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コラム
2026.01.24

【医師解説】腎臓の「寿命」と「全身の老化」を可視化する。第3の検査『血中ウロモジュリン』

【医師解説】腎臓の「真の寿命」と「全身の老化指標」を可視化する。
第3の検査『血中ウロモジュリン』の衝撃

イーヘルスクリニック新宿院 院長の天野です。

日本の成人の約8人に1人、1,330万人が罹患しているといわれる「慢性腎臓病(CKD)」。この病気の最大の問題点は、腎臓が沈黙の臓器であり、自覚症状が出たときにはすでに手遅れ(透析直前)であるケースが多いことです。

これまで、腎機能の評価は「クレアチニン」や「eGFR」という指標に頼りきりでした。
しかし今、医学界では腎臓の評価を一変させる新しいバイオマーカー「血中ウロモジュリン」が注目されています。これは単なる腎機能検査にとどまらず、心血管リスクや「全身の老化(Aging Biomarker)」までも予測する、極めて重要な指標です。

今回は、なぜこの検査が必要なのか、そして最新の論文が示す衝撃的なエビデンスについて詳しく解説します。

1. 従来の検査(クレアチニン)の限界と「盲点」

健康診断でよく目にする「クレアチニン」や「eGFR」は、腎臓の濾過装置である「糸球体(しきゅうたい)」が、現在どれくらいのスピードで血液をろ過しているかを見ています。

しかし、腎臓という臓器の構造を見ると、糸球体はほんの一部に過ぎません。
腎臓の体積の90%以上を占めているのは、ろ過された原尿から必要な水分やミネラルを再吸収し、ホルモンを産生する「尿細管(にょうさいかん)」です。

⚠ 従来の検査で見逃されていたリスク

実は、多くの腎臓病において、糸球体の機能(ろ過量)が低下するよりも先に、尿細管のダメージ(線維化や萎縮)が進行することが分かっています。

クレアチニンは、腎機能が半分近く失われるまで数値が悪化しないことがあります。つまり、「数値は正常範囲内だから大丈夫」と思っていても、水面下では尿細管の破壊が進み、腎臓の寿命が削られている可能性があるのです。

2. 「機能ネフロン量」を映し出すウロモジュリン

そこで登場したのが、第3の腎機能マーカー「血中ウロモジュリン」です。

ウロモジュリン(Uromodulin)は、腎臓の「ヘンレ係蹄上行脚」から「遠位尿細管」というごく限られた部位でのみ産生されるタンパク質です。
心臓や肝臓など他の臓器からは一切分泌されないため、純粋に「腎臓自身の健康状態」を反映します。

🧬 ウロモジュリンが示す「腎予備力」この数値が高いということは、元気に働いている尿細管の細胞(ネフロン)がたくさん残っていることを意味します。
これを医学的に「機能ネフロン量(Functioning Nephron Mass)」と呼びます。現在の働きぶり(eGFR)だけでなく、「あとどれくらい腎臓に体力が残っているか(腎予備力)」を可視化できる点が、この検査の最大の特徴です。

3. 世界の研究が証明した「全身老化」との関連

近年、ウロモジュリンは単なる腎臓のマーカーを超え、全身の老化や寿命を予測する「Aging Biomarker(老化指標)」として世界的に注目されています。
その根拠となる重要な論文を2つご紹介します。

論文①:高齢者の寿命と心血管リスクを予測する

Steubl D, et al. Association of serum uromodulin with mortality and cardiovascular disease in the elderly—the Cardiovascular Health Study. Nephrol Dial Transplant. 2020

【研究の概要】
地域に在住する高齢者(平均年齢78歳)を対象に、血清ウロモジュリン濃度と、その後の死亡率や心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症率との関連を調査した大規模コホート研究です。

【結果と意義】
分析の結果、血清ウロモジュリン濃度が高い人ほど、総死亡リスクおよび心血管疾患の発症リスクが有意に低いことが明らかになりました。
特筆すべきは、この関連性が「従来の腎機能マーカー(eGFRやアルブミン尿)で調整した後でも、独立して確認された」という点です。

結論:
クレアチニンの数値が正常であっても、ウロモジュリンが低い人は、心血管イベントや早期死亡のリスクが高いということです。

論文②:腎機能低下と「フレイル(虚弱)」の予兆

Garimella PS, et al. Urinary uromodulin, kidney function, and cardiovascular disease in elderly adults. Kidney Int. 2015

【研究の概要】
高齢者コホート(Cardiovascular Health Study)において、尿中のウロモジュリンレベルと腎機能の経年変化、および死亡リスクとの関連を調査しました。

【結果と意義】
ウロモジュリンレベルが低いことは、その後の急激な腎機能低下(eGFRの減少スピード)と強く相関していました。
また、ウロモジュリンの低値は、身体的な脆弱性を示す「フレイル(Frailty)」や筋肉量の減少(サルコペニア)とも関連していることが示唆されました。

結論:
ウロモジュリンは腎臓だけでなく、全身の予備能力や老化スピードを反映するバロメーターとなり得ます。

4. 検査結果の見方:腎臓の「現在地」を知る

レノプロテクト社が示す参考値に基づき、ご自身の数値を以下のように評価できます。
この数値は、尿細管のダメージの程度と直線的に相関するため、非常に感度の高い指標となります。

血中ウロモジュリン濃度 判定・臨床的意義
200 〜 400 ng/mL ✅ 良好(Good)
腎機能および機能ネフロン量は概ね保たれています。尿細管も健全な状態といえます。
150 ng/mL 未満 ⚠ 注意・CKD予備軍
eGFRが60未満に低下している可能性が高いです。自覚症状がなくても、尿細管の減少や線維化が進行しているシグナルです。
30 〜 40 ng/mL 未満 ❌ 危険・末期腎不全リスク
腎臓の予備力はほぼ枯渇しています。透析導入のリスクが極めて高い状態であり、厳格な管理が必要です。

まとめ:未来のリスクを「先読み」する検査

血中ウロモジュリン検査を導入することで、以下の5つのメリットが得られます。

  1. クレアチニンが正常でも、隠れた「尿細管障害」を早期発見できる
  2. 将来の腎機能低下スピードや、透析リスクを予測できる
  3. 腎臓だけでなく、心血管イベント(心筋梗塞・心不全)のリスクも評価できる
  4. 急性腎障害(AKI)後の回復度合いを判定できる
  5. 生活習慣の改善(減塩・運動)や治療薬(SGLT2阻害薬など)の効果をモニタリングできる

腎臓は、一度壊れると再生しない臓器と言われてきました。
しかし、まだ予備力が残っている段階でダメージに気づき、適切な介入を行えば、その減少スピードを緩やかにし、健康寿命を延ばすことは十分に可能です。

ご自身の腎臓の「真の寿命」を知り、未来への対策を立てるために、ウロモジュリン検査の活用をご検討ください。

【経営者・リーダーの方へ】

イーヘルスクリニック新宿院では、従来の腎機能検査に加え、最新の「血中ウロモジュリン検査」を導入しています。
「健康診断の数値は正常だが不安がある」「将来の透析や老化リスクを可視化したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の監修者

天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)

イーヘルスクリニック 新宿院

この記事の運営者:イーヘルスクリニック新宿院