんの健康を全力でサポートします。診療は土日祝日も対応しており、24時間365日診療予約がネットから可能です。忙しい方でも受診しやすい体制を整えていますので、お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。

▼参考記事

糖尿病とは~予防から治療法まで~

糖尿病の診断基準とは?

糖尿病の合併症

糖尿病の食事療法

糖尿病の運動療法