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2022.08.08
#腎臓内科 #対象疾患

フィネレノンで慢性腎臓病治療|正しい理解と使用における注意点を解説

慢性腎臓病は、多くの方が抱える深刻な健康問題です。特に、糖尿病を背景に持つ患者さんにとって、生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。そんな中、フィネレノンという新しい治療薬が、慢性腎臓病の進行を抑える新たな希望として注目されています。フィネレノンは、2型糖尿病を合併した慢性腎臓病患者において、腎機能の低下や心血管系の合併症を抑制する効果が期待される非ステロイドのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬です。この記事では、フィネレノンがどのようにして効果を発揮するのか、メカニズムと使用上の注意点を詳しく解説しています。記事を読むことで、慢性腎臓病の管理に役立つ情報を得られ、より健康な生活への一歩を踏み出す手助けになり、フィネレノンの可能性について理解を深められます。

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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医抗加齢医学会専門医日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士

フィネレノンとは慢性腎臓病の治療に使われる薬

フィネレノンは、2型糖尿病を合併した慢性腎臓病の進行を抑える治療薬です。腎臓や心血管系に関与するミネラルコルチコイド受容体(MR)をブロックすることで、炎症や線維化を抑制し、腎臓および心臓の機能低下を防ぐ効果が期待されています。薬にはケレンディア錠10mg、20mgがあります。

フィネレノンの特徴

フィネレノンはMR拮抗薬の中でも非ステロイドMR拮抗薬という種類に分類され、以前の治療薬と比較して副作用が少ないことが特徴です。腎臓機能の低下抑制において有効性が確認されており、これまでのMR拮抗薬(例:スピロノラクトン、エプレレノン)では得られなかった効果が期待できます。

フィネレノンが処方される病気

フィネレノンが処方される病気は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病です。慢性腎臓病とは、3か月以上にわたって慢性に経過する(長く続く)すべての腎臓病のことです。腎臓病は、腎臓のはたらきが悪くなる病気のことで、さまざまな種類があります。主に加齢や生活習慣が関連しているとされますが、そのうちの1つに糖尿病が挙げられます。糖尿病による高血糖の状態が長く続くと、腎臓が傷んで、慢性腎臓病を発症することがあります。これを“糖尿病腎症”と呼びます。

また腎臓病が進行し、腎臓の機能が低下すると腎不全という状態になり、さらに悪化すると末期腎不全に至ることがあります。末期腎不全になると人工透析や移植などの治療が必要となりますが、フィネレノン(ケレンディア錠)は末期腎不全や透析治療中の方には原則として処方されません。

フィネレノンの使用方法

服用量は腎機能の程度によって異なりますが、1日1回10~20mgを服用することが一般的です。10mgから始めた場合は、腎機能の程度をみながら20mgに増量する場合があります。

フィネレノンの使用に注意が必要な人

フィネレノンの使用に注意が必要な人は以下のとおりです。

  • 血清カリウム値が5.0mEq/L超5.5mEq/L以下の人
  • 高カリウム血症の発現リスクが高い人
  • 重度の腎機能障害患者
  • 中等度以上の肝機能障害患者
  • 妊娠可能な女性
  • 妊婦または妊娠している可能性のある人
  • 小児 など

フィネレノンの使用ができない人

フィネレノンの使用ができない人は以下のとおりです。

  • フィネレノンの成分に対し過敏症の既往歴がある人
  • 併用禁忌の薬を使っている人
  • 血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えている人
  • 重度の肝機能障害がある人
  • アジソン病にかかっている人

フィネレノンと飲み合わせの悪い薬や食品はある?

フィネレノンと飲み合わせの悪い薬や食品はあります。併用禁忌の薬や、注意が必要な食品を解説しているのでチェックしましょう。

以下の薬は併用禁忌とされています。

  • イトラコナゾール(イトリゾール)
  • リトナビル含有製剤(ノービア、カレトラ)
  • アタザナビル(レイアタッツ)ダルナビル(プリジスタ、プリジスタナイーブ)
  • ホスアンプレナビル(レクシヴァ)
  • コビシスタット含有製剤(ゲンボイヤ、 スタリビルド、シムツーザ、プレジコビックス)
  • クラリスロマイシン(クラリス、 クラリシッド)

上記の薬と併用すると、フィネレノンの血中濃度が著しく高まる可能性があります。

また、以下の薬は併用注意とされています。

  • 中程度のCYP3A阻害剤(エリスロマイシン、ベラパミル、フルコナゾールなど)
  • 弱いCYP3A阻害剤(アミオダロン、フルボキサミンなど)

フィネレノンの血中濃度が高まる可能性があります。

  • 中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、エファビレンツ、ミトタン)

フィネレノンの効果が弱まる可能性があります。

  • スピロノラクトン
  • トリアムテレン
  • カンレノ酸カリウム
  • エプレレノン
  • エサキセレノン
  • カリウム製剤
  • スルファメトキサゾール・トリメトプリム

血中のカリウム値上昇(高カリウム血症)のリスクが高まる可能性があります。

  • リチウム製剤(炭酸リチウム)
    リチウム中毒を起こす可能性があります。
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(インドメタシンなど)
    腎機能障害患者の場合、高カリウム血症(血中のカリウム濃度が高い状態)が生じる可能性があります。

食品

以下の成分、食品は併用に注意が必要とされています。

  • セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)
    健康食品に含まれることがあるハーブの一種で、併用するとフィネレノンの効果が弱まる可能性があります。
  • グレープフルーツ含有食品
    フィネレノンの血中濃度が高まる可能性があります。

フィネレノンの使用中に注意したい症状

フィネレノンの使用中に注意したい症状として、重大な症状と他にも起きやすい症状を解説します。

重大な症状

高カリウム血症は、8.8%の患者さんに生じる可能性があります。軽度の場合は無症状のことが多いですが、進行すると筋力低下や不整脈を引き起こすリスクがあります。特に腎機能が低下している患者さんや、カリウムを上昇させる他の薬剤を併用している患者さんは注意が必要です。

その他の症状

1%以上頻度で低血圧、1%未満の頻度で低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低い状態)などが生じることがあります。

低血圧になると、めまい、立ちくらみなどの症状、低ナトリウム血症になると、嗜眠(意識障害)や錯乱(情報を正常に処理できない)などの症状が現れることがあります。

気になる症状がある場合は、受診を検討することをおすすめします。また、ここにある症状がすべてではありません。詳細な効果や副作用については、医師や薬剤師のほか、薬の添付文書を確認しましょう。

当院では、患者様一人ひとりと丁寧に向き合い、サポートをさせていただきます。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
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