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コラム
2025.08.10

フィネレノンの腎保護効果、アジア人で確認。CKD進行抑制と蛋白尿改善の最新データ

【最新研究】アジア人の腎臓病進行を抑制。糖尿病性腎症の治療薬「フィネレノン」の新データが示す希望

慢性腎臓病(CKD)は、自覚症状がないまま静かに進行し、最終的には透析や腎移植が必要となることもある深刻な病気です。特に、日本のCKD患者の最大の原因である糖尿病との合併は、その進行リスクを著しく高めます。

しかし近年、このCKDの進行を積極的に抑制する「腎保護効果」を持つ薬剤が次々と登場し、治療は新たな時代を迎えています。現在、その中心となるのは以下の4種類の薬剤です。

  • ACE阻害薬(例:イミダプリル)
  • ARB(例:ロサルタン)
  • SGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン)
  • MR拮抗薬(例:フィネレノン

今回はこの中から、非ステロイド性MR拮抗薬である「フィネレノン」について、日本人を含むアジア人における有効性と安全性を明確に示した、最新の解析結果をご紹介します。

糖尿病患者の腎臓を守る「フィネレノン」とは?

フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD患者さんを対象として日本でも承認されている治療薬です。その承認の根拠となったのが、世界で1万3,000人以上が参加した2つの大規模臨床試験(FIGARO-DKD、FIDELIO-DKD)でした。

そして「FIDELITY」とは、これら2つの試験データを統合し、より高い精度で有効性や安全性を検証した解析です。今回、このFIDELITYのデータの中から、日本人を含むアジア人集団(10ヵ国・地域、2,858人)のみを対象とした、新たなサブグループ解析の結果が発表されました。

アジア人における3つの明確な有効性

このアジア人を対象とした解析では、フィネレノンの腎臓保護効果が3つの主要な指標で明確に示されました。

① 腎機能低下のスピードを緩やかに(eGFRスロープの改善)

腎臓の働きを示すeGFR値が、年々どれくらいのペースで低下するかを示したのが「eGFRスロープ」です。この低下ペースが緩やかであるほど、腎臓が長く守られていることを意味します。

結果、フィネレノンを服用したグループは、偽薬(プラセボ)のグループと比較して、eGFRの年間低下量が有意に抑制されました(群間差1.08mL/分/1.73m²)。これは、フィネレノンが腎機能の悪化速度を明確に遅らせることを示しています。

② 腎臓からの“タンパク漏れ”を大幅に減少(UACRの低下)

腎臓が傷つくと、尿中にアルブミンというタンパク質が漏れ出てきます。この「尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)」は、腎障害の重要なマーカーです。

結果、フィネレノンを服用したグループでは、服用開始から4ヵ月で尿中アルブミンが平均34%も大幅に減少しました。この効果は、他の最新の糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬)を併用しているかどうかに関わらず、一貫して認められました。

③ 早期の腎臓ダメージを“正常”へと巻き戻す効果

さらに、今回の解析で特に注目されたのが、尿中アルブミンの状態が改善する「退縮」の割合です。

「微量アルブミン尿」(軽度のタンパク漏れ)の状態にあった患者さんのうち、「正常アルブミン尿」の状態にまで回復した人の割合は、フィネレノン群で39.5%だったのに対し、プラセボ群ではわずか14.8%でした。フィネレノンを服用することで、正常な状態に戻る可能性が約3倍も高まったのです(ハザード比 3.04)。

この研究がもたらす意味

これまで、大規模な臨床試験は欧米人が中心となることが多く、アジア人における有効性が常に明確ではありませんでした。今回の解析は、フィネレノンが人種を問わず、日本人を含むアジア人においても、確かな腎臓保護効果を発揮することを強く裏付けるものです。

まとめ:CKD治療の新たな希望

CKD、特に糖尿病性腎症の治療は、もはや悪化をただ待つのではなく、積極的に進行を抑制し、さらには早期のダメージを回復させることを目指す時代に入りました。フィネレノンは、そのための非常に強力な治療選択肢の一つです。

現在、糖尿病の治療を受けている方は、定期的にご自身の腎臓の状態(eGFRや尿中アルブミン)を把握し、腎臓を守るための治療について、主治医とよく相談することが重要です。

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https://dm-rg.net/news/1dd4e99f-13fb-43d4-8dec-10c07527620b

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この記事の運営者:イーヘルスクリニック新宿院

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