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2023.01.11
#腎臓内科 #対象疾患

慢性腎臓病(CKD)を予防できる最新の食生活習慣 ~減塩と植物性タンパク質の摂取について~

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)とは、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎症(まんせいしきゅうたいじんえん)、腎硬化症などにより、腎機能が悪化した状態の総称であり、全世界で増加の傾向にあります。患者数は8人に1人、世界では実に6億人以上と推計されており、日本でも患者数が2,000万人以上に及ぶ新たな国民病として注目されています。

慢性腎臓病の予防は、特に以下の二つの理由から重要とされています。

一つ目の理由は、慢性腎臓病が末期腎不全の危険因子であるためです。末期腎不全とは、腎機能が正常の5%以下で、透析が必要な状態を指します。二つ目の理由は、慢性腎臓病に罹患していると、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などさまざまな恐ろしい疾患にかかりやすくなるからです。腎機能の改善に対しては、現在の医学では有効な手段がなく、予防するしか方法はありません。予防の方法にはいくつかありますが、やはり重要性が高いのが食生活の習慣です。

ここでは腎臓専門医でもある著者が、実臨床においても腎臓病の患者さんに推奨している最新の食生活習慣を、皆様に共有していきます。

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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医抗加齢医学会専門医日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士

減塩と植物性タンパク質の摂取について

慢性腎臓病の予防には、減塩や植物性タンパク質の摂取が効果的です。それぞれのポイントを解説します。

減塩

1つ目は減塩に関すること。

食塩の過剰摂取は、慢性腎臓病だけではなく、高血圧、狭心症/心筋梗塞、脳卒中など多くの疾患リスクと関係することがわかっています。

塩の摂取量・使用量が急激に増えた背景には、製塩の普及や、塩が食物の保存に役立つこと等が挙げられます。特に今から約50年前ごろが食塩摂取量のピークで、日本の北部では1日30g近く、日本南部ではこれより少ないものの15g程度と、大変多かったことが報告されているのです。その後は、冷蔵庫の普及や食生活の欧米化に伴って日本人の食塩摂取量は減少傾向にありますが、まだまだ他国に比べて多い状況が今日まで続いています。

そこで、簡単にできる減塩の方法を2つ紹介します。

① 外食/レトルトのラーメンとカレーライスを減らす

日本人の食塩摂取の原因の2大食品が外食/加工食品由来のラーメンとカレーライスであることがわかっています。まずは外食およびレトルトのラーメンとカレーライスを食べる機会を減らすだけで、減塩に直結します。

② ソルトシェーカー(塩を入れている入れ物)の穴の数を少なくする、もしくは食卓に置かない

私達の味覚は意外と適当なものです。アメリカで行われた研究によると、我々には食べ物の味には一切関係なくソルトシェーカーを一定回数振ってしまうクセがあることがわかっています。つまり、一回で出てくる塩の量を、穴の面積を小さくすることで物理的に減らせば減塩につながります。それができない場合は、思い切って食卓にあるソルトシェーカーや醤油瓶を取り除き、強制的に使えないようにするのも有効です。

減塩について、以下の記事でも解説しているので、合わせて確認してみてください。
慢性腎臓病(CKD)は減塩が重要〜塩分摂取の関係と減塩方法~

植物性タンパク質

2つ目は植物性タンパク質の摂取に関連する方法です。

近年、健康維持・エイジングケアに効果があるとして、植物性タンパク質の摂取が注目されています。今まで、腎疾患の予防のためにはタンパク質の摂取制限が重要であると言われてきました。しかし、タンパク質の摂取制限は腎機能予防に対する効果が乏しい一方で、サルコペニアやフレイルなどのリスクが増加する危険性があります。最新では、タンパク質、特に植物性タンパク質の摂取は、腎疾患に対して寧ろ予防的効果を持つ可能性があるとの研究も増えてきています。

具体的な研究を紹介します。

研究対象は約1,300人(平均年齢は75歳で、平均の腎機能は65.6 mL/min/1.73 m2 )の女性。彼らに対して、食事中の植物性タンパク質の摂取量と腎機能の低下との関係を調査したものです。結果は、植物性タンパク質の摂取量が10g多くなる毎に、eGFR(腎機能の指標)低下速度が年間0.12mL/分/1.73m2 遅くなることが示されました。つまり、eGFRの低下率は10年間で18%改善する計算になります。

この研究では、植物性タンパク質の摂取量が多ければ多いほど腎機能は悪化しにくいことがわかりました。

腎機能の低下とタンパク質摂取量の関係は以下の記事で詳しく書いています。合わせて確認してみてください。
腎機能低下とタンパク質摂取量の関係~高齢者ではタンパク質の摂取量と腎機能低下は関係ない?~

まとめ

慢性腎臓病予防のための情報は、さまざまなものが巷にあふれかえっています。まずはここに挙げた、2つのシンプルな方法から始めてはいかがでしょうか? ただし、腎機能の低下程度によって、食事療法の方法を選択し、変えていく必要もあります。特に高度の腎機能低下が認められている場合は、まず主治医の先生に相談することをオススメします。

以下の記事では、慢性腎臓病の症状や治療法を解説しています。万が一、罹患してしまったときに気をつけるべきポイントも紹介しているので、チェックしておきましょう。
>>慢性腎臓病とは?症状や罹患時に気をつけたいポイントを解説

参考文献

・Nature. 1983 Jan 27;301(5898):331-2.
・Hypertens Res. 2018 Mar;41(3):209-212.
・Nephrol Dial Transplant. 2021 Aug 27;36(9):1640-1647

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