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慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)とは、3か月以上続く全ての腎臓病のことです。慢性腎臓病は20歳以上の8人に1人がかかっていると考えられており、近年では新たな国民病ともいわれています。
慢性腎臓病の予防は、とくに以下の二つの理由から重要とされています。
一つ目の理由は、慢性腎臓病が末期腎不全の危険因子であるためです。末期腎不全とは、腎機能が正常の5%以下で、透析が必要な状態を指します。二つ目の理由は、慢性腎臓病に罹患していると、狭心症・心筋梗塞、脳卒中など様々な恐ろしい疾患にかかりやすくなるからです。腎機能の改善に対しては、現在の医学では有効な手段がなく、予防するしか方法はありません。
慢性腎臓病の発症には加齢や、肥満につながるような食習慣、運動不足、喫煙といった生活習慣が関連しているとされています。そのため、肥満や脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病がある方は慢性腎臓病のリスクが高く、注意が必要です。
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腎臓には、(1)老廃物を体の外に出す(2)体内の水分や電解質を調節する(3)血圧を調節する(4)血液を作り出すのに必要なホルモンを分泌する(5)ビタミンDの生成を助けるなどのはたらきがあります。
そのため、腎臓のはたらきが悪くなる“腎臓病”になると、むくみや貧血などのさまざまな症状がみられるようになり、やがては心臓のはたらきが悪くなったり、意識障害が現れたりすることもあります。このような状態が慢性的に続くことを“慢性腎不全”と呼び、慢性腎不全になった場合は回復が見込めなくなることもあるため、早い段階で受診・治療を受けることが大切です。
慢性腎臓病の初期には自覚症状がほとんどありません。症状が現れた際には、進行していることが多いといわれています。
進行した場合は、以下のような症状が現れることがあります。
など
前述のとおり、慢性腎臓病は初期の段階では症状が現れにくいといわれています。そのため、早期発見には定期的な健康診断を受けることが大切です。初期の段階で治療すれば、回復が期待できます。尿や血圧の検査が重要となり、特に尿タンパクが陽性だった場合は腎臓の異常の可能性を踏まえ、放置せずに詳しい検査を受けるようにしましょう。
一方、もし自覚症状がある場合は慢性腎臓病が進行している可能性があるため、腎臓内科や内科、またはかかりつけ医などの受診を検討するとよいでしょう。
慢性腎臓病の治療では、薬物治療や食事療法による血圧管理、脂質管理、血糖管理、生活習慣の改善などを総合的に行う必要があります。
病気の進行を遅らせたり、腎臓の機能低下によって起こる症状を改善したりするため、薬で腎臓の機能を補います。具体的には、血圧を下げる薬や、尿の量を増やしてむくみを取るなどする薬、老廃物を排出する薬、貧血を改善する薬、骨がもろくなるのを防ぐ薬など多岐にわたり、症状や体の状態によって選択します。
病気の悪化を防ぐために、腎臓に負担をかけない食事をすることも大切だといわれています。ここでは一般的な内容を解説しますが、具体的な内容は病気の進行度(ステージ)や患者さんの状況によっても異なるため、医師や栄養士からアドバイスを受けるとよいでしょう。
腎機能の低下が軽度(ステージG1~G2)までの場合は、塩分やたんぱく質の取りすぎに注意し、バランスよく適量を食べることが大切です。1日の摂取量の目安は以下のとおりです。
■最新トピックス~植物性タンパク質の摂取と腎機能の関係~
近年、植物性タンパク質の摂取が健康維持やエイジングケアにおいて注目を浴びています。以前はタンパク質の過剰摂取が腎臓に負担をかけるとされ、特に慢性腎臓病患者にはタンパク質の制限が推奨されていました。しかし、最新の研究からは、植物性タンパク質の摂取がむしろ腎疾患の予防に対して効果的かもしれないという示唆が出ています。
特に、約1,300人の女性を対象に行われた研究では、植物性タンパク質の食事への増加が腎機能の低下速度を減少させ、10年間で腎機能低下率が18%改善する可能性が示されました。さらに、植物性タンパク質の摂取量が多いほど腎機能の悪化リスクが低いことも明らかになりました。
ただし、個別の腎臓の健康状態に合わせた適切な摂取量が重要であり、腎機能が低下している場合や尿毒症のリスクが高い場合には、注意が必要です。しかし、腎臓の機能が良好であるか、将来の腎機能低下を予防したい場合には、植物性タンパク質を積極的に取り入れることが考慮されるでしょう。
腎機能の低下が軽度~中等度以上の場合は腎臓の機能が低下してきているため、腎臓をいたわる食事が必要です。また、塩分・たんぱく質・摂取カロリーに注意することも大切です。
さらに、ステージや症状によってはカリウム、リン、水分の制限が必要となる場合があります。詳しくは医師や管理栄養士に確認するようにしましょう。
慢性腎臓病の治療では、薬や食事療法だけでなく生活習慣の改善も必要とされています。一例として、以下のような点に注意するとよいでしょう。
慢性腎臓病のリスクとなる糖尿病や高血圧の予防、適正体重の維持のために、適度な運動が重要とされています。また、近年では適度な運動(有酸素運動)によって、尿タンパクが減少したという報告もあります。
体力や体調に合わせて適切な内容で行うためにも、まずは医師に相談するとよいでしょう。
喫煙は慢性腎臓病の発症や進行に関係すると考えられています。さらに、喫煙は慢性腎臓病によってリスクが高まる脳卒中や心筋梗塞といった心血管病の危険因子でもあるため、まずは禁煙を始めるとよいでしょう。
不規則な生活や睡眠不足は腎臓の負担になるとされています。そのため、過労を避け、睡眠を十分に取ることが大事です。ストレスも慢性腎臓病にはよくないとされているため注意しましょう。
病気の進行度や症状に応じて適切な治療を受けるため、定期的な検査が必要です。主な検査として、血液検査や超音波検査、腹部CTなどが挙げられます。血液検査では、特に血清クレアチニン値で腎臓のはたらきが分かり、進行度の確認ができるとされています。また、超音波検査や腹部CTなどは、腎臓の形、大きさ、合併症の有無などの確認に役立ちます。
健康診断でクレアチンが高い、尿蛋白や血尿が陽性の場合は、当院の腎臓内科を受診してください。基礎疾患や腎機能のリスク因子を検査し、最適な治療プランを提案します。治療オプションは理解しやすく説明し、患者様の了承を得た上で治療方針を共に決定します。当クリニックには管理栄養士もおり、食事に関する専門的なアドバイスも受けられます。健康な未来への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。
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記事監修:天野 方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。