クレアチニン値が低いとどうなるの?健康リスクと改善方法、注意点を解説

腎臓病は初期症状が少なく、進行に気づきにくい病気です。気づいたときには手遅れになるケースもあります。実は、健康診断で引っかかり、精密検査を受けた結果、予想外にも腎臓病と診断されるケースは少なくありません。
この記事では腎臓病のステージや具体的な症状などを解説します。 ご自身の体の状態を知るためにも、最後までチェックしてみてください。
以下の記事では慢性腎臓病について網羅的に説明しているので、知りたい方はぜひチェックしてみてください。
>>慢性腎臓病とは?症状や罹患時に気をつけたいポイントを解説
① 平日20時まで、土日祝も診療
② オンライン診療対応で、すぐに薬が受け取れる
③ 管理栄養士による食事指導も実施
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記事監修:天野方一(イーヘルスクリニック新宿院 院長)
経歴:埼玉医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学付属病院や足利赤十字病院などで勤務。2016年、帝京大学大学院公衆衛生学研究科へ入学。2018年、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)へ留学。予防医療特化のメディカルクリニックで勤務後、2022年「イーヘルスクリニック新宿院」開院。
専門分野:腎臓内科、抗加齢医学(アンチエイジング)、産業医学
資格:日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士・博士
腎臓病のステージは5段階あり、以下に分けて解説します。
ステージ1~2は、腎臓病の初期段階です。GFRは60mL/分/1.73m²以上です。自覚症状がほとんどないため、健康診断などで偶然発見されることが多いです。尿検査でたんぱくが少し出ていたり、血液検査で腎臓の機能が少し低下していたりするのがわかる程度です。自覚症状がほぼないため、つい放置してしまいがちですが、重要な時期です。
ステージ1~2の段階で適切な対策をとることで、腎臓病の進行を遅らせたり、正常な状態に戻したりできる可能性があるからです。糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、腎臓病の大きな原因となります。病気のコントロールをしっかり行うことが、腎臓病の予防・改善につながります。
ステージ3では、腎臓の働きが半分以下に低下し、GFRは30~59mL/分/1.73m²になります。むくみや貧血、だるさなどの症状が現れ始めます。他にも以下の症状が現れる場合もあります。
ステージ3では、腎臓の働きを助ける薬物療法や、食事療法が必要となる場合もあります。塩分やたんぱく質の摂取量を調整することで、腎臓への負担を減らすことが重要です。
ステージ4では、腎臓の働きがさらに低下し、GFRは15~29mL/分/1.73m²になります。むくみや貧血が悪化し、吐き気や食欲不振、かゆみなどの症状が現れることもあります。尿毒症という状態になり、体の中に老廃物が溜まりやすくなってしまうことが原因です。
食事がおいしく感じられなくなったり、夜眠れなくなったり、皮膚がかゆくて我慢できないといった症状に悩まされる人もいます。ステージ4では、腎不全へと進行するリスクが高まるため、より積極的な治療が必要になります。食事療法をより厳密に行うとともに、透析療法や腎移植などの治療の準備も始めることになります。
ステージ5は、腎臓病の末期段階で、GFRは15mL/分/1.73m²未満になります。腎臓の働きがほとんど失われ、尿毒症の症状が強く現れます。意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたり、呼吸困難に陥ることもあります。ステージ5では、生命維持のために、人工透析もしくは腎移植が必要になります。
人工透析には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。血液透析は、週に2~3回、病院に通って血液をきれいにする治療法です。腹膜透析は、自宅で毎日行うことができる治療法です。腎移植は、健康な腎臓を移植する治療法です。どの治療法を選択するかは、患者さんの状態や生活スタイルに合わせて、医師と相談して決めることになります。
腎臓病は、ステージが進むにつれて、症状が重くなり、治療も複雑になっていきます。しかし、早期発見・早期治療によって、進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることが可能です。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
腎機能をチェックする検査方法は以下のとおりです。
それぞれの検査方法について、詳しく見ていきましょう。
尿検査は、採取した尿を調べることで、腎臓の異常を早期に発見できる簡便な検査です。尿には、腎臓でろ過された老廃物や水分が含まれています。健康な人の尿には、タンパク質や赤血球はほとんど含まれていません。腎臓に異常があると、成分が尿に漏れ出てしまうため、尿検査で検出されます。
尿検査で主に確認される項目は、タンパク質、糖、赤血球の有無です。タンパク質が検出される場合は「タンパク尿」、糖が検出される場合は「尿糖」、赤血球が検出される場合は「血尿」と呼ばれます。
尿タンパクの程度は、尿タンパク/クレアチニン比(g/gCr)や1日尿タンパク量(g/日)で評価されます。数値が高いほど、腎臓病の進行度合いが高い可能性があります。健康診断などで尿検査に異常が見つかった場合は、必ず医療機関を受診し、詳しい検査を受けてください。
血液検査では、血液中の特定の成分を測定することで、腎臓の働き具合を評価します。腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排出する働きをしています。腎臓の機能が低下すると、老廃物が血液中に蓄積してしまいます。血液検査で量を測定すれば、腎機能の状態を調べることができます。
血液検査で腎機能の評価に用いられる代表的な項目は、クレアチニン値とeGFR(推定糸球体濾過量)です。クレアチニンは、筋肉で作られる老廃物で、通常は腎臓でろ過されて尿として排出されます。腎臓の機能が低下すると、クレアチニンが血液中に蓄積するため、クレアチニン値が上昇します。
eGFRは、クレアチニン値や年齢、性別などから計算される値で、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示しています。eGFRが低いほど、腎機能が低下していることを意味します。
画像検査では、超音波検査やCT検査などを用いて、腎臓の形や大きさ、内部の状態などを調べます。超音波検査は、体に超音波を当てて、反射波によって腎臓の画像を映し出す検査です。腎臓の大きさや形、腫瘍や結石の有無などを確認できます。超音波検査は痛みもなく、体への負担も少ないため、気軽に受けることができます。
CT検査は、X線を使って腎臓の断層画像を撮影する検査です。超音波検査よりも詳細な情報を得ることができ、腎臓がんや腎臓結石などの診断に役立ちます。患者さんの症状や既往歴などを考慮しながら、適切な検査を組み合わせて診断を行います。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診して相談しましょう。
腎臓病の治療法は以下のとおりです。
腎臓病の薬物療法は、大きく分けて以下の3つの目的で行われます。
高血圧や糖尿病が原因で腎臓病を発症している場合、病気をコントロールすることが最優先事項となります。高血圧に対しては、血管を広げて血圧を下げる薬や、体内の余分な水分を排出する利尿薬などが用いられます。糖尿病の場合には、血糖値を下げるためのインスリン注射や経口血糖降下薬など、薬の種類はさまざまです。
腎臓病の進行を抑える薬としては、レニン・アンギオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)が代表的です。腎臓にある細い血管の働きを調整することで、尿にタンパク質が漏れ出すのを減らし、腎臓の負担を軽くする効果があります。
腎臓病が進行すると、貧血や骨の病気、高カリウム血症などの合併症が現れることがあります。貧血に対しては、赤血球の産生を促すエリスロポエチン注射などが用いられます。骨の病気にはビタミンDやカルシウム製剤など、高カリウム血症にはカリウムを体外に排出する薬などです。
薬の種類や服用量は、患者さんの病状や体質に合わせて、医師が慎重に判断します。疑問や不安があれば、遠慮なく医師に相談することが大切です。
腎臓病の食事療法は、腎臓への負担を軽減し、合併症を予防するために重要です。管理栄養士などの専門家と相談しながら、患者さん一人ひとりの状態や好みに合わせた無理のない食事プランを作成しますのでご安心ください。腎臓病の食事療法で特に注意が必要な栄養素は、塩分、タンパク質、カリウム、リンです。塩分の過剰摂取は高血圧を悪化させ、腎臓に大きな負担をかけます。薄味を心がけ、インスタント食品や加工食品はなるべく控えましょう。
タンパク質は体を作るために不可欠な栄養素ですが、腎臓病が進行すると、タンパク質の代謝産物である老廃物が体内に蓄積しやすくなります。腎臓病の重症度に応じてタンパク質の摂取量を適切に調整する必要があります。肉や魚、卵や乳製品などのタンパク質を多く含む食品の摂取量を調整することが重要です。
カリウムは体内の水分バランス維持に必要ですが、腎臓病が進行すると体内に過剰に蓄積します。高カリウム血症を引き起こす可能性があり、不整脈などの心臓の病気を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。カリウムを多く含む果物や野菜、芋類、海藻類などは、摂取量を調整する必要があります。
野菜を茹でることでカリウムを減らす調理方法も有効です。リンは骨や歯の形成に不可欠な栄養素ですが、腎臓病が進行すると体内に蓄積しやすく、骨の病気を引き起こす可能性があります。リンを多く含む加工食品やインスタント食品、ナッツ類などは摂取量に注意が必要です。
健康的な生活習慣は、腎臓病の進行を遅らせるだけでなく、全身の健康を維持するためにも重要です。生活習慣で直すべきポイントは以下のとおりです。
詳しくは医師の指示に従い、改善するように行動しましょう。
以下の記事では、腎臓病と食生活の関係について解説しています。
>>慢性腎臓病(CKD)を予防できる最新の食生活習慣 ~減塩と植物性タンパク質の摂取について~
腎臓病の進行を遅らせるための予防策としては、早期発見と適切なケアが何よりも重要です。病気が進行すると、生活の質に大きな影響を与えるだけでなく、生命を脅かす可能性も出てきます。再生医療と人工透析について解説します。
再生医療は、腎臓病の新たな治療法として大きな期待が寄せられています。損傷した腎臓の細胞を再生させることで、腎機能の回復を目指す医療です。患者さん自身の腎臓から細胞を採取し、体外で培養して再び腎臓に移植する治療法が研究されています。また、ES細胞やiPS細胞といった万能細胞を利用した治療法も研究されています。
体のどんな細胞にも変化できるという驚くべき能力を持っています。能力を利用して、腎臓の細胞を作り出し、移植することで腎機能の回復を目指すのです。再生医療はまだ研究段階ですが、将来的には、透析や腎移植に代わる新しい治療法となる可能性を秘めています。
人工透析は、腎臓の機能が低下した際に、血液中の老廃物や余分な水分を取り除くための治療法です。近年、人工透析技術も日々進歩を続けています。従来の血液透析に加えて、腹膜透析も広く行われるようになりました。透析装置の小型化や、在宅透析の普及も進んでいます。
透析を受けながら日常生活を送るうえで、食事療法は重要な役割を担います。慢性腎臓病の食事療法に関する研究では、食事指導や特定の食事パターンが、健康関連QOL(生活の質)の向上、血圧の低下、eGFR(推定糸球体濾過量)や血清アルブミン値の改善、コレステロール値の低下に寄与する可能性が示唆されています。
具体的な食事療法については、医師や管理栄養士に相談し、個々の病状に合わせた適切な指導を受けるようにしてください。
腎臓病は初期には自覚症状がほとんどなく、知らないうちに進行してしまうため、早期発見と早期治療が重要です。定期的な検査で腎臓の状態を把握し、生活習慣病の管理や食事療法、薬物療法などを適切に行うことで、進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることが可能です。
少しでも気になることがあれば、早めに医療機関を受診し、専門家に相談してみましょう。最新の再生医療や人工透析技術の進歩にも希望を持ち、前向きに治療に取り組みましょう。
健康診断でクレアチンが高い、尿蛋白や血尿が陽性の場合は、当院の腎臓内科を受診してください。基礎疾患や腎機能のリスク因子を検査し、最適な治療プランを提案します。治療オプションは理解しやすく説明し、患者様の了承を得た上で治療方針を共に決定します。当クリニックには管理栄養士もおり、食事に関する専門的なアドバイスも受けられます。健康な未来への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。
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